残業レコード

あるサラリーマンライダーの栄光と苦悩の記録

オイルドコットンを着てキャンプツーリングに出掛けよう!

(この記事は2022年1月31日にLantern Ridersというキャンプツーリングに関するwebサイトに投稿した内容を加筆修正したものである。)

オイルドコットンという素材をご存知だろうか。

コットン生地に油を染み込ませることで防水性や防風性等を付与されたもので、今から1世紀以上も前にイギリスで生み出されたと言われている。港湾労働者や軍人、さらには乗馬や狩猟など、アウトドアな仕事やアクティビティに用いられたハイテク素材である。

化学技術の発展した今でこそ、ゴアテックスやアウトドライといったバイクウェアにも採用される様々なハイテク素材が存在しているが、そのルーツとも言っても過言ではないだろう。性能的には最新のテキスタイルに劣る部分も多いのが事実だが、油を服に染み込ますという原始的な様、しっとりとした唯一無二の質感、経年変化、etc…そういった要素が男心を掴んで離さず、今でも衣類に広く用いられている。

アウトドアウェアとしての側面がある一方で、防水性や防風性といった機能は当時のバイク乗りにも受け入れられ、バイクウェアとしても重宝されていたようである。クラシックなバイクウェアと言えば、レザーのライダースジャケットのイメージが強いと思うが、オイルドコットンを使ったジャケットは現在の高機能テキスタイルウェアの先祖にあたるものと言える。

ここまで、くどくどとオイルドコットンの説明をしてきたが、何が言いたいかというと、アウトドアとバイクの両方を楽しもうというキャンプツーリングにとって、オイルドコットンはうってつけの素材だということなのだ。

僕はこのオイルドコットンのジャケットがとても好きで、バイクウェアとしても普段着としても愛用している。食べ物で言うとラーメンくらい好きである。脂っこいところもよく似ている。

今日は僕の所有するオイルドコットンのジャケットを紹介しながら、その魅力について伝えていこうと思う。せっかくなので、オイルドコットンと同じくらい好きな名古屋のラーメンについても合わせて紹介していくことにする。

定番中の定番!Barbour Bedale

Barbour Bedale

オイルドコットンを使ったウェアの中で最も定番と言えるのがバブアーのビデイルというモデルだ。秋から冬にかけての上着として市民権を獲得しているので、見たことのある人も多いはずだ。

最大の特徴であるオイルドコットンを用いているという点を除けば、ほとんどホームセンターで売っているドカジャンと同じ形をしているが、よく見ていくと少し違うところがある。

この変な場所に着いたポケットはハンドウォーマーと呼ばれている。その名の通り、寒い季節に手を突っ込む用ためのポケットである。そのため、ポケットの内側にはちゃんと裏地が貼られている。

デカい襟はコーデュロイでできており、肌触りがよい。バブアーを買うとロゴの入ったピンズを貰えるので、それを襟に付けるのが定番となっている。これはドカジャンと間違えられないためのメーカー側の苦肉の策と言われている。

街着として定着していることもあり、洒落た店で販売されていることが多いが、是非ともアウトドアでガシガシと利用したいウェアである。(ただし、あまりバイクを乗るときに着ている人は見かけない。)

名古屋市民のソウルフード、『ラーメン福』

定番には定番の良さがある。僕の長く住む名古屋のラーメンの定番と言えば「ラーメン福」である。スガキヤじゃないの?という人もいるだろうが、僕たちのソウルフードは本当はラーメン福なのだ。

(こちらは特製ラーメンと呼ばれる所謂チャーシュー麺である。)

まず、目に飛び込んでくるのはたっぷりと乗った野菜だろう。二郎系を彷彿とさせる第一印象であるが、京都のラーメン藤から分化して独自進化でたどり着いたのがラーメン福である。

麺は中太のストレートで食べ応えがある。ちなみに、ラーメン福では麺の硬さや野菜の量をオーダーできるため、僕は硬麺でいつも注文している。

とんこつベースの醤油スープには背脂がのっている。そのしっとりとした艶はまるでオイルドコットンのようである。

チャーシューについては普通のラーメンはもも肉、特製ラーメン(チャーシュー麺)では肩ロースとなっており、単純な量だけでなく味わいも異なっている。僕はいつも特製ラーメンを注文するのだが、こちらは好みが別れるところだろう。

野菜、チャーシュー、麺。それらを一気に頬張り、ガツガツと食べるのがラーメン福の正しい食べ方である。口の中でミックスされた歯応えと味が癖になってしまうのだ。

30年以上の歴史を持つラーメン福は、その味以外にも店舗の姿まで昔ながらだ。一過性のブームに便乗したラーメン屋や、こだわり過ぎた至高のラーメン屋にはない、毎週毎週食べたくなる普遍の優しさを持ち合わせている。もはや名古屋ラーメン界隈のバブアーと言っても過言ではないだろう。

ちなみに、ラーメン福はTVCMも放送している。そのCMがなかなか前衛的で、ソフビ人形を巨大化したようなオールドルックな怪獣が「も、や、し、も、や、し」と悲しい鳴き声をあげるのだ。ラーメンを食べている学ランを着た外国人も、いったい誰だって感じだ。

しかも3パターンある。

ラーメン福のYouTubeチャンネルの登録者は2022年1月現在で、僕を含めて94人とグロい状態になっているので、この機会に是非とも登録しておくことをおすすめする。誰のために公開しているのかよく分からないが、CMのメイキング映像も公開されているぞ!(僕は再生していない。)

男らしく着る。モーターサイクルジャケット

Addict Clothes BMCジャケット

バブアーのビデイルはアウトドアウェア的な側面が強いが、モーターサイクルウェアとして有名なのがこの形のジャケットだ。

ミリタリージャケットの定番であるM-65にどことなく似た外観であるが、大きな特徴が二つある。

まず一つ目は斜めに配置された大きな胸ポケットである。折りたたんだ地図を入れられるように大きく、そして出し入れし易いように斜めにレイアウトされている。

写真を見てわかるように、僕のものは見様見真似でピンズやワッペンをつけてカスタムしている。個人的には大変満足していたのだが、先日たまたま休日に遭遇した会社の女の子に「なにそれ、ない方がいい」と言われてしまった。ピンズの針がポケットを貫通したかの如く、左胸に走ったチクリという傷みは、僕に恋のはじまりを予感させるのだった。

さて、もう一つの特徴は腰回りのベルトである。これを締めることにより、走行中のジャケットのバタつきを抑えることができるのだ。トレンチコートにもよく似たクラシックなディテールで、デザイン的にも渋くて格好いい。

このように、機能がそのまま表出したような形態を持つポピュラーなジャケットとなっている。ポピュラーと言っても、さきほどのビデイルやライダースジャケットに比べると認知度は低く、多少は人と被りにくいのもコイツのいいところである。

先に紹介した本家イギリスのバブアーではインターナショナルという名前で同じようなジャケットが販売されているほか、国内外の様々なメーカーから似たような形のジャケットが販売されている。僕が持っているのは、そんな様々なインスパイア系のひとつと言えるだろう。

極太濁流ラーメン!『ら・けいこ

男らしいラーメンと言えばやはり二郎系である。名古屋にも二郎インスパイア系と呼ばれるラーメンがいくつかあるが、その中でも独自進化を遂げているのが「ら・けいこ」だ。

市内に何店舗か系列店があるのだが、写真は栄店の外観である。お店の入口に「男」と書かれたのれんがかかっているが、決して男湯ではない。ただのラーメン屋さんである。

栄の女子大小路というエリアにあるため、名古屋のラーメンフリークの間では「女子大店」や「女子らけ」などの可愛い名前で呼ばれることが多いが、実際の店舗からは女子感は微塵も感じられない。

僕が頼むのはいつも決まって汁なしラーメンだ。ニンニクは翌日の予定に応じて入れてもらったり、抜いてもらったりするが、ニンニクなしでも味のインパクトは十分にあるので安心して欲しい。

友達に連れられてはじめて行った女子らけで、僕は汁なしラーメンというものに初めて出会い、その見た目、味、食べ応えに魅了されたのだ。大量の野菜というパっと見の印象はラーメン福にも共通しているが、こちらの野菜は太めのもやし&ザックリと切られたキャベツという構成となっている。

麺はうどんと見まがうほどの太さ。野菜と混ぜているだけで腕が疲れるほどの硬さなのだが、この麺が実にうまい。ぐにぐにと噛み続けていけば独特の甘みが感じられる。そしてこの美味しい麺に絡みつく醤油タレがまた良いのだ。

デブセブハイパーライト等で知られる東片端店にも行くことがあるが、僕にとって汁なしラーメンといえばこの女子らけなのだ。

2250事件

この記事を書くにあたって、久しぶりに女子らけを訪ねてみたのだが、僕の記憶では無料だったはずの野菜の増量が有料となっていた。

正直なところ、通常量でも満腹になるので僕にとっては全く問題にならないのだが、ら・けいこを僕に紹介してくれた友人にそのことを話したところ、どうやら「2250事件」と呼称されるある事件以降、野菜の増量が有料化されたようなのだ。

2250事件についての情報は断片的で真相は定かではない。友人によれば、とある剛の者がら・けいこの系列店で麺を2250gという少々度を超えた増量を注文したこと、またそれにより麺の増量の限度および野菜増量の有料化に関しての経営判断が下ったことを指しているとのこと。

5.15事件や2.26事件といった歴史上の事件、また1999年問題や2038年問題などの社会問題を彷彿とさせる呼称が、殺伐とした空気感を醸し出しているからか、名前を聞いた瞬間はとても興奮したのだが、内容を聞いてあきれてしまった。2250という数字がまさか麺の重量を意味しているとは、常識的な思考では思い至るはずがない。

何事にも限度というものがある。

昨今、キャンプ場での素行の悪いユーザーが増加していると聞く。キャンプ場において決められたルールを守るのは当然のことだが、共用空間というものは互いを尊重する性善説的な前提で成り立っている部分が多々ある。

実際、僕が先日無料キャンプ場をはじめて利用した際、隣のグループが夜中まで騒いでいたことを思い出す。無料だからこそ、ユーザー同士の配慮というものが大事になってくるのではないだろうか。

書かれていなからいいだろうとか、そういうことではないのである。人に迷惑をかけないある限度の中で遊ぶ。それが大人の男の遊び方ってやつなのだ。

オイルドコットンに防御力をトッピング

HYOD インナープロテクター

ここまで紹介してきたジャケットはいずれもプロテクターを装備することができない。プロテクターがつけれないとバイク用としてはちょっと・・・、という人も多いのではないだろうか。以前書いたこちらの記事にあるように、僕もバイクに乗るときには極力プロテクターを装備するようにしている。

そんなプロテクターが欲しいという人に選択肢のひとつとしてお勧めしたいのが「インナープロテクター」である。

僕もHYODのものをひとつ持っており、オイルドコットンのジャケットで遠出したい時には中にこいつを着こむようにしている。ジャケット自体に装着可能なウェアと比べると、どうしても動き辛くなってしまうのは難点だが、防御力を後から簡単にトッピングすることができるのはありがたい。

HYODはD3Oという材料を使ったプロテクターを採用している。こいつは普段は柔らかいが、いざというときに硬くなる。おちんちんと同じシステムを採用している信頼性の高い材料なのだ。

HYOD以外にも、バイクウェアメーカー各社から似たような商品が出ているので、プロテクターの厚さ・硬さやサイズ感などの確認のために、一度用品店で試着してみるのがよいだろう。プロテクターコーナーに行けば置いてあるはずである。

名古屋で家系を食べるならココ!『萬来亭』

トッピングといえばそう、家系ラーメンである。名古屋で家系ラーメンを食べるなら、やはり緑区の萬来亭ということになるだろう。

僕がいつも注文するのはネギラーメンである。麺はもちろん固めで注文する。

知っての通り、家系ラーメンにはごはんが合う。家系ラーメンを食べるときにごはんを注文しない人は、人生の何分の一かを損していると断言してもいい。濃厚なスープと歯ごたえ十分の太麺とともにご飯をかっこむのは至福の瞬間と言えるだろう。

僕はご飯をさらに楽しむためのトッピングとしてうずらとノリを追加する。口の中に頬張る麺、スープ、具材、そしてご飯。そのバランスを一口ごとに変化させながら楽しむのが、僕にとって家系ラーメンの醍醐味である。

革だけじゃない!ライダースタイプのオイルドコットン

Lewis Leathers GT MONZA

最後に紹介するのはライダースジャケットで有名なLewis Leathersのもの。中古で購入したので詳細は分からないが、GT MONZAというモデルをオイルドコットンで作った一着である。誰だかよく分からないが、JUNYA WATANABEとのダブルネームになっている。

前面は二重になっておりダブルっぽい作りだが、襟はスタンドカラーとなっており、所謂セミダブル形式になっている。個人的にセミダブルのライダースは、ダブルほど気合が入っておらず、それでいてシングルとは全く異なるビジュアルが好みである。

ライダースジャケットも好きだし、オイルドコットンも好きな僕にはジャストアイデアなアイテムなのだが、既にオイルが抜けてむらっぽくなってしまっていた。そのため、購入後すぐに「リプルーフ」というオイルを入れなおすメンテナンスを実践してみた。

オイルドコットンは使用しているうちにオイルが抜けていってしまう。オイルが抜けると防水・防風性能は失われてしまう上に、生地がカサカサの状態となり傷みやすくなっる。そのため、定期的にオイルを入れなおす必要があるのだ。実はこれまでリプルーフは専門業者に依頼していたので、自分でやるのは初めてだったのだが、それなりにうまくできたので過程を紹介しておこう。

プルーフでオイルドコットンをデトックス

まずはリプルーフ用のオイルを湯煎して溶かしていく。温めていないと作業しているうちに冷えてしまい、オイルの伸びが悪くなっていってしまうので、作業する場所の近くで湯煎するのがいいだろう。僕はキャンプに使っているSOTOのストーブを利用した。

次にオイルをスポンジに染み込ませてジャケットに一気に刷り込んでいく。薄く伸ばしているうちにどんどん冷えて固まってきてしまうので、スピーディに作業をしていかなければならない。生地の重なった部分やボタン回りに溜まってしまわないようにブラシを使うのが効果的だった。

ドライヤーなんかで生地自体を温めながら刷り込んでいくのが定番のようだが、僕は軽めに乾燥機にかけて均していった。短時間ならダメージも出ないので手軽でおすすめである。

以下の写真を見れば、リプルーフを行うことでヌラっとした独特の質感が復活していることがよく分かると思う。レザーのメンテナンスよりも変化が大きいので、手間はかかるがやりがいがある。

古い油を取り除き、新たな装いを与えるリプルーフは、オイルドコットンのデトックスと言えるだろう。ジャケットが蘇ったのは良かったが、結構作業時間がかかるし、油は熱いしで、僕の方はなかなか疲れてしまった。僕もデトックスしたい。

ちょっと仕事や遊びで疲れたな、とにかくスタミナの出るようなものを食べたい、なんかデトックスしたいわ。僕たちサラリーマンにはそんなときがある。名古屋にはそんな疲れたサラリーマンの心と体を蘇らせてくれる素晴らしいラーメンがあるのだ。

『翔華』のベトコンラーメンで疲れを吹き飛ばす

愛知や岐阜を中心とした東海地方のご当地ラーメンのひとつにベトコンラーメンというものがあるのをご存じだろうか。唐辛子で痛めたニンニク、ニラ、もやし等のたっぷりの野菜が乗ったラーメンなのだが、特にニンニクが刻みやスライスではなくゴロゴロと丸ごと放り込まれているのが最大の特徴といえるだろう。南ベトナム解放戦線、通称ベトコンで戦う兵士をイメージして名付けられたという話のようだ。

「新京」というお店が有名であるが、僕がよく利用するのは天白区にある「翔華」である。

毎回注文するのはベトコンラーメンをさらに具沢山にしたこの「国士無双」。

投入されている具材はニンニク、白菜、キャベツ、もやし、ニラ、ネギ、たけのこ、イカ、鷹の爪。なんだか漢方が作れそうな勢いである。

こんな風にしてニンニクがゴロゴロと入っている。唐辛子の辛みとあいまって、食べ始めると止まらない。

翔華は中華料理屋的な側面もあるので、サイドメニューも充実している。そんな中でも僕がよく注文するのは人気メニューであるトリカラとゲソカラだ。これが実にうまいので、是非ともベトコンラーメンと一緒に食べてほしい。この日はトリカラのハーフサイズを注文した。

夢中でラーメンとトリカラを食べているうちに服に油が飛んでしまった。だけど大丈夫。油でコーティングされたオイルドコットンなら、ちょっとした汚れくらいならティッシュでさっと拭き取れてしまうのだ。

CAMP TOURING WITH OILED COTTON

アウトドアウェアやバイクウェアの元祖ともいえるオイルドコットン。今では無骨な雰囲気を持つファッションアイテムとしても広く用いられ、おしゃれな人が街着としてきている姿を目にすることも多い。

しかしながら、オイルドコットンがその本来の能力を発揮するの場所は、キャンプやツーリングなどのフィールドなのである。突然の雨や冷たい風に見舞われた時、油や泥が飛んできた時、素材とデザインによって付与されたものが、ファッション性ではなくギアとしての機能であることに気がつくだろう。

いつも食べるラーメンのように、気負わず道具として、ガシガシと使い倒していきたいものである。

僕が愛用するキャンプツーリングにもおすすめなカッコいいバイクウェア

(この記事は2021年8月14日にLantern Ridersというキャンプツーリングに関するwebサイトに投稿した内容を加筆修正したものである。)

キャンプツーリングにいくとき、あなたは何を着ていくだろうか?

いつも使っているバイクウェアでずっと過ごす人、アウトドア系のウェアを着て行く人、道中はバイクウェアで現地についてから動きやすい服に着替えるという人、きっと様々だろう。

僕はというとバイク向けに作られたいわゆるバイクウェアを着ていく派である。泊りがけで行くキャンプツーリングはいつもより遠くに出向くことが多く、走行時間が結構長くなることもあれば、高速道路を利用する機会も多い。そんなときにはやはり、ライディングに適したウェアを着たいものである。また、極力荷物を減らしたいキャンプツーリングにおいて、余分な着替えを持っていきたくないというのも、僕がバイクウェアで過ごす理由の一つだ。

しかしながら、バキバキのレザージャケットやスポーティなウェアはキャンプ場でくつろぐには残念ながら適しておらず、キャンプを演出する能力は低いと言わざるを得ない。

そこで僕は、バイクウェアはバイクウェアでもキャンプにも合うようなものを選んで着ていくようにしている。最近はバイクウェアも多様化しており、アウトドアなテイストを取り入れたものだったり、旅先でのアクティビティにもシームレスに使っていけるようなカジュアルさのあるものも登場している。スポーツ系のウェアには及ばないまでもライディングに不自由はなく、かつキャンプ場でも寛げてキャンプを演出してくれる。

今日は僕がキャンプツーリングに出掛けるときに愛用しているバイクウェアを一挙に紹介していこうと思う。

ジャケット編

Fuel Bespoke Motorcycles – Greasy Jacket

Fuel Bespoke Motorcyclesのグレイシージャケットだ。一見ただのデニムジャケットに見えるが、生地自体にケブラー繊維という引張強度の強い繊維が混ぜられていることに加え、肩・肘・背中にプロテクターを装着できる正真正銘のバイクウェアである。

じっくり見ていくと、首の動きを邪魔しないスタンドカラーや可動域を広げてくれる前面のプリーツ、各所に配されたポケット、前傾を考慮して長めに設定された背面の着丈など、ライディングジャケットとワークウェアのディテールがミックスされながらデザインされていることが分かる。

アウトドアというよりは、古いワークウェアをモチーフにしたジャケットであるが、このデニムの泥臭い雰囲気はキャンプにも相性がよいのではないだろうか。

聞いたことのない人も多いかもしれないが、Fuel Bespoke Motorcyclesはスペインの結構新しいバイクウェアブランドだ。僕が所有しているワークウェアっぽいジャケットのほかにも、ラリー競技にインスパイアを受けたウェアを多く展開しており、キャンプとの相性はかなり高いと言える。

“Leave The Main Road”
Greasy Jacketの内側に大きくあしらわれたこのメッセージは、大きな道ばかりが旅路ではない、本流から外れていこう、というこのブランドのコンセプトに違いない。

国内ではmotorimodaさんが取り扱っているが、残念ながら実店舗数が少ないため、僕の場合はmotorimodaのネットショップにて購入した。

参考までに、身長173cm、体重69kg、僕の戦うバディにはご覧のようにMサイズがちょうど良い感じだ。

motorimodaさんではヨーロッパのバイクウェアを多く輸入販売しており、国内ではここでしか手に入らないものもたくさんある。数年前、名古屋店が撤退してしまったことが実に悔やまれる。

ROARS ORIGINAL – タクティカルジャケット

次に紹介するのはROARS ORIGINALのタクティカルジャケットだ。

ROARS ORIGINALは東京でカッコいいライダースジャケットやバイクウェアを作っているブランドだ。街に映えるようなデザインが多い中、このタクティカルジャケットはフードや合計10個もあるポケット、部分的に使われているオイルドコットンなどがアウトドアな雰囲気を感じさせてくれる。

めちゃくちゃカッコいいジャケットなのだが、残念ながらプロテクターが入れられない仕様になっている。そこで僕は、バイクに乗るときには着脱式の袖を取り外して、カドヤさんのライダースジャケットと重ねて使っている。これがなかなか雰囲気が良いのだ。

余っているポケットに袖だけ入れて持っていけば、キャンプ地ではライダースを脱いで、動きやすいジャケットに簡単に着替えることも可能である。

ROARS ORIGINALは東京にしか店舗がないので、僕のような地方在住者の場合はネットショップに頼らざるを得ない。

サイズ感としては、身長173cm、体重69kg、僕の戦うバディにはMサイズがジャストサイズだ。

今回の着用写真のポージングには人気格闘ゲームストリートファイターⅡ(ストツー)のキャラクターたちの必殺技を採用させてもらった。オジサンがただ服を着ている写真をネットの海に投下するのが怖かったので、ストツーの力を借りていると言ったほうが正確かもしれない。

◆◆◆

ストツーを僕に教えてくれたのは従兄弟のマサユキ君だった。歳の離れた従兄弟のマサユキ君は幼いころの僕とたくさん遊んでくれて、僕にとってはヒーローのような存在だった。ゾイドを教えてくれたのも、ソニック・ザ・ヘッジホッグを教えてくれたのもマサユキ君なのだ。

今思えば、僕がバイクに乗るようになったきっかけも、マサユキ君が昔バイクに乗っていた姿に憧れたからかもしれない。

「バイクがあればどこにでも行けて、自由になれるんだよ」

車格の大きなオフロード系のバイクを僕に見せびらかしながらマサユキ君は言った。当時は何を言っているのかよく分からなかったが、実際バイクに乗るようになってみるとマサユキ君の気持ちがよく分かる気がする。

ROARS ORIGINAL – COOL JACKET for sqeed

同じくROARS ORIGINALの夏用ジャケットCOOL JACKET for speedである。

僕が持っているのはカーキ色で、バイク用っぽくない垢抜けた色味がとても気に入っている。

ライディングジャケットの夏物と言えば、メッシュジャケットを連想する人が多いと思うが、こちらはクールマックスという吸水速乾性に優れた高機能化学繊維を採用したジャケットになっている。

実際に使用している感覚としては、メッシュ素材ほど風が通っていく清涼感はないが、走行時には充分に涼しい。いかにもバイク用ですといった雰囲気のメッシュジャケットに比べて、バイクを降りてからの使い勝手がかなりよい。

前面には大きなポケットが4つ付いている。口の大きな仕様なのでグローブのままでも出し入れがしやすい。

また、このジャケットは先程のタクティカルジャケットと異なり、プロテクターを入れられるポケットが内側に用意されている。肩・肘・背中に加えて、なんと胸にもポケットが用意されている上に、社外製の胸部プロテクターを装着するための面ファスナーも用意されている。

サイズ感としては、173cm、69kg、僕の戦うバディにはMサイズがちょうどいい。

ただし、プロテクターを付けた状態でサマーソルトキックをやってみたところ、若干肩幅や袖丈が足りなくなる感じがするので、もしかするとLサイズでもよかったかもしれない。

ここまで紹介してきたウェアがそうであるように、僕は基本的にバイクに乗るときにはプロテクターを入れられるものを着るようにしている。それもたぶん、マサユキ君のことがあったからだろうと思う。

◆◆◆

ある日、部活を終えて家に帰ると母が「マサユキ君が事故に遭った」と言って、驚く僕を乗せて病院に車を走らせた。マサユキ君と血液型の同じ父は、輸血のために先に病院に向かったという。

一時停止を無視して飛び出してきた軽トラを避けるために、バイクに乗ったマサユキ君は激しく転倒した。幸い命に別状はなかったものの、マサユキ君は傷だらけになり、足を骨折してしまった。乗っていたバイクももちろん廃車だ。

バイクに乗ることは自分自身や道路を使ういろんな人に対して責任を負うことになる。ギプスを付けたマサユキ君の姿を思い出して、僕はプロテクターを付けるのだ。

パンツ編

続いてはパンツ編である。普段はズボンと言っている僕であるが、今日はちょっと勇気を出してパンツと言ってみることにした。

クシタニ – エクスプローラーライドジーンズ

夏以外の季節のキャンプにはクシタニのエクスプローラーライドジーンズを着用している。

有名な製品なので、知っている人も多いと思うが、一見普通のブラックジーンズに見えるこのズボンはなんと革でできているのだ。顔料ではなく染料で仕上げられた落ち着いた色味と布を模した型押しがジーンズっぽい見た目を作り出している。

革パンはテキスタイルのズボンに比べて圧倒的にニーグリップがしやすくなるため、操作性の向上に加えて、長距離走行時の疲労が少ない。耐摩耗性が高いということは、ライダーに安心感をもたらしてくれる効果もある。

さらにキャンプ向きと言える機能が撥水性である。クシタニさんはオーバーテクノロジーにより革自体に撥水性を持たせており、ちょっとやそっとの雨では水が浸透してこないのである。これを履いていれば、キャンプに向かう道中やキャンプ地において、変わりやすい山の天気に翻弄されることもないのだ。

ツーリングパンツとして完璧に近いこの製品であるが、難点を挙げるとすればその価格だろう。信じてもらえないかもしれないが、税込みで6万円を超えてくる。まあ、それだけの価値のある製品と言えばそうなのだが。

サイズ感としては、173cm、69kg、僕の戦うバディには30インチがちょうど良い。一般的なストレートジーンズといった感じの形をしており、リーバイスの505に似たような感じだ。もう少し裾に向かって細くなってくれたほうが個人的には好みである。

◆◆◆

僕が高校生だったとき、ブランカ使いのマサユキ君が失踪したという連絡が叔母からあった。失踪と言っても、電話は通じるようなのだが、どうやら居場所を教えてくれないらしい。

頭の良かったマサユキ君は地元の優良企業に就職していたが、数日前に突然仕事を辞めて、一人暮らしをしていたアパートから姿を消してしまったようだ。

何か事件に巻き込まれたんじゃないかと皆で心配したが、マサユキ君は「ただ自由に生きたいだけ」と電話で叔母に言ったそうだ。仕事とかプライベートな人間関係とか、いろんなことが嫌になってしまったらしい。

僕の記憶の中にあるマサユキ君と失踪したマサユキ君のイメージがどうしても合致せず、混乱したことを思い出す。

Max Fritz – ダブルニーストレッチジーンズ

もうひとつ愛用しているのがマックスフリッツのジーンズである。ワークウェアによくあるダブルニージーンズを細身にして、さらにストレッチ性のある生地を用いることでライディング向けにした製品である。

膝に付いているジッパーを開ければプロテクターを入れることもできる作りになっているのも大きな特徴の一つである。

サイズ感としては、173cm、69kg、僕の戦うバディには48サイズがちょうど良い。

◆◆◆

マサユキ君が失踪してから半年ほど経った頃だろうか、叔母の家と僕ら家族の家に、大量の魚介類が届いた。依頼主の欄には丁寧な字でマサユキ君の名前が書かれていた。

行方知れずとなっていたマサユキ君、なんと東北にあるどこか遠くの港町で漁師になっていたのだ。「マサユキはサンマを食べるのが綺麗だったからな」と、関係あるのかないのかよく分からないことを父が言った。

それからは季節ごとに旬の魚介類がマサユキ君から届くようになった。母は「捌くのが大変だ」と愚痴をこぼしていたが、僕はマサユキ君が漁獲した魚が届くのをいつも楽しみにしていた。父は「あいつはサンマを食べるのが綺麗だった」と魚介類が届くたびにいつも同じ話をした。

僕の知らない道だけど、マサユキ君は確かに戦っている。マサユキ君が送ってくれた魚は、スーパ-で買った魚よりもずいぶんと美味しい気がした。

Max Fritzの補足情報

マックスフリッツは今回紹介したダブルニージーンズ以外にもワークウェアやアウトドアのテイストを取り入れたウェアを数多く販売しており、キャンパーはもちろんクラシックなバイクに乗っているライダーにもおすすめである。僕も冬用のウェアを2点使わせてもらっている。デニムの生地はちょっと縦落ち感が強すぎてケバい感じもするが、モトパンツ的なデザインが気に入っている。

max fritz femmeという名前で女性向けのバイクウェアも多く展開しているようなので、全国の黒ギャルや白ギャルにも是非取り入れてもらいたいところである。北海道から関西まで現時点で7店舗展開しているほか、ナップスなどの量販店でも見かけることがあるので、試着できる機会も多いと思う。

Leave The Main Road

マサユキ君の失踪後、一度だけ電話で直接話をしたことがある。

東北での生活はどうだいと聞くと、「好き勝手にに生きるのも、結構大変だよ」とマサユキ君は言った。その声は笑っていたけれど、僕にはなんだか疲れているように聞こえた。

あんなに沢山届いていた魚介類も、いつの頃からかぱたりと届かなくなってしまった。叔母によれば、マサユキ君は漁師も辞めてしまったようで、今はもうどこで何をしているのか、誰にも分からなくなってしまった。

“Leave The Main Road”

本来の道から外れて生きること。一見自由に見えるその生き方には、僕には分からない責任がつきまとうのかも知れない。

ストツーと同い年の僕は、今年でマサユキ君が失踪したときと同じ年齢になった。サマーソルトキックを格好良く決めるには、心も体も少し硬くなり過ぎてしまったみたいだ。

マサユキ君がそうであったように、僕も何かを意識することもなく普通にサラリーマンになっていて、ストツーほど派手じゃないけど、毎日いろんなものと戦っている。

日々の仕事や人間関係に辟易して、何もかも捨ておき、遠くに逃げ出したくなる時もある。だけどそんな時、マサユキ君の電話での乾いた言葉を思い出す。

失踪する代わりに僕はバイクに乗り、キャンプに行く。自由によく似た感覚で、自分を紛らわそうとする。

ストツーのキャラたちは、いったい何の為に戦っていたのだろうか。ひょっとしたら、マサユキ君ならその答えを知っているかもしれない。

いつか叔母に教えてもらったマサユキ君の電話番号にかけてみる。

マサユキ君じゃない機械の声の女が出てきて、この電話番号は現在使われていないと僕に言った。

「僕はもう少しこっちの道で戦ってみるよ。」

機械の女にそう言って、僕は静かに電話を切った。

呪具っぽいキャンプ道具で領域展開してみた

 

(この記事は2022年5月7日にLantern Ridersというキャンプツーリングに関するwebサイトに投稿したものである。)

 

寒い冬が終わり、キャンプやツーリングの季節がやってきた。キャンパーやバイカーも、今週末はどこに出掛けようかと、仕事そっちのけで考えているのではないだろうか。

一方の僕は、主に呪術廻戦のことで頭がいっぱいである。いったい何が始まったのかと困惑した死滅回游編も、魅力的な敵キャラと高専キャラの活躍で盛り上がりを見せており、毎週ジャンプの発売が待ち遠しい限りである。

今週もいつものようにジャンプを読み終えて、部屋で無量空処や嵌合暗翳庭の練習をしていると、ふとあることに気が付いた。

・・・ひょっとして、キャンプ道具って結構呪具っぽいものが混ざっているのではないだろうか。

呪術廻戦を読んだことのない人のために説明しておくと、呪具とは呪力*1の込められた武具のことであり、呪霊*2や呪詛師*3と戦う上での有効なアイテムである。

生まれつき呪力のない天与呪縛(フィジカルギフテッド)の僕でも、呪具の力を借りることで、領域展開を成功されることができるかもしれない。思い立ったが吉日、今日は僕の所有する呪具っぽいキャンプ道具を駆使して、領域展開を試みることにした。

テント設営の必需品「ペグ&木槌」

まずはペグと木槌だ。言うまでもないが、テントやタープ設営のための必需品である。

ペグについては軽量かつ高強度なUNIFRAMEのジュラパワーペグを愛用している。テントを買ったときに付属していたペグは簡単に曲がってしまってしまったため購入したのだが、このペグは硬い地盤に打ち込んでも一度たりとも曲がったことがない。実に優秀なペグである。

ペグを打ち込むために専用のペグハンマーを使う人が多いと思うが、少しでも荷物を軽量化したいキャンプツーリングやソロキャンプでは、軽量な木槌を選択肢に加えておいてもいいだろう。かくいう僕も、木槌ユーザーのひとりである。

さて、この組み合わせでピンときた人がほとんどだと思うが、ペグと木槌を駆使することで、呪術高専1年釘崎野薔薇の芻霊呪法を使うことが可能となる。

さらに、木槌単体でも死滅回游泳者の日車寛見が使う裁判官っぽいハンマーになってしまうのだ。

やはり、僕の推測した通り、キャンプ道具には呪具っぽいものが紛れ込んでいるようだ。この調子で呪具から溢れ出す呪力を浴び続ければ、必中必殺の領域展開をものにすることも夢ではないはずだ。

焚火を充実させる「ハチェット」

次の呪具はハスクバーナのハチェット(小型の手斧)だ。オレンジ色の柄の部分は軽量な樹脂でできていることで、先端部に重量が集まり、斧を振り下ろした際の慣性による力を有効に利用することができる。

さらに、この手斧はなんと、刃の反対側をハンマーとして用いることができるつくりとなっている。こいつ一本あれば、薪割りもできるしペグも打ち込める一石二鳥なアイテムなのである。

そして、手斧と、あとフォトショップを駆使することで、あの一級術師っぽい感じを醸し出すことができる。

見ての通り、黒鳥操術を駆使する冥冥さんである。渋谷事変では特級呪霊をも払ってしまう活躍を見せた実力者である。しかも、ケツとタッパもデカいときている。

・・・僕の中の生得術式が目覚めようとしているのをひしひしと感じる。この勢いのまま次のキャンプ道具に進んでいこう。

もはや説明不要!「ポール」

ポールである。テントやタープの骨組みとなるあのポールである。ポールについてはもはや特に語ることはないが、劇中でも大活躍のあの呪具に早変わりしてしまうのだ。

そう。様々な強者たちの手を渡り歩く特急呪具、游雲である。一般的には三節棍(さんせつこん)と呼ばれる武器で、ヌンチャクの発展形と言ったところだろうか。

重要な局面で幾度となく登場している印象的な呪具であるが、本編での初登場は特級呪霊 花御との戦いに伏黒恵と禪院真希が使用していたシーンである。禪院真希はいい。ケツとタッパがでかいところが特にいい。

小さくても明るさ十分「LEDランタン」

最近注目を集めいているアウトドアメーカー、5050workshopのMINIMALIGHTである。小さくて可愛くてしかも安い。

しかしながら、こいつの人気の秘密はそれだけではない。なんと、ハンディライトとしても使うことができてしまうという機能性も持ち合わせているのだ。本当かどうか分からないが、100m先まで照らすことができるらしい。たしかに、小さいながらも明るさは十分である。

そして、このハンディライトの機能を応用することで、圧倒的な呪力出力を誇るあの術師の技を繰り出すことができる。

死滅回游泳者、石流龍のグラニテブラストだ。乙骨、烏鷺との三つ巴の戦いは読み応え十分で、印象的なキャラクターの一人である。

残念ながら、石流龍のリーゼントを再現するためには頭髪が不足していたため、リーゼント部はDIYで作成している。しかしながら、実はこのリーゼントにはキャンプ的にも大きなメリットがあって、ハンディライトとしての機能を拡張して、ヘッドライトとして使用することが可能となるのだ。

ランタンとハンディライトの2WAYだったMINIMALIGHTが、ランタン・ハンディライト・ヘッドライトの3WAYに化けるのである。欠けていたピースが埋まった、そんな感じだ。

このカスタムを僕一人で独占しておくのは忍びないので、作り方を紹介しておくことにする。

MINIMALIGHT ヘッドライト化カスタム

まず用意する材料は下記である。いずれも一般的な家庭に常備されているものばかりだ。
・段ボール
・トイレットペーパーの芯
・ガムテープ
・毛糸
・黒いテープ

材料が準備できたら、さっそく段ボールをカットしていく。ちなみに今回使用した段ボールはMINIMALIGHTをインターネットで購入した際の過剰梱包を再利用している。今話題のSDGsにも配慮してるってわけだ。

すべてのパーツを切り出したら、縦横のメインフレーム、さらに補強リブをガムテープで張り合わせていく。

次に、リーゼントの先端部分にMINIMALIGHTを挿入するためのトイレットぺーパーの芯を仕込む。一般的なトイレットペーパーの芯はMINIMALIGHTよりも少し径が大きいので、一度ハサミで切り開いて大きさを調整しておくとよいだろう。

ここまでの工程で、リーゼントのフレームが完成である。

続いてリーゼントの表面を仕上げていく。まずはガムテープでフレームをぐるぐる巻きにして「面」を作っていく作業だ。補強リブが沢山入っている方が形状が安定するので、見えない部ではあるものの手を抜かないほうがいいだろう。

リーゼント曲面が出来上がったら、いよいよ毛糸を巻き付けていく。下地が見えないように、ムラなく巻き付けていこう。

ヘルメットへの取り付けは面倒なので、黒いテープを使ってしまおう。直接頭部に取り付けたい場合は、接続方法を各自で工夫してみてほしい。何でもかんでもインターネットで情報が手に入ると思ったら大間違いである。

注意してほしいのは、オン/オフのスイッチはライトと反対側にあるのでスイッチをオンにしてからリーゼントに挿入しなければならないこと、また、ライトはあくまで差し込んでいるだけなので激しく頭を動かすと落っこちてしまうことだ。

さて、確認のためにここでもう一度グラニテブラストをしてみよう。

「グラニテ・・・」

「う、うわぁぁぁぁぁ!!!!!」

ついに掴んだ呪力の核心

今ならいける気がする。そうだよね。

領域展開には至らなかったが、なんとか黒閃を決めることに成功した。打撃との誤差0.000001以内に呪力が衝突した際に生じる空間の歪み、それが黒閃。威力は平均で通常の2.5乗とも言われている。

確立された自分自身のキャンプスタイル。それをフィールドに設営するということは自らの生得領域を具現化する行為、すなわち領域展開そのものなのである。僕たちキャンパーは、キャンプを繰り返すことで、その純度を高めていく。

黒閃を決めてハイになっているので、ちょっと自分でも何を言っているのかよく分からないが、黒閃を決める前の僕と黒閃を決めた後の僕では、呪力の核心との距離に天と地程の差がある。ついでにフォトショップも上手くなっている。

ちょっと、思ったより上手くまとまらなかったので、ここでLANTERN RIDERSの新コンテンツを紹介しておこう。(※サイトはすでに閉鎖している。)

「LRストーリーズ」とは新進気鋭のアウトドアメーカー、キャンプ場、アウトドアギアやサービスへの思いをPRする場所。まあ、かみ砕いていえば、バイクキャンプwebメディアLANTERAN RIDERSのサイト内に、アウトドア関係の商品等の紹介を領域展開することができるという具合のものである。PR掲載までの手順も簡単で、手間のかかる難しい入力はなくて、「シン・陰流 簡易領域」的なお手軽さを兼ね備えている。詳しくは、LANTERN RIDERSの公式TWITTERに問い合わせてみてほしい。(※すでに運用されていない。)

おっと、そんなことをしているうちに次のキャンプに行く時間がやってきてしまった。

僕たちは部品だ。キャンパーがキャンプし続けるための部品。キャンプすることの意味、それが分かるのは僕たちが死んでから何十年、何百年を経た後なのかもしれない。きっと僕たちは、何か大きな歴史の歯車の一つに一つに過ぎないんだと思う。

人は過ちを繰り返す。なんとなくまとまりかけたのに、また同じような話を展開している。まるで、廻り続けることが、戦い続けることが、僕たちの宿命だとでもいうかのように。

*1:ハンターハンターで言うところの念能力

*2:ブリーチで言うところの虚

*3:ナルトで言うところの抜け忍

『写ルンです』といくキャンプツーリング

(この記事は2021年11月12日にLantern Ridersというキャンプツーリングに関するwebサイトに投稿したものである。)

今年も早いもので、気が付けばあと二ヶ月を残すのみとなってしまった。

昨年に引き続き、2021年はCOVID19に振り回される一年であった。ワクチンのせいなのか、ウィルスの気まぐれのせいなのか、真相は定かではないものの、こと国内においては忌まわしきウイルスによるパンデミックも(束の間の?)落ち着きを見せつつある。

それに伴って、マスク着用や消毒、ソーシャルディスタンスに配慮しながらではあるものの、休日の外出を伴うアクティビティもだんだんと楽しめるようになってきた。

今朝見たテレビのニュースでは、「春から初夏にかけて一度は中止になってしまった学生たちの修学旅行ですが、季節を秋に仕切り直して再開する学校が増えてきています」と綺麗な声のアナウンサーが話していた。

青春時代に失われる二年間と、おじさんになってから失われる二年間の比重はまったく違うはずだ。社会人以上に我慢を強いられてきたであろう子供たちが、友人たちと大切な体験を共有することができるのは、手放しで喜ばしいことだ。

思えば、僕の中学校の修学旅行もちょうど今くらいの肌寒くなりはじめた季節だった。

「おまえの好きな子教えろよ!」

「そんなの、いるわけねえだろ。うちの学校の女子、みんなダサいじゃんか。安田はどうなんだよ!」

「おれはサキちゃん!サキちゃんとやりたい!サキちゃんとやりたい!」

美しかった景色よりも、友人とのくだらない会話ばかりを思い出してしまうのは、きっと僕がまだ幼かったからだろう。

知らない場所の、知らない時間を、知ってる人と共に過ごす。まるで永遠かのように感じた今が、いつか終わってしまうことも想像できないまま、14歳の僕たちは修学旅行のしおりに書かれた入浴時間のルールを無視して、ホテルのでっかい風呂に飛び込んだのだ。

◆◆◆

10月の終わりの季節、久しぶりにキャンプツーリングに出掛けてきた。

場所は岐阜県高山市にある奥飛騨温泉郷オートキャンプ場だ。(温泉郷は「おんせんごう」と読むそうな。)以前にも利用したことがあるのだが、これが実に良いキャンプ場なのである。ロケーションや設備はもちろんのこと、周辺の道も楽しく走ることができる。

高山市は古い町並みや合掌造りで有名な白川郷、絶景を楽しめる新穂高などなど、観光資源にも恵まれており、昔から好きな場所でもある。

天候にも恵まれ、とても満足感のあるキャンプだったので、フィールドレポートという形でここに残しておこうと思う。

紅葉の中を駆け抜ける名道、せせらぎ街道

南から奥飛騨を目指す道中はせせらぎ街道を利用するのが良いだろう。緑と川に囲われたゆったりとしたカーブが心地よく、東海地方の名道として名を馳せている。あまりタイトなコーナーはないため、人によっては物足りないということもあるかもしれないが、多くの荷物を積載したキャンプツーリングではちょうど楽しめる塩梅である。

この日は10月末ということもあり紅葉を見に来た車で混み合っており、快走することは叶わなかったものの、赤く染まりはじめた景色を存分に満喫することができた。

カフェ・アグスタで美味しいコーヒーとヴィンテージバイクを堪能

今回はスルーしてしまったがせせらぎ街道のおすすめスポットのひとつに「ライダーズカフェ・アグスタ」がある。せせらぎ街道を走るライダーの憩いの場であり、60〜70年代の古いバイクの展示も行われているなんとも素敵な場所なのである。

時期によっては名前に冠しているMV AGUSTAの名車750Sの展示が行われている。僕も以前一度見に行ったことがあるのだが、ディスコ・ボランテ(空飛ぶ円盤)と呼ばれるエラの張ったタンク、砂型で作られた空冷四気筒、青・赤・白というイタリアンには珍しいパターンのトリコロールカラー等々、見どころ充分で美しいモーターサイクルであった。

冬季は営業していなかったり、展示されているバイクも時期によっては異なるので、尋ねる前には一度公式サイトをチェックしておくと良いだろう。

壊れかけのiPhone

せせらぎ街道の道沿いには所々に車やバイクを止められる箇所があるので、紅葉と一緒に愛車を撮影するのがいいだろう。

僕も紅葉を背景にバイクの写真を撮ったので、秋のせせらぎ街道の美しさとともに、僕の愛車をここで紹介しようと思う。

バイクにマウントしてナビとして使っていたiPhoneのカメラがバグってしまったため、少々分かりにくいかもしれないが、紅葉のように真っ赤な車体のDUCATI SS900ieだ。トラスフレームの美しさがお分かりいただけるだろうか。

バイクの振動でiPhoneのカメラが壊れるという噂は聞いたことがあったが、きっと大丈夫だろうと高を括っていたところがある。失ってはじめて、iPhoneの存在の大きさに気がつく。

タイミングの悪いことに、出発前日にデジタルカメラを充電したまま家に忘れてきてしまったため、ここからのレポートは狂ったiPhoneの写真でお届けせざるを得ない。分かりにくいとは思うが、iPhoneを失った悲しみに免じてどうか許して欲しい。

Aコープ奥飛騨店で食材を調達

さて、せせらぎ街道で高山まで北上したら、158号線、471号線を通って奥飛騨を目指す。北アルプスの手前に差し掛かってくるので、景色のスケール感が大きくなるとともに、気分が高揚してくるのが分かる。この季節には北アルプスの山々に雪がかかり、紅葉で赤く染まった目の前の山との対比を楽しむこともできる。(残念ながら写真はない。)

キャンプ場に着く前にはAコープ奥飛騨店に寄って食材を調達すると良いだろう。ここはキャンプ場からほど近い場所にあるので、チェックイン後にやってくるのにも適した立地だ。僕らもAコープで一通りの食材を買い揃えることにした。旅先のスーパーマーケットというのは、普段見慣れない食べ物などが売られており、旅行の高揚感も手伝って、ついつい余計なものまで買ってしまいたくなる。

他に何か変な食べ物はないかなんて思いながら、なんとなく店内をまわっていると、レジの前の乾電池コーナーに懐かしいものを見つけた。

FUJIFILMの使い捨てカメラ「写ルンです」だ。スマートフォンの普及によって、すっかりその存在を忘れてしまっていたが、iPhoneがバグった今の僕にはちょうどいいアイテムだ。僕は中三の修学旅行以来、実に約15年ぶりに写ルンですを買い物カゴに入れることになった。

さて、カメラを手に入れることができたので、ここから先の写真は写ルンですで撮影したものとなる。解像度は低いかもしれないが、ブレブレの写真よりは幾分かマシなはずだ。 

奥飛騨温泉郷オートキャンプ場

道の駅 奥飛騨温泉郷上宝

Aコープから数キロ走れば道の駅奥飛騨温泉郷上宝に到着する。実はこの道の駅、目指していたキャンプ地である奥飛騨温泉郷オートキャンプ場の入り口になっているのだ。物産館もあったりして、地場のちょっとした食材やお土産を調達することもできる。

キャンプ場のチェックイン開始の時間帯には受付が結構込み合うので、少し時間をずらすのも手かもしれない。

バイク乗りには川沿いのサイトがおすすめ

サイトは3つに分かれていて、電源の使用可能なサイト1、電源なしで炊事場などの施設に近くて便利なサイト2、敷地の真横を流れる川に近いサイト3という構成となっている。

僕たちが今回、というか、ここにくる時にいつも選ぶのはサイト3だ。施設からは少し離れるものの、開けた眺望と、川を間近に感じられるおすすめのサイトである。バイクで来る人のほとんどは、サイト3を使っている印象がある。

施設の写真もいろいろ撮ってみたのだが、写ルンですを使いこなせず、何が写っているのかさっぱり分からないものだらけであった。写ルンですでの室内撮影は、基本的にフラッシュを焚く必要があるようだ。

KTM 790 adventure

この日は初めてお会いするK村さんとその愛車KTM 790 adventureも一緒だ。790 adventureは同社の790 dukeのパラツインエンジンをベースとしたアドベンチャーツアラーである。初めて見たが、結構デカい。

20Lのタンクに加えて燃費もかなり良いようで、1回の給油で400km以上走れてしまうそうだ。今回の一泊二日のキャンプの間にも、K村さんは給油をせずに乗り切ってしまった。2回も給油した僕のSS900ieとは大違いである。

実は以前、鈴鹿サーキットでの試乗会で790dukeに試乗したことがあるのだが、そのときに驚いたのはエンジンのドコドコ感である。パラツインなのになんでなんだと思ったのだが、後日調べてみるとこのエンジンは75度位相というちょっと変わったクランクを採用しており、並列でありながら不等間隔爆発なのである。不等間隔爆発の音や地面を蹴る感覚が好きで、Vツインばかりに乗っている僕にもグッとくるエンジンなのである。

(以前試乗会で撮影したKTM duke 790)

dukeしかりadventureしかり、KTMのバイクは共通のデザインコードにのったような個性的で新しいデザインが目を引く。知っている人も多いと思うが、KTMのバイクのデザインはキスカというデザイン会社によるものである。日本でいうとヤマハとGKデザインのような関係だろうか。そういえば並列エンジンに不等間隔爆発を採用するのもヤマハの十八番だった。

最近では若い人が390dukeに乗っている姿を街でよく見かけるようになった。きっと、中免をとったばかりのかつての僕らが持っていた「とにかくカッコいいバイクに乗りたい」という気持ちに、ダイレクトに訴求するのだろう。

天然温泉の露天風呂でツーリングの疲れを癒す

奥飛騨温泉郷オートキャンプ場の最大の目玉といえば、やはりキャンプ場内に天然温泉があることだろう。

浴槽は潔く露天風呂ひとつのみ。空を見上げるとモミジの木があって、紅く染まった葉を眺めながら気持ちよく入浴することができる。もう少し後の季節になれば、湯面に浮かぶモミジを見ることもできるだろう。

注意点としては、温泉自体には体や髪を洗う場所が用意されていないことが挙げられる。その代わりに脱衣場には200円で使えるシャワールームが併設されている。ドライヤーの使用料も100円なので、風呂に入る前には100円玉をたくさん用意しておく必要があるだろう。

キャンプ場の利用者は朝6時から、夜10時まで無料で入浴することがでるため、僕は初日の昼、夜、二日目の朝と合計三回利用させてもらった。

初日のお昼は偶然にも他の入浴客はおらず、温泉を一人で満喫することができた。中三の時みたいにウォーターボーイズで学んだバレーレッグでもかましてやろうかと思ったけど、僕ももう30だ。今日はゆっくり、温泉と紅葉を楽しむことにしよう。(ウォーターボーイズシリーズはヒロインを演じる平山あやさんが最高にキュートな映画版がおすすめである。)

秋のキャンプに選んだ装備

10月末の飛騨高山ということで、夜から明け方にかけて気温が低いことを懸念した僕は、所持している装備の中で出来る限りの冬仕様でキャンプに望んだ。

結果として、思っていたより気温は下がらず、風もなかったこともあり、睡眠を含めて快適に過ごすことができた。正確な気温は分からないが夜中で一桁台の前半くらいだろうか。

寝具はいつも使っているイスカのアルファライト700Xである。(というよりこれしか持っていないのだが。)シュラフは-6度まで対応らしいがあくまでスリーシーズン用で少々心許なかったため、ロゴスのゴム製湯たんぽを購入して行った。

これがなかなか正解で、寝る前に足元に入れて朝まで温かさをキープしてくれたし、折り畳めて嵩張らないためキャンツーにはもってこいだ。

シュラフに入るときにはもちろん着てきたバイクウェアを着込む。この日の僕のウェアはこんな感じだ。

・クシタニ/ウィンターアメニタジャケット
・クシタニ/エクスプローラーライドジーンズ

さらにその下には冬用のインナー類を着込んでいる。

・ミズノ/ブレスサーモアンダーウェア
・ワークマンのパッチ
・ワークマンの中綿ズボン

他にもホッカイロをたくさん持っていったが、結局使わずじまいであった。

1/fゆらぎ

気温がそこまで下がらなかったこともあり、夜にはゆっくりと食事とお酒を楽しむことができた。

(フラッシュを焚き忘れた焚火の写真。)

炎のゆらぎが心地よいですねとK村さんが言った。

炎の揺れ方や星のまたたき、波の音や木漏れ日には1/fゆらぎというリズムが隠れているという。壊れかけのiPhoneで1/fゆらぎについて調べてみると「スペクトル密度が周波数fに反比例するゆらぎのこと」だそうだ。一体なんのこっちゃって感じだ。

あたりが静かになってくると、川の音が意外と大きいことに気がつく。結構な音量なので、気になる人は川沿いのサイトを避けて選んだ方がいいかもしれない。

僕は眠るときにも全然に気にならず、心地よささえ感じた。(酔ってただけかもしれないが。)水と水のぶつかり合うノイズに包まれながら、川の音にもゆらぎがあるのだろうかとか、そんなことを考えているうちに、いつの間にか眠りについてしまった。

北アルプス大橋で絶景とともに愛車を撮影

2日目。帰る前にはキャンプ場から少し寄り道して北アルプス大橋を目指す。

北アルプス大橋は全長150m、高さ70mの橋で、その名の通り、北アルプスの山々を望むことのできる有名な絶景ポイントだ。タイミング次第では橋の脇にバイクを停めて雄大な峡谷を背景に写真を撮ることもできる。(他の利用者の邪魔にならないよう十分に注意が必要である。)

山やバイクの写真を撮っていたら、写ルンですを使い切ってしまった。

今回僕が買った写ルンですは27枚撮りのタイプだ。といっても、調べてみたところ、以前は39枚撮りや高感度版などのバリエーションがあった写ルンですシリーズであるが、今は27枚撮りのスタンダードタイプ以外は絶版になってしまったようだ。

27枚という枚数はひとつの旅にちょうどいい数字なのかもしれない。明日はあそこに行くから、今日は何枚までにしとこうとか、失敗している余裕はないぞとか、そんな風にして旅のシーンの一つ一つを吟味しながらカリカリとフィルムを巻いてシャッターを切る。

大容量のSDカードやスマートフォンに慣れてしまった僕には、その行為さえも愛おしく思えた。懐古主義とかそんな言葉で片付けてしまうには、ちょっと惜しい感覚だ。

こうして記事を書きながら出来上がった写真を眺めていると、チープな写ルンですで写した写真は、目に見える物を写しきってはくれないけれど、目に見えない、それこそゆらぎのような物をとらえてくれているような気がした。

(被写体がだいたい中心からズレてしまった。)

安田のけつ毛とサキちゃんのまつ毛

先日久しぶりに実家に帰省した際、母からなにやら写真を手渡された。

僕が昔使っていたナップサックから写ルンですが発掘されたというのだ。現像された写真をめくっていくと、中三で行った京都の修学旅行に持って行った時のものだということが分かる。

金閣寺清水寺、二条城、ブレてしまって何が何だか分からない物体、同じホテルになった他校の女子に頼んで一緒に撮ってもらったもの、余ったフィルムで撮ったであろう近所の犬、誰かのケツの穴。当時の僕が吟味したであろう27枚の記録がそこにあった。

その中の何枚かには、たまたま修学旅行で同じ班になった、当時好きだったサキちゃんの写ったものもあった。隣の席から見えた長いまつ毛に見惚れたこと、消しゴムを拾ってあげたときに少しだけ触れた指が細かったこと、卒業アルバムに映るサキちゃんの写真を見ながら覚えたての床オナニーをしまくったこと。忘れていた記憶の引き出しがひっくり返されていく。

修学旅行が終わると、サキちゃんはバスケ部のエースと付き合い始めた。僕が安田のケツの穴を爆笑しながら撮影している間に、同じ建物のどこかではバスケ部のエースがサキちゃんに告白していたのだ。

楽しかった思い出も、切ない思い出も、全てが急に懐かしくなった。みんな今ごろ何をしているんだろうか。当時のことが急に懐かしくなってしまい、登録したっきり何年も放置したままのFacebookにログインしてみた。こんな僕でも地元の知り合いから何件もの友達申請が来ていて、ワクワクしながら一人一人のページにアクセスしてみる。

学年一のイケメンだったバスケ部のエースはビジュアル系メイクにハマっていて、アナウンサーになるのが夢だったサキちゃんは地元でキャバ嬢になっていて、仲の良かった安田は陰謀論に夢中らしい。

SNSマッチングアプリが当たり前になった今では、出会うはずのなかった人と出会える機会は増え、今生の別れみたいなものはほとんどなくなったように思う。それは素晴らしいことである一方で、出会いの喜びと別れの美しさを希薄化させてしまったのかもしれない。

友達申請を全て却下して、僕はFacebookをログアウトした。きっともうログインすることはないだろう。

さようなら、僕のアイフォン。さようなら、僕の初恋。さようなら、僕の青春。

HY戦争の歴史を訪ねて〜バイクのふるさと浜松2022〜

1979年。ヤマハ発動機本田技研への宣戦布告により静岡県浜松市で通称HY戦争(エイチワイせんそう)と呼ばれる戦いが勃発した。

1983年2月のヤマハによる事実上の敗北宣言まで戦線は拡大を続け、内地の主戦場となった浜松は総人口の約半分を失った。浜松市民は、自らの行為に恐怖した。

HY戦争の終戦後も鈴鹿戦役や第一次ネオ・ヤマハ抗争、第二次ネオ・ヤマハ抗争と呼ばれる小規模な勢力争いが続いたものの、JAMA(日本自動車工業会)の主導による復興計画の甲斐もあり、今では争いの傷跡はほとんど残っていない。2018年にはホンダとヤマハによるスクーター部門の提携が始まり、かつて浜松で二社による熾烈な戦いがあったことを知らない人も多いと聞く。

浜松では毎年、HY戦争で犠牲になった尊い命を弔う「バイクのふるさと浜松」というイベントを開催している。イベント名が少々ポップだが、厳粛なイベントであり、全国から毎年数多くの追悼者が集まる。

実を言うと、浜松は僕が生まれてから18歳までを過ごした街でもある。幸い、僕の住んでいた地域は中立を保っていた独立小国家スズキの近隣に位置していたため被害は少なかったようだが、当時を知る父や母はHY戦争のことを語りたがらなかった。

大学に行くために浜松を出た僕は、いつしかバイクの免許を取得した。今思えば、浜松に生まれた宿命みたいなものだったのかもしれない。

「バイクのふるさと浜松」は、コロナ禍に突入して以来、開催中止になったりオンラインイベントという形をとっていたのだが、2022年は2019年以来久しぶりにリアルでのイベントが開催されることとなった。

もちろん僕もこのイベントに参加することにした。父や母が話さなかった、この街の歴史を知るために。そう、これはバイクと僕のふるさと、浜松の物語だ。

バイクのふるさと浜松2022

トライアルデモンストレーション

今年の会場である浜松オートレース場にやってきた。例年、浜松市総合産業展示館で開催されていたのだが、今年はちょっと趣向を変えたようだ。

浜松オートレース場は最近改修されたそうで、スタンド周りがとても綺麗に整備されている。小さいオーバルコースはサーキットと違ってコースの全貌を見ることができる。

会場では早速トライアルのデモンストレーションが行われていた。HY戦争末期には現在の浜松市天竜区において、トライアル兵達によるゲリラ戦が繰り広げられたと言われているので、たぶんその関係でやっているんだと思う。

トライアルは2019年のイベントや鈴鹿8耐のイベントステージでも観戦したが、まるで手足のように自由自在にバイクを操るそのパフォーマンスは何度見ても見応えがある。

バイク用品等販売コーナー

例年、メーカーアパレルやなんだかよく分からないバイクグッズの売っているブースが多数出店される。スズキの湯呑みを買おうか散々悩んだ挙句に結局買わないのは、もはやこのイベントのルーティーンと言っていいだろう。

以前の話になってしまうが、2019年のイベントでは浜松に本社を置くクシタニが出店していたことを思い出す。そのクシタニもHY戦争の最中には、ホンダ・ヤマハ両陣営に皮革製戦闘服を供給し、戦いの裏で暗躍していたいう噂がある。

クシタニブースでサンプル品として安く購入できたスポーツタイプのコンテンドジャケットがこちらである。

僕にとって初めてのクシタニ製品であり、ライディング時の動き易さに感動したことを思い出す。北海道ツーリングにも着て行って、運動性はもちろんのことベンチレーション機能や撥水性の高い生地にも随分助けられたものである。今でも中間期には着用しているお気に入りの一品だ。

コンテンドジャケットは2023年現在もラインナップされている定番モデルであるが、そもそもコンテンドっていったいどんな意味なんだろうか。調べてみたところ、contendは「戦う、争う」という意味を持っている言葉であることが分かった。そう、クシタニはこのジャケットをバイクのふるさと浜松で販売することで、逆説的に追悼の意を込めていたのである。

異種100mレース

僕が訪れた日にはオートレーサー、8耐マシン、トライアルマシンによる異種100mレースが開催された。全く異なるレギュレーションで作られたマシンでドラッグレースをするという面白い企画である。

やっぱり8耐マシンだろうとか、この距離ならトライアルじゃないかとか、ここはホームコースのオートレーサーだよとか、観客席ではみんなの予想や期待が飛び交う。いつものモータースポーツとちょっと違ったワクワク感だ。

また同じようなことをやるかもしれないので結果は伏せておくが・・・、僕の予想を裏切る結果となり会場は大いに盛り上がった。

展示車両

このイベントの目玉の一つが、各メーカーの新車やレース車両、謎の旧車といった様々なマシンの展示である。

新車には自由に跨ることもできるので、買い替えなどを検討している人にもうってつけなのではないだろうか。バイクのふるさと浜松は例年子供連れの家族が多く来ており、子供たちがバイクに乗って記念撮影をしていたりして微笑ましい。



旧車というかヴィンテージなバイクをこんなにたくさん見られることもなかなかない。旧車の展示部屋では、おそらく展示車両のオーナーであろうお爺さんがハーモニカで生BGMを演奏しており、なんだかヤバい。

ちなみに、浜松では原付もしくはバイク全般を「ぽんぽん」と呼ぶことがある。小さい子どもが自動車のことをブーブーと呼ぶのと同じようなシステムだ。実際、僕の祖父母もバイクのことをぽんぽんと言っていたことを思い出す。

今回は会場がオートレース場ということもあり、オートレースの競走車もみることができた。メグロトライアンフの古い競走車のエンジンもいいが、現行のスズキセアもなかなかメカニカルで格好いい。



そしてやはり、僕が最も楽しみにしていたのがロードレーサーである。ホンダ・ヤマハ・スズキを生み出した浜松ならではの充実度。この3メーカーのMotoGPマシンが並ぶイベントってなかなかないんじゃなかろうか。

ここ最近のMotpGPは、第二次ネオ・ヤマハ抗争で破竹の活躍を見せたバレンティーノ・ロッシの引退、独立小国家スズキの突然の撤退、イタリアメーカーの躍進など、日本勢にはなかなか苦しい状況となっているが、2023年の大逆転劇を期待したい。



8耐に参戦していた浜松のプライベートチームのマシンも多く展示されている。間近で見る耐久レーサーの生々しさに大興奮。巨大な耐久仕様タンクはやはり格好いい。

こちらはIRF(磐田レーシングファミリー)とアズールレーンというゲームとのコラボマシンである。アズールレーンのことはよく分からないものの、2022年の8耐ヤマハワークス不在の中、ヤマハファンの注目を大いに集めていたマシンだ。

レースクイーンさん(尊みを感じて桜井さん)の目線をバッチリもらっているが、これは偶然そうなってしまったわけで、僕としてはマシンの全景を写そうとしていただけなので、決して浅はかな勘違いをしないでほしい。

もうひとつのHY戦争

目的としていたHY戦争の歴史はさっぱり学ぶことができなかったが、Wikipediaにだいたいのことは書いてあるし、とにかく楽しむことができたから良しとしよう。2022年は例年と比べて特に運営側の気合が入っていたように感じられ、実に満足度が高いイベントであった。

僕が紹介した以外にも様々な企画が行われているので、バイクに興味があれば行ってみて損はないはずだ。仮面ライダーショーなどの子ども向けの企画もいくつも用意されているので、家族で訪れるのもオススメである。(しかも入場料は無料だ。)かくいう僕も、子どもの頃に父と母と弟と一緒に訪れた記憶がうっすらと残っている。

さて、せっかく浜松までやってきたので、ちょっと実家にでも顔を出すことにしよう。オートレース場から実家のあるスズキの領土付近までは、バイクに乗ればあっという間に辿り着く距離だ。

尊みを感じて桜井さんの肌色に想いを馳せているうちに実家に到着すると、なんだか物々しい雰囲気が漂っている。こういう時は大体あれである。父(ヒサノブ)と母(ヨシコ)が喧嘩しているのである。通算何度目なのだろうか、もうひとつのHY戦争の勃発である。「だら」とか「だに」とか、格好悪い方言を駆使して互いを罵り合っている。

子供の頃は嫌いだったこの喧嘩も言葉も、もはや懐かしさすら覚える。とはいえ、過熱しすぎて冷戦状態に入る前にほどほどのところで仲裁に入っておくのが良さそうだ。

高校生の頃の僕は、浜松から出たくてしょうがなかった。この街には何もない、本気でそう思っていたのだ。バイクのふるさと浜松は、そんな僕に故郷にある豊かな文化を思い出させてくれた。

・・・さて、この後に伏線回収などをしつつ、いい感じのことを言って締めようと思っていたのだが、特に思いつかないまま約1年が経過してしまったため、今年のイベント情報を掲載しておくことにする。みんな、10月は浜松にあつまれ!!
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・会場:浜松オートレース場
・開催日:2023年10月14日(土)15日(日)
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おっぱいマウスパッドのおっぱい部分を縦置Vツインエンジンに置換してみた

春雨が桜を散らし始めて、僕たちに出会いと別れの季節の訪れを合図した。激しく窓を叩く雨音が、あの人の別れの言葉をかき消してくれればよかったのに。

◆◆◆

週末の雨はサラリーマンライダーにとっては死活問題と言っていいだろう。平日に蓄積したストレスを解放すべくバイクに乗るはずの休日のプランが台無しになってしまうからだ。

そうなると、平日にも適度に心と体をケアしてモチベーションを維持してやることが大事になってくる。そんな我々のニーズに応えるオフィス用品の一つに、おっぱいマウスパッドというものがある。マウス操作時に手首の位置するあたりがおっぱい状に隆起しており、スナップの支点となることにより操作の安定感を向上させるとともに、疲労の軽減と癒しを与える画期的なアイテムだ。

しかしながら、男女共同参画社会が当たり前となった令和の時代において、このアイテムをオフィス空間で使用することには、それ相応のリスクがあることは想像に難くない。在宅ワークの文法を共用空間にそのまま持ち込んではいけないのだ。

そのような状況に対して「おっぱいがダメなら、それと同じくらい好きなものに取り替えてしまえばいいじゃない」という解決策が考えられる。異分野の協奏が、新たな価値を生み出すことは多々ある。なんなら、おっぱいマウスパッド自体もその類の発想に基づく事例なのだ。

今回、学生時代に培った3DCADスキルを駆使することで、おっぱいマウスパッドのおっぱい部分を縦置Vツインエンジンに置換することに成功した。



Moto Guzzi社のエンジンは左右のシリンダーが僅かにオフセットした配置となっていることが知られているが、偶然にもそのズレが右手首の角度と絶妙なマッチングをしていることが確認できる。

オフセットによる恩恵こそないものの、Ducati社のLツインやHarley-Davidson社の狭角Vツインにも展開することができるため、様々なライダーに訴求する可能性を秘めている。

今後の課題としては、疲労及びストレス軽減に最適なシリンダーバンク角についての解析的検討や、シリンダー部分の素材や塗装に関する耐久性能の検証などが挙げられる。

本開発の実現により多くのライダーの雨季ストレスが削減され、近年問題となっている精神疾患による社会的損失の解消や、持続可能な社会の発展に貢献することが期待できる。

画像編集ソフトを使ってこの世からアマリングを抹消しよう


アマリングとは

アマリング。バイク乗りなら一度は聞いたことがある言葉だろう。

僕がはじめてこの言葉をインターネットで目にした時には「ははーん、さては何か卑猥な部位もしくはテクニックの名称だな」と予想したものだが、実際にはもっと卑しく虚しい類のものであった。

インターネットに毒されていないライダーのために説明しておくと、アマリングとは「新品タイヤのツルッとした表層が、路面に設置していないタイヤの端のみに残ってしまったリング状の部分」を指すスラングである。いったい誰が作った言葉なのかは定かではないが、「余ったリング」の略とされている。

試しにTwitterでアマリングを検索してみると、「アマリング消えないな〜」「アマリング警察に捕まっちゃうwww」といったコメントと共にタイヤの写真がアップロードされている。しかしながら、わざわざタイヤの写真をアップするような輩は、そこそこタイヤを端まで使っている自負の元に肥大化した承認欲求に駆られて写真をアップロードしているので、僕に言わせて貰えば全然余っているとは言えない。なんなら使い過ぎているくらいだ。

こんな言葉を知るまでは全く気にしていなかったのだが、一度そういう世界を知ってしまうと途端に気になってしまうものである。

承認欲求を満たすために愛車の写真をインターネットにアップしようとすれば、日進月歩で高性能化するスマートフォンデジタルカメラの解像度が仇となり、ネットの海に広大なアマリングが晒されてしまうことになる。

最近、飲食店での悪戯行為を撮影した動画が拡散されてちょっとした社会問題となっている。悪戯行為自体が悪いのは言うまでもないが、多くの人がスタンドアローンコンプレックスにその動画の拡散に加担してしいたことの印象が強い。

ひとたび気まぐれな正義感もしくは悪意の暴走に巻き込まれれば、僕のアマリングが突然ネットに拡散されてミシュランタイヤの株価が大暴落し、なんやかんやで僕と僕の家族が路頭に迷う・・・という世界線もあり得るかもしれない。それだけは何としても避けたい。

とはいえ、タイヤをそんなに潰して乗るほどの技術は持ち合わせていない。ヤスリやクレンザーで削り落とすことで物理的に消すという強行手段があるようだが、それは超えてはいけない一線、人と人でないものを分かつ境界線のような気がするのだ。

そのような混沌とした背景の中、承認欲求を満たしながら人が人でいるためのバランスの良いソリューションとして、Photoshop的な画像編集ソフトを用いて写真上でアマリングを消すという手法がある。

とはいえ、Adobe社が販売している本家のPhotoshopは、アマリングを消すためだけに導入するにはコストが大きく賢明な選択肢ではない。そこで今回は、Photoshopと大体同じようなことができるフリーのアプリケーションを使ってその具体的な手法を紹介していこうと思う。

Photopeaを使ってこの世からアマリングを抹消しよう

Photoshop的なフリーのアプリケーションはいくつかあるが、その中でも僕がよく使っているのがPhotopeaである。ブラウザ上で利用できるため、導入にまつわる障壁が全くないうえ、利用環境を選ばずに家でもツーリング先でも手軽にアマリングを消すことができてしまうのだ。

ここでは、ツーリング先での緊急的な利用を想定して、スマートフォンでの操作画面のキャプチャをまじえながら紹介していく。基本的な操作方法はPC版でも同じだし、なんなら他のPhotoshop的なツールでも同じなので、幅広く展開できるはずだ。

端末はiPhoneを使っているが、他のスマートフォンでも大体似たような操作感だと思うので、適宜補完しながら読み進めてもらいたい。

①Photopeaの起動

まずはPhotopeaの起動である。ブラウザアプリケーションなので、下記URLをコピーして各自のブラウザから開いて欲しい。なお、僕のスマホではchromから編集後の画像の保存ができなかったので、iPhoneユーザーであればsafariでの操作をおすすめする。
https://www.photopea.com/

下のような画面が出てきた場合には右上の「×」をタップする。

すると以下のような画面が表示されるはずだ。

上手くいかなかった人のことまでは構っていられないので、ここで潔く諦めて欲しい。

②写真の読み込み

次に写真の読み込みである。今回は例として以下の写真を利用する。

実に広く、そして綺麗なアマリングである。あまりタイヤに寄った写真を加工するのは難易度が高いため、このくらい引きの写真で実践することを推奨する。都合の良い写真が手元にない人には、特別に僕のバイクの写真をダウンロードして教材として利用することを許可しよう。アマリングがすごいからって、悪意のある拡散などは決してしないよう、取り扱いには十分注意して欲しい。

写真を読み込むためには初期状態の画面に表示されている「コンピュータから開く」をタップする。

今回は既に撮影してある写真を利用するので「フォトライブラリ」をタップして端末内のフォトライブラリから写真を選ぶ。

以下のように写真が読み込まれてアプリケーション内に表示されればOKである。


③焼き込みツールによるアマリングの削除

Photopeaをはじめとした画像編集ツールには様々な機能が用意されているが、アマリングを削除するには「焼き込みツール」さえあれば事足りる場面が多い。焼き込みツールとは画像の特定の箇所の明るさを暗くするツールである。タイヤの表面が削れていないアマリングは他の部分よりも光を反射してしまう結果、明るくなってしまっている。そこに対して焼き込みツールを使って、周りに馴染む程度に暗くしてしまおうという理屈である。

Photopeaの場合、焼き込みツールを使うには以下の部分をタップする。似たような名前の覆い焼きツールは逆に画像を明るくしてしまうツールなので、誤って選択しないよう注意をしてほしい。

ここからは少しばかりテクニックが必要となるが、現実世界でアマリングを消すライディングをするより遥かに簡単なので、そんなに身構える必要はない。

まずは焼き込みを行うサイズの調整だ。画面左上の部分から調整することが可能である。

焼き込みツールの選択中は、画面上を指でなぞった部分が暗くなるのだが、大き過ぎると余計な部分まで黒くなってしまうし、小さ過ぎると明暗のムラができやすいため、適度なサイズに設定しておく必要がある。具体的なサイズは画像自体のサイズによってしまうが、概ね1/3アマリング程度が適切な大きさだろう。ここでは12に設定する。

次に露光の設定である。右上の部分に現在の露光の値が出ているので、そこで調整が可能だ。

露光の数値が大きいほど一度の処置で暗くなる度合いが大きく、数値が小さいほど暗くなる度合いが小さくなる。ある程度小さめの値を設定して焼き込みを繰り返すことで調整することを推奨する。

設定が完了したら、二本指で画像を拡大してタイヤ部分を処置しやすいようにする。そのままアマリングを指で何度か繰り返してなぞることで、色が暗くなって周囲に馴染んでいく。

失敗してしまった場合には左上の「編集」→「元に戻す」をタップすることで、一つ前の編集状態に戻すことができるから安心だ。繰り返しタップすれば何段階も戻すことができるので、サイズや露光を調整しながら進めていけばよい。

上手くアマリングを除去することができただろうか。以下に僕が編集したビフォー・アフターを掲載しておく。


④画像の保存

アマリングの除去が完了したら、編集した写真を保存する。

画面左上の「ファイル」をタップ、続けて「別名で保存」をタップすると複数のファイル形式が展開される。ファイル形式は「jpg」を選んでおけば良いだろう。


iPhoneの場合、編集後の写真はファイルAppのダウンロードフォルダに格納される。Androidのことは分からないので、さっさとiPhoneに買い替えることを推奨する。

以上の操作であなたのスマートフォンにはアマリングのない愛車の写真が保存されたはずだ。あとはTwitterに投下するなり、Instagramに投下するなり、各々が好きに活用すれば良い。

今回はアマリングを削除するというシンプルな使い方を説明したが、画像編集ソフトには他にも様々な使い道がある。より演出的な効果を加えることもできるし、バイクの色を変えたり社外パーツを重ねたりして外装カスタムの検討を行うこともできるので、色々と活用してみてほしい。

おわりに

端末と一定の環境さえあれば、僕たちはいつでも簡単にネットワークに接続することができるようになった。誰のことも拒まず、使い方さえもユーザーに託されたもう一つの世界だ。その自由度の高さは新しい価値を生み出して現実を拡張した反面、人間の醜さまで誇張してしまった。

ひとたび接続性が一つの意思を持ったように挙動し始めれば、誰にも止める術はない。画面を指でなぞるだけで発信される意思の先にも人がいる。簡略化されたその動作が、喉を開いて空気を振るわせる行為の代替であることを、人はすぐに忘れてしまう。

インターネットの快楽に依存してしまった僕たちに、もはやここから抜け出すという選択肢は残されていない。それでも、アマリングのように簡単に消えてはくれない情報を扱っていることをもう一度思い出して、適度な距離を余らせながら関わっていくことが必要なのではないだろうか。