残業レコード

あるサラリーマンライダーの栄光と苦悩の記録

レンタル819でKATANAとDUCATIをレンタルした話

所有しているバイクがカスタムやメンテナンス、車検等で入庫しているとき、バイクに乗りたい欲求を、どのように消化しているだろうか。

現在、カスタムをお願いしていてバイクが手元にない僕は、せっかく休みを取れてもバイクに乗れず、なんだか不完全燃焼である。代わりに車でドライブしたりしてみるものの、日々のストレスを発散するには少々刺激が足りない。

そんな折、ホンダが2019年からレンタルバイクのサービスの提供始めたという情報をネットで見かけた。「レンタルなんもしない人」なんてのが登場する時代だ。ホンダがレンタルバイクを始めてもなんの不思議もないどころか、これまでなかったことが逆に不思議なくらいである。

レンタルバイクもいいかもしれない、と思いレンタルバイクについて調べていると、免責などが充実している「レンタル819」というサービスを見つけた。店舗数も多い上、車両もバリエーションに富んでいる。

転かす等の車にはないリスクが多いせいか、レンタカーと比べてコストがかかるが、気になる車両に1日乗れるのは大きい。最寄りの名駅店でも、良さそうな車両がたくさんあったので、早速利用してみることにした。

借りたいマシンのスケジュールを確認すると、△(要電話確認)となっていたので、案内に従って電話をかけ、すんなりと予約をとることができた。はじめてだと伝えると、電話も丁寧に対応してくれたので、安心して予約手続きを進められた。

◆◆◆

レンタル当日を迎え、開店時間と同時にレンタル819名駅店を訪ねた。手続きを済ませて車両を確認する。以下の動画を見ておくと、店頭での説明をいくらか省略してもらえるので、少し長いが見ておくことを推奨する。

youtu.be

さて、僕がこの日レンタルしたのはタイトルにもあるこのバイクだ。

SUZUKIの新型KATANAである。説明するまでもないと思うが、かつてハンスムート率いるターゲットデザインがデザインを担当したGSX1100X KATANAの意匠を現代的に再解釈して登場したマシンである。

レンタル819 のページを眺めていたら、ラインナップに並んでいたため迷わずこいつを選んだわけである。昔のKATANAのデザインは大好きだし、新型がデビューする時にもネットニュースで何度も目にして、注目していた車両である。

かつてのロー&ロングなスタイリングは今っぽいマッシブなデザインに変化しているが、新しさの中に、確実にKATANAの潮流を感じることができるから不思議なものだ。

リバイバルではあるものの、元々が前衛的なスタイリングだったため、今流行りのネオレトロとも少し異なる位置づけになるように思う。なんというか、KATANAという一つのジャンルを築いていると言えるかもしれない。

もちろん見た目のアップデートだけでなく、性能面も最新の車両としてアップデートされている。GSX-S1000ベースのエンジンは、なんと148PSを叩き出すという。この数字は僕の所有するMOTO GUZZI 1100Sportの1.5倍以上であり、僕にとってまったく未知の領域である。

さて、そんなスペックに緊張しながらマシンに跨ってみると、ポジションはめちゃくちゃ楽チンである。結構なアップハンドルなので、いわゆるネイキッドやストファイ的なポジションである。腕から足まで、違和感を感じる部分がないので、よく吟味されているのだと思う。姿勢に関しては、長時間のライディングにもまったく問題ないだろう。身長173cmで両足もちゃんと付く感じだ。

走り出してみると、下からトルクモリモリである。リッタークラスの4発に乗るのは初めてだったので、正直かなり驚いた。ニヤニヤが止まらないあの感じだ。

友人と合流し、道の駅を巡りつつ徳山湖六社神社跡宮展望台を目指す。道中はなかなかのワインディングであったが、モリモリトルクとぶっといタイヤのKATANAのおかげで不安なく走ることができた。スタイリング的には独自の世界を持っているが、乗り味はベースのGSX-S1000に同じくストファイ的な位置づけになるかと思う。

KATANAの唯一無二のスタイリングに惚れた方にはもちろんのこと、ガシガシとスポーツライディングを楽しみたい人にも訴求するバイクなのではないだろうか。

いやはや、レンタルバイクもなかなか良いものである。僕のように一昔前のバイクに乗っていると、最新のバイク界隈のニュースに置いてかれてる感じがすることがある。そんな僕でも、レンタルバイクを利用して気になるマシンや注目機種の性能を1日じっくり味わうことで、最新のバイクの潮流を体感することができるのだ。また、愛車と異なるバイクに乗るということは、愛車を客観的に見つめ直すよい機会ともなる。これは決して浮気ではない。

◆◆◆

レンタルといえば、大学時代のある先輩を思い出す。年上ながら話しやすく、後輩の僕たちから人気のあった金谷先輩は、レンタルビデオショップでアルバイトをしていた。

金谷先輩はバイトを始める前から映画、特に洋画に精通しており、その知識量と人当たりの良さを武器に、バイトの中で確実に地位を上げていったそうだ。そうやって金谷先輩がたどり着いたのがAV担当のポジションである。「なぜ地位を上げた結果がAV担当?」と思われるかもしれない。実際、当時の僕もそう思った。地位が上がったら売れ線の最新作とかを担当するんじゃないのか、と疑問を抱いたものである。

しかし、金谷先輩によると、メジャーな作品や最新作などは放って置いてもレンタルされるため、それこそ新人などに任せてしまっても特に問題がないらしい。

一方のAVコーナーは、内容がコアな上にバラエティに富んでいる。また、ほとんどの利用者が男性という不利な条件にも関わらず、AVのみでレンタルビデオ店の売り上げの数割を稼いでいるというから驚きだ。つまり、金谷先輩が登り詰めたAV担当の地位は、レンタルビデオショップカーストの最上位に位置するらしいのである。

金谷先輩いわく「俺ならポップだけでガン立ちさせられる。その切れ味は地域イチ。」だそうだ。すごい、まるでKATANAだ。

◆◆◆

KATANAを借りてからしばらく経った頃、日曜に休みが取れることになったためせっかくだからまたレンタルバイクを利用しようかと思い、レンタル819のページを覗いてみる。愛知県には前回利用した名駅店の他にも数店舗あるのだが、なんと刈谷店と三河店ではDUCATIのレンタルができるようだ。すごい。太っ腹だ。

既に前日の土曜だったため予約が取れるか不安であったが、早速の電話をしてなんとか三河店の予約を取り付けることができた。少し店舗が自宅から離れているが、そのまま三河方面を走れば問題ないだろう。

翌日、岡崎市にあるレンタル819三河店に車を走らせる。たどり着いたのは名駅店のようなレンタル専門の店舗ではなく、なんとDUCATI岡崎店であった。

(写真を撮り忘れたので公式ページから拝借。ごめんなさい。)

どうやら、DUCATIのディーラーがレンタル819に加盟しているということのようだ。そして、この日レンタルするのはこの車両。

DUCATIのsuper sport Sである。ご覧の通り、途中で雨に降られたためあまり写真をとることができなかったか、それでもこの格好良さは伝わるはずだ。

Lツインエンジンを積んだ細身の車体、エッジの立ったカウルからは有機的にさえ見える極太トラスフレームが覗き込む。DUCATIにとってはもはやお家芸のような手法だが、力学的な要素を外装デザインのひとつとして組み込んだこのスタイリングはやはり素晴らしい。道の駅でも際立つ存在感である。

super sportなんてたいそうな名前なので、バキバキのスポーツモデルなのかと思っていたのだが、どうやらこのモデルはそういったコンセプトではないみたいだ。跨ってみると、先日のKATANA程ではないものの、結構直立に近いポジションであることが分かる。

セパレートハンドルではあるものの、トップブリッジの上側に跳ね出したタイプを採用しているためハンドル位置は高めである。また、ステップもシート直下に設置されており、いわゆるバックステップ的なものではない。寝かせることを想定しているのか、あまり後ろに下げていない割に位置が高いので、結構窮屈な印象だ。足つきについても、シート幅がタイトなこともあり、両足べったりである。

エンジンをかけると、道の駅などで聞いたドッカンドッカンいうあのサウンドが鳴り響く。これだよ、これ。アクセルを回して走り出すと、「上しか使い物になりません」なエクステリアデザインとは裏腹に下からモリモリである。下から上まで満遍なく使える感じだ。(まあ、そんなに上までは回してないが。)

予想外の扱いやすさに少々拍子抜けしつつ、三河の山の方を目指して走っていく。ワインディングに入ると、軽量な車体がかなり効いており、よく言うヒラヒラ曲がるという感覚だ。これは楽しい。この軽快さとスレンダーさこそが、やはりVツインスポーツのあるべき姿である。

後から調べてみると乾燥重量は184kgで、これは僕のMoto Guzzi 1100 sportの220kg超の数字と比較して、40kg弱も軽量なことになる。道理で軽いわけである。というか、グッチが重すぎる。

前述したように、その後ゲリラ豪雨に襲われ、乗車時間が削られてしまったものの、DUCATI super sport Sは無茶苦茶扱いやすいマシンであった。ツーリングメインでときにはスポーティに楽しみたいという大多数のユーザーにマッチするのではないかと思う。軽快でトルクフルな扱いやすさからくる楽しさ、優れたデザインがもたらす所有感は、中型をすっ飛ばして最初のバイクとして選んでもまったく問題ないはずだ。

ただし、コストに関してはまったく優しくない。独身貴族で気長にローンを組める、家計の財布は俺が握っている、もしくは親が金持ちだ、等のライダーに購買層は限られてくるのかもしれない。

僕は今のところ乗り換えの予定はないが、購入に迷った場合は一度レンタルバイクを利用するのも、良い判断材料を与える一助になるだろう。伝聞と体験では、やはり得られる情報の密度が異なる。

様々なメーカの中でも一際独特な立ち位置を確立しているDUCATIは、コアなファンが多い印象もある。今回のレンタルでDUCATIにハマる理由、その片鱗を感じることができたように思う。

◆◆◆

コアなファンといえば、大学のある先輩のことを思い出す。金谷先輩である。レンタルビデオショップでAV担当に登り詰めた金谷先輩、おしゃべりな性格もあって、お客さんともよく情報交換をしていたそうだ。

映画やAVと関係のない趣味の話しなんかも普通にしていたそうで、金谷先輩とおしゃべりするのが半分目的、みたいな常連客もいたらしい。レンタルビデオショップの店員とカジュアルに会話をするイメージのなかった僕は驚くと同時に、金谷先輩の懐の深さに感心したものである。

そんな常連客の中でも、金谷先輩のコアなファンとも言える1人のおっさんがいたそうだ。聞くところによると、意気投合してバイト終わりで一緒に飲みに行くほど仲が良かったようだ。

ある年の2月のはじまりの季節、金谷先輩が冬の寒さを吹き飛ばすかの如く熱烈なポップをAVコーナーに設置していると、いつものようにコアなおっさんが暖簾を潜ってきた。コアなおっさんはここには書けないようなディープな作品を好んでレンタルしていたそうで、その日もディープな作品の良し悪しについて金谷さんと意見交換をしていたらしい。

いつもと違ったのは、コアなおっさんが帰り際、何かが入ったビニール袋を金谷先輩に渡したということだ。「いつもお世話にになってるから、そのお礼の差し入れ」ということらしい。さすが人望の厚い金谷さんである。

家に帰ってずっしりと重いビニール袋を開き、その中に入っていた包みを解くと、そこには太くて長いたいそう立派な恵方巻が入っていたそうな。

コアなおっさんの言った、いつもお世話になっている、とはどういう意味だったのだろうか。その日以来、コアなおっさんが金谷先輩のバイト先に現れることはなく、その真相を知る由はなくなってしまったそうだ。

これはあくまで僕の想像に過ぎないが、もしかするとコアなおっさんは、それまで見ているだけで、話をするだけで、それだけで良かったはずの金谷先輩のことが、どうしても欲しくなってしまったのではないだろうか。

願い事を叶えてくれるという恵方巻には、そんな願いがこっそりと込められていたのかもしれない。

◆◆◆

車やバイクのみならず、家具やファッションにいたる様々なものがレンタルできる時代になった。所有するということに意味を見出す価値観は、もはや前時代的なものになってきている。

それでも、僕たちライダーは安くはないコストをかけて気に入ったバイクを所有しようとする。ときには眺めて悦に浸り、育てるようにカスタムし、ブッ潰れるまで乗り回すのだ。

情熱を込めて作られたモノには、所有することでしか味わえないほど深い魅力が宿る。写真や動画で見てるだけでは想像すらつかない、レンタルで体験しただけでは物足りない、そんな引力とも呼べる何かが僕らを惹きつけて止まない。

ミニマリズムな生活を送る気取ったやつらにはきっと分からない、分かって欲しくもない。実物だけが放つ深淵な世界に、僕は今日も感動するのだ。

2020.09.01

KADOYAのレザースニーカー

ライダースジャケットを着て格好つけてバイクに乗ってみたい」バイク乗りであれば誰しもそう思ったことがあるのではないだろうか。

防風性能や強度に優れたレザーはバイクの乗車に適しており、基本的なデザインは古いものの、運動性に配慮した短めの着丈やポケットの配置などの様々な要素が当時なりに機能的につくり込まれている。特に、クラシカルな欧州車やクルーザー、国産空冷四発などとの相性は抜群で、バイクに乗ることの非日常性を演出してくれるアイテムとも言えるのではないだろうか。

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(カドヤさんの通販ページより引用)

しかしながら、根っこがインドア気質の僕にとって、ライダースジャケットは少々男らしすぎるのだ。シンプルさを突き詰めたような潔いシングル、大きな二枚重ねの襟や斜めに配されたジッパーでハードに見せるダブル。誰もが目にしたことのある定番のデザインであるものの、定番であるがゆえに、人を選んでしまうように感じられる。

そんな折、カドヤさんの公式サイトでこの写真を見かけた。

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ekadoya.com

KADOYAさんのATLASというジャケットである。セミダブルを下敷きにした新しいデザインのジャケットらしい。セミダブルというのは聞き慣れないが、前面はダブル同様に二枚重ねであるものの、襟元はシングルのようなつくりとなっているものを指すようだ。

写真のようにブラック以外のカラーバリエーションを展開しているのも特徴で、シーズン限定ではあるようだがグリーン、グレー、ネイビーなどがリリースされている。カラーレザーでもキワモノに見えないのは、定番から少しハズしたデザインのおかげに違いない。

僕の乗っているバイクは、90年代のスポーツバイクのデザインなので、オールドルックなライダースとは少々相性がチグハグな気がするものの、このジャケットならきっとマッチするに違いない。そうやって、調べているうちにどうしても欲しくなってしまい、その月の残業代を握りしめてカドヤ名古屋店に駆け込んだ。

気合の入ったモヒカンの店員さんの意外にも謙虚で丁寧な説明に面喰らいつつ、在庫していたネイビーのATLASを試着してみると、格好良さもさる事ながら、軽くしなやかで強いゴートスキン(山羊革)による着心地の良さに驚く。ゴートスキンは表面のシボ(細かな皺)が満遍なくしっかりと入っているのも特徴のようで、実物を見てみると、ライダースジャケットに抱いていたバキッとした鎧のような印象とは異なり、柔らかな立体感を感じる。

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 アパレルメーカーのジャケットのような格好良さだが、肩・肘・背中にプロテクターが入る作りになっているのも、バイク乗りにとってはありがたい。

購入後、バイクに乗るときはもちろんのこと、格好良いので普段着としても着用している。ゴートスキンは経年変化が出にくいようだが、腕周りにシワが入りいい雰囲気である。

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 ◆◆◆

ATLASと出会って以降、カドヤさんのサイトやカタログをよくチェックしているのだが、気になっていたこの製品を最近新たに購入した。

 レザースニーカーである。バイクに乗るときは基本的にクシタニのガルドシューズⅣを履いているのだが、あんまりバイク用っぽくないものが一足ほしくなり購入に至った。

履くとこんな感じ。

 プロテクターこそ入っていないものの、つま先とかかとには当て革が取り付けられていたり、シャフトと呼ばれる筒の部分の傾斜により足首の運動性を確保していたりと、バイク乗車時の使用に配慮したつくりとなっている。エンジニアブーツほどこってりせず、かといって他社のライディングスニーカーほど街っぽくない。さきほどのATLASと同様に、僕が求める隙間を埋めてくれるようなスニーカーなのだ。

 また、このスニーカーの特筆すべき特徴の一つとして、ソールの取り付けにオパンケ製法を採用しているという点が挙げられる。オパンケ製法、なんだか卑猥な部位の体毛のような名称であるが、なんとスニーカーなのにソール交換が可能なのだそうだ。メーカーの公式ページにも交換が可能であることがうたわれており、足に馴染んで愛着の沸いた靴を長く使えるのは嬉しいポイントだ。

 とはいえ、バイクの乗車時に使用するとなると、プロテクションがもう少し欲しいと感じるのも事実である。そこでアンクルプロテクターなるものをamazonで購入した。 f:id:Majestic_Yamada:20210314071008p:plain

 生地自体はスポーツ系のアンダーウェアっぽい感じで伸縮性があり、くるぶしと足首の前方にゴムっぽいソフトプロテクターが縫い付けられている。着用してみるとこのような感じになる。

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(僕の濃いオパンケが丸見えになってしまったがどうか許してほしい。)

プロテクターとしては少々心許ない感じもするが、ハイカットのスニーカーの下に装着するにはこれくらいが限度だろう。ソフトプロテクターなので、擦れて痛くなるということもなさそうである。ビジュアル的にはくるぶしのプロテクターがコナン君のキック力増強シューズを彷彿とさせる感じでメカニカルでなかなかいい具合だ。

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全体的なフォルムとしては、野球のストッキングと同じような形状となっている。中学生のころに野球部に所属していた僕にとって、とても見慣れた形である。あの謎のストッキングはやたら硬くて伸縮性が低い生地が用いられていたため、着用が面倒だったことを思い出すが、そもそも野球ではなぜあの謎のストッキングを履かなければならなかったのだろうか。なんとなく履き続けたまま卒業をむかえてしまった。

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「わくわくしちまうんだよ!わからなければわからねーほどうずくんだ!オレの中のおさえきれねー好奇心がな!!」*1僕の左足に宿ったコナン君がそう叫んだ気がした。ということで、高校球児だったという職場の岡谷先輩に事情聴取をおこなうことにした。

◆◆◆

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◆理由その①スパイクからの足の保護

岡谷先輩いわく、そもそもソックスの上に重ねて謎のストッキングを履く理由は「足の保護」であるそうだ。野球では走塁において選手がスライディングでベースに滑り込んでくる。そんな時に、走塁をしている選手、ベースを守っている選手、その双方の足を怪我から保護してくれるのだそうだ。

◆理由その②肉離れの防止

また、野球のプレーの特徴として走塁や守備においてストップアンドゴーの多いことが挙げられる。岡谷先輩によれば、硬い生地のストッキングは肉離れを防ぐ役割をも担っているというではないか。硬く伸縮性の低い生地にそんな秘密が潜んでいたとは、思いもよらなかった。

◆理由その③ソックスとの役割分担

ストッキングの独特の形状について聞いてみると、まず前提として、ソックスで吸湿をおこない、ストッキングで保護をするという役割分担をするために二枚重ねになっているそうだ。そして、二枚を単純に重ねてしまうと足回りの動きを阻害してしまうため、運動性を確保するためにあのような形状になっているとのことである。

バイクウェアもそうであるが、ギア(装備)としてデザインされたモノの材料や形には実用のためのちゃんとした理由が隠されているということを改めて実感させられた。

 ◆◆◆

 僕の所属する野球部に木村君という気のいいやつがいた。木村君は中二の冬に足を怪我してしまい、激しいプレーをすることができなくなってしまったのだが、そのまま野球部に残り、チームのためにマネージャー業を買って出てくれていた。

 あれは中三の春のことだった。なんと木村君がケータイを買ってもらったというのだ。これは当時の田舎の中学生にはとんでもないニュースである。ケータイが珍しかった僕を含めた野球部の面々は、木村君のケータイを触りたがったものである。しかしながら、どういうわけか木村君は頑なにケータイを渡してくれなかった。 f:id:Majestic_Yamada:20210314071028j:plain

 「あいつ何か隠してるぞ」僕らは木村君の謎を解き明かそうと躍起になった。木村君がトイレに入っているスキをついたり、練習中にトイレに行くふりをして、部室の木村君のカバンからケータイを見つけ出そうとした。謎解きというよりほとんど強行突破である。

 だけど、なんと木村君はケータイをユニフォームのポケットに入れて練習中に臨んでいた。いくらカバンを探っても無駄だったのだ。ちなみにこれは練習試合の最中にサード側のコーチャーボックスにいた木村君のポケットから着メロが鳴った際に判明したことである。「守りの硬い木村らしいな。」主将を務めていた寺西がそう評するほどに、木村君のケータイを触ることは難しかった。

 鉄壁の防御を前にして、半ばあきらめかけていたある日、なんと木村君が部室に携帯を忘れて帰るという事件が発生した。待ちに待ったチャンスがやってきたのだ。

 ベンチに置きざりにされた木村君のケータイをひらくと案の定パスコードロックがかかっている。だけど、相手チームのサインを盗む技術に定評のあったキャッチャーの安田によって、木村君の指の動きから既にパスコード4869は僕たちに割れている。

 ロックを解除し、当初より怪しいと踏んでいた画像フォルダに潜っていく。

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 そこには大量の歩美ちゃん*2のエロ画像が保存されていた。まだオパンケも生えそろっていない裸体の歩美ちゃんが血管の浮き出たバットでグチャグチャにされていた。僕たちは「おいおい、木村マジかよ」「ロリコンじゃねえかぁ」と携帯を回しながら、腹を抱えて大声で笑った。安田は「おれは哀ちゃん派*3だね」と言っていた。 

しばらく時間が経って、僕たちは見てはいけないものを見てしまったことに気が付いた。謎を解き明かしたはずなのに、汗臭い部室には後味の悪さと安田の笑い声だけが残っていた。

真実はいつもひとつだ。だけど、解き明かす必要のない真実だってあるはずだ。いつもチームのために働いてくれる木村君。彼が隠そうとしていたことを、僕らは非道な手を使って暴いてしまった。「このことはおれたちの心の中にしまっておこう」誰かがそう言った。誰が言ったかは定かではないが、安田でなかったことだけは揺るぎのない真実だった。 

*1:名探偵コナン12巻「月と星と太陽の秘密」より。

*2:名探偵コナンのキャラクター。コナンの通う小学校のクラスメイト。

*3:名探偵コナンのキャラクター。面倒なので説明は端折るが、コナンの通う小学校のクラスメイト。綾波的な魅力がある。

ひらい歯科の看板巡礼ツーリング

7月某日、コロナウィルスが少しは落ち着いたかと思えば、いじわるに梅雨は長引き、気持ちよくロングツーリングにも行けない日々が続いていた。自粛疲れ、なんて言うと大袈裟だけど、ちょっとストレスが溜まっているのは否めない。仕事の方も・・・相変わらずうまくいかない。こんな時には少しでもいいからバイクに乗りたいものである。

かと言って、遠出をするような気分にもなれない昨今の状況なので、なんとか近場でツーリング気分を味わえないものだろうか。そんなことを考えながら車を走らせていると、やけに大きく、やけに黄色いこの看板に遭遇した。

この看板、名古屋市民なら誰しもが知る「ひらい歯科の看板」である。名古屋市瑞穂区にあるひらい歯科(現在は名古屋歯科)さんの看板で、数年前から市内の至る所に出現し、なんなら市外でも見かけることがあるほどである。

看板に目一杯印刷されているのは平井院長の弾けるような笑顔だ。口元から覗く綺麗に並んだ歯の健康的な輝きも相まって、きっと腕のいい歯科医なのだろうという信頼感を抱かせてくれる。

平井院長の笑顔を辿っていけば、ひょっとしたら日々の仕事に疲弊した僕も元気になれるかもしれない。そんな思いつきから、僕は名古屋市内のひらい歯科の看板を辿って、名古屋市瑞穂区にあるというひらい歯科を目指すツーリングを敢行することにした。

名古屋市中区

まずは、名古屋を代表する繁華街である栄地区、および眠らない街こと錦3丁目などを擁する中区にやってきた。名古屋を代表するメインストリートである広小路通りという、広いんだか狭いんだかよく分からないネーミングだけど、実際はかなり広い道を走っていこう。
 
さっそく広小路葵交差点で看板を発見。幸先のいいスタートである。

広小路葵交差点


 
相変わらずデカい。そしていい笑顔だ。この看板が出現しはじめた当初こそ、街の景観を乱しているのではないかと一市民として危機感を抱いたものだが、もはや見慣れた景色の一部と化しているから不思議なものだ。
 
広小路通りをそのまま少しだけ西へ向かうと、すぐにまた看板が現れた。

東新町交差点


 
なんと、ひらい歯科の看板は黄色ばかりかと思っていたが、早い段階で白タイプに遭遇した。おそらく、ひらい歯科のすぐ下に構えるあんかけスパゲティ*1屋ユウゼンの看板と色が被らないように配慮したものと思われる。
 
この日2枚の看板を見つけた栄地区のあたりは、名古屋市の交通の拠点である中村区名古屋駅地区に対して、古くから商業の中心としての発展してきた地区である。名駅地区と比べると、比較的中低層の建物が多く、広小路通りや久屋大通などの広い道を中心とした、平面的な広がりや周遊性を感じされる街並みが特徴だ。
 
しかしながら、戦後に建設され、栄地区の発展を支えてきたビル群も老朽化が目立つようになってきた。そういった状況に対し、近年名古屋市は栄地区の再開発を進めはじめている。僕らが慣れ親しんだビルはこれから建替えが進み、どんどんと高層化・高密度化していくことになるだろう。三次元的な立体都市としての展開を始めるこれからの栄地区の動向には、是非とも注目していきたいところである。

名古屋市昭和区

栄のビル群を眺めながら南東に向かい、昭和区に突入した。昭和区は閑静な住宅街と複数の大学がキャンパスを構える名古屋きっての文教地区である。看板を見逃さないよう、飯田街道をゆっくりと走っていると、川原通7丁目の交差点でひらい歯科の看板を発見した。

川原通7丁目の交差点


 
こいつはラッキーだ。これはひらい歯科フリークの間では「旧型」と呼ばれるタイプの看板で、若いころの平井院長が写っている。髪型が現在と異なっており、毛先が遊んでいるのが分かるはずだ。旧型はなかなかお目にかかれないので、もし運よく見かけた場合には写真を撮っておくことを強く推奨しておく。
 
旧型の撮影に成功して満足していると、すぐ隣の山中交差点にも看板があった。

山中交差点


 
山中交差点はこれまでの看板と異なり、歩道に面してかなり低い位置に看板が配置されているため、ひらいさんとのツーショット撮影を行うことが可能である。看板を近くでよく見ると、自由診療1本30万円程度とある。インプラントの相場はそんなもんなのだろうか。30万円というと、マグネシウムホイールとだいたい同じくらいの価格帯だ。歯の大切さを思い知らされる。
 
さらに南東へ向かうともうひとつ隣の杁中交差点にもひらい歯科の看板があった。中区でもそうであったが、ひらい歯科はここと決めるとかなり近接して看板を設置する傾向があるようだ。何か特別なマーケティング手法なのだろうか。

こちらは一般的なタイプではあるがなかなかのサイズがあり、見ごたえ十分だ。
 

杁中交差点


天白区

飯田街道をそのまま走っていくと天白区に突入する。天白区は名古屋市の中でも住宅地としての性格が強い。区の名前のもとにもなっている天白川や、蛍もいるという相生山緑地などの自然も多く残されているのも特徴といえるだろう。

そんな天白川を跨ぐ島田橋、および天白川沿いに位置する天白スポーツセンターでひらい歯科の看板を見つけた。

島田橋


天白スポーツセンター南

出発が遅かったせいもあるが、看板を見つけるたびにバイクを停めて写真を撮ってを繰り返しているうちに、あたりはすっかり暗くなってしまった。

とはいえ、せっかく天白区までやって来たので久しぶりに稲葉山公園に寄ってみることにした。稲葉山公園は小高い丘の上にある展望公園で、結構夜景がきれいな場所である。学生時代、友人の軽自動車でドライブした日の終わりによく来て、男二人で夜景を見ながら無駄話をたくさんしたものである。

久しぶりに来てみると、稲葉山公園の夜景は自分の記憶の中の景色よりも随分とスケールが小さく感じられた。眼下に広がるちいさな生活の灯りの集まりは、友人としょうもないことを語り合った日々の思い出で勝手に美化されてしまっていたのかもしれない。

思えば、友人とはくだらない言い争いで気まずくなって以来、疎遠になってしまった。今は何をしているだろうか、仕事はどうしたかな、あの頃付き合ってた彼女とは結婚したんだろうか。久しぶりにLINEでもしてみようかと思ったけど、アカウントが見つからずに早々と諦めた。きっともう会うことはないんだろう。

名古屋市瑞穂区

ひらい歯科のホームグラウンド、瑞穂区にやってきた。このツーリングもそろそろゴールに近づいてきている。

大した距離こそ走っていないものの、夏の暑さもありさすがに少し疲れてきた。ここらで少し休憩を取ることにしよう。瑞穂区で一服といえばやはりここである。

コメダ珈琲本店

瑞穂区にはコメダ珈琲の本店が構えているのだ。知らない人のために説明しておくと、コメダ珈琲は東海地方を中心に展開する喫茶店チェーンである。オシャレなカフェというよりは、昔ながらの喫茶店の面影を残した店構えやメニューが、老若男女が気張らずに立ち寄れる雰囲気をうまく作り出している。

コメダ珈琲にきたら僕は必ず名物シロノワールを食べる。シロノワールというのは、サクサク柔らかなデニュッシユパンの上にたっぷりのソフトクリームを乗せコメダ珈琲のオリジナルデザートだ。


(今回はミニサイズを注文)

聞くところによるとこのシロノワールコメダ珈琲が創業した1977年から続くメニューのようである。ずいぶん親しまれているメニューだということがわかるだろう。コメダ珈琲には是非、いつまでも変わらず、この味を守り続けてほしいものである。

コメダ珈琲での一服を終え、瑞穂区役所前を目指す。ひらい歯科の本拠地だけあってかなり看板の数が増えてきている。それを象徴するかのような光景に出くわした。

汐路小学校北交差点

はじめての電柱タイプだ。しかも一つの電柱に看板と広告の二本立てである。しかし、驚くのはそこではない。実はこの電柱タイプの広告、付近の電柱に対して3本連続*2で設置されているのである。100mほどの区間で2×3=6つの看板が掲げられていることになる。しかも両面である。はっきり言って異常だ。

なぜ、そんなに汐路小学校前に執着するのだろうか。息子でも通っているのだろうか。そんなことを考えながらふと後ろを振り返ると、僕はとんでもない光景を目にしたのである。

写真が暗くて申し訳ないが、3連看板のすぐ奥にコンドウ歯科が建っているではないか。これは僕の推測の域を出ないが、状況から判断する限り、ひらい歯科はこのコンドウ歯科をターゲットにしていると言わざるを得ない。

地図を開いてみると、ひらい歯科はもうすぐそこまで迫っている。このままひらい歯科に向かうのが少し怖くなったが、僕は意を決して再びエンジンに火を入れた。身震いをする様に揺れるモトグッチが、僕の背中を優しく叩いた。

コンドウ歯科から数百メートルほど走ったくらいだろうか、僕はついにひらい歯科のある瑞穂区役所駅前にたどり着いた。

名古屋歯科(旧ひらい歯科)

思ったより小さい。看板が巨大なので、てっきり本体も巨大なのかと思い込んでしまっていた。広告費に費用をまわし過ぎているのかもしれない。正直なところ、少しばかり拍子抜けである。

さっき食べたシロノワールが奥歯にツンと沁みた気がした。ちょうどいいからひらい歯科で診察してもらおうかと思い、裏手にある駐車場にまわり込もうとしたところで目に飛び込んできたある看板に、僕は言葉を失った。

◆◆◆

ウイルスが蔓延したこの数か月の間に、世界の至る所で正義感のような得体のしれない何かが牙をむき、誰かを傷つけ、ぐちゃぐちゃにした。

昨日まで挨拶を交わしていたはずの隣人は自粛警察に豹変してしまったし、インターネットで隙のある言葉を発信すれば、知らない誰かにこれでもかと噛みつかれた。ひょっとしたら、このウイルスは噛みつかれた傷口から感染して、人間の暴力性を増幅させるウイルスなんじゃないかと思うほどだ。

だけど、本当はウイルスが蔓延するずっと前から、僕たちはずっと分かり合えないまま、争の連鎖から逃れられないでいたんだ。

十分な対話もしないまま、僕たちは隣人をカテゴライズし、決めつけ、罵る。見えない壁をたくさん建てて、それをウイルスのせいにした。

人と人とが分かり合うことは難しい。それでも分かり合う努力を怠ってはならない。

誰かの意思に想いを働かせる。アクリル板で隔てられても、きっとそれはできるはずだから。

*1:名古屋で働くサラリーマンのソウルフード

*2:後日通りかかった際、4本連続であることを確認している。

青空

九月の連休前の金曜日、地下鉄の終電に揺られて僕はいつものように家路につく。デスクワークの多い僕も、さすがに週末になると疲労がたまる。黙々と作業に集中できればまだマシなのだが、どうやら僕らが働いて生きていくためには、空気を読んだり、我慢をしたり、どれだけ煩わしくても人と関わり、繋がり続けていなければならないらしい。

今思えば、僕がバイクに乗ろうと思ったのは、そんな繋がりから逃れられるような気がしたからかもしれない。事実、山を縫うワインディングを駆け抜ける興奮や、辿り着いた見知らぬ景色の恍惚は、奴隷のように働く僕をいつだって開放してくれた。

そんなことを考えながらうとうとしていると、駅員が僕に終点だと大きな声で呼びかけていることに気が付いた。いつの間にか最寄りの駅についていたようである。

いつからか寝酒をする癖がついてしまった僕は、帰りがどんなに遅くなっても駅前のコンビニに立ち寄ってビールを購入するのが平日の日課になってしまった。ゾンビのようにセブンイレブンの奥のアルコールコーナーに向かう途中、雑誌の陳列棚でとんでもない光景を目にした。

ない。全然ない。ヤングジャンプの表紙を飾る柏木由紀さんの写真、その鋭角なVラインからは全くと言っていいほど体毛の存在が感じられない。やりやがった。これは完全にパイパンである。健康的な肌色が疲れた体に染み込んでいくような気がした。

AKB48の第三期生だという柏木由紀さん。キャッチフレーズは「寝ても覚めてもゆきりんワールド夢中にさせちゃうぞ」だそうだ。なるほど確かに僕の頭の中のパイパンの残像は寝ても覚めても消えそうにない。「ゆきりん」というのはファンの中での愛称らしいが、暴力的なVラインに対してその愛称は少しばかり可愛らしすぎる気がする。ここはひとつ、厳粛に苗字を利用して「かっしーさん」と呼ぶのが妥当なのではないだろうか。

腹毛、チン毛、ケツ毛、その全てが繋がっている僕には、かっしーさんのVラインはとても眩しく、そして異様にさえ見えた。人間関係のようにまとわりついてうっとおしい体毛を、かっしーさんはスパッと断ち切りたくなってしまったのだろう。

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連休は兼ねてからツーリングに行くことを決めていた。せっかくなのでRIDEMATE*1で募集をかけてみると、急ではあったものの、何人か参加してくれることになった。実を言うと、マスツーリングを主催するのは今回が初めての経験だったので、すこしばかり緊張する。

ツーリング当日の午前9時、御在所SAにて集合である。平日はいつもギリギリに出社する僕も、ツーリングとなれば話は別である。随分と早く到着してしまったものの、いつもの3人は既に到着していた。

実はこの日、僕は新しいギアを用意していた。

バイクに乗りながらaikoを聞くために開発されたマシーンである。切ない歌を楽しく歌うaiko、不安定にも聞こえるその独特な揺れる音程は、僕の心をいつまでもつかんでやまない。

通称インカムと呼ばれるこのマシーン、なんとaikoを聴く以外にもインカム同士を繋ぐことでバイクに乗りながら会話をすることができるという機能を有している。すごい。

買ったばかりのインカムを繋いで、御在所SAを出発する。ヘルメットの中で人の会話が聞こえるのは不思議な感覚である。みんなインカムでいつも何を話しているのかと思えば、基本的には性風俗の情報交換をしているようである。意外にも性風俗にうとい僕にはとても勉強になる内容だ。

関西方面の性風俗情報に話題が移った頃、休憩場所の安濃SAにたどり着いた。ここで初対面となるかっしーさんと合流する手はずである。少し早く着きすぎてしまい、唐揚げを食べて時間をつぶしていると、かっしーさんから到着したとの連絡が入った。

唐揚げを食べながらあたりを探していると、それらしき人を発見。声をかけてみるとやはりかっしーさんだ。モノトーンの洋服を身をまとったお洒落な好青年である。ひょっとしたらパイパンかもしれない。それくらいの爽やかさである。

初対面なのでパイパンかどうかは尋ねることはできなかったが、軽めに挨拶して出発である。かっしーさんのシルバーのCBR250RR、フルエキのAKRAPOVICマフラーからは気持ちの良いエキゾーストノートが唸りを上げる。250フルカウルスポーツの中でも存在感のある通称ニダボ、やっぱりカッコいいバイクだ。

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連休の中日ということもあり、この日は終始渋滞に巻き込まれるツーリングだった。あまり走り自体を楽しむことはできなかったものの、天気には恵まれ、朝熊展望台やパールロードからは絶景を望むことができた。

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渋滞に巻き込まれ、のんびり走る車に多少いらいらしながらも、一応の目的地として設定していた大王崎灯台にたどり着いた。勾配の強い坂道や石垣、絶壁から海を見下ろす灯台など、どことなくエモーショナルなロケーションが古くから絵描きを惹きつけてやまないらしく「絵描きの町」として知られている。

数年前、仕事で志摩市に住んでいた頃、慣れない業務に疲弊した僕がドライブに来て印象的だった場所でもある。あのとき一人寂しくやってきた場所に、みんなんで訪れるというのも感慨深いものである。

静かな街で耳をすませば灯台の建つ絶壁にぶつかって砕けた波の音がかすかに聞こえる。

気が付けばもう夕方が近い。少しばかり休憩をして、僕らは岐路につくことにした。

当時ここを訪れた時も今日と同じ雲一つない青空が広がっていた。あの時、孤独に歪んで見えていたはずの灯台は、僕たちの旅路をやさしく見守ってくれているように見えた。僕たちの認識している世界はとても曖昧で、同じはずの景色であっても、その時々の感情で簡単に見え方が変わってしまうのかもしれない。

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スピードを出して振り切ろうとしたはずだった。僕をいらつかせる全てのものを置いていこうとして、うつむいたままアクセルを回した。スピードに慣れて顔を上げると、同じスピードで走ってくれる人がいることに気が付いた。面倒だなと切り捨てたはずの繋がりは、本当は僕が心底欲していたものなのかもしれない。

ヤエーやSNS、ミーティング、マスツーリング、インカム。どれも少し前の僕には縁のなかったものだ。なんなら無駄なものだとさえ思っていた。

バイクでの繋がりであっても、時には煩わしく思ってしまうこともある。それでも人は人との繋がりに希望を捨てられないでいる。ムダ毛のように一度そり落としても、何度も何度も生えてくるのだ。

家に帰ると連休前に買ったヤングジャンプが無造作に放り投げられていた。「たまにはムダ毛も悪くないよ」と、表紙の柏木由紀さんに僕は話しかけた。返事こそなかったが、つけっ放しだったインカムからはかすかにaikoの歌が聞こえた。

youtu.be

*1:バイク乗り専用コミュニティサイト ride-mate.com

ガルドシューズⅣのグリップ力

純粋にライディングのみに目を向けた時、レーシングブーツは最良な選択といえるだろう。しかしながら、バイクの操作および有事の際のプロテクションに特化して作られたその構造により、バイクを降りるとうんこ我慢してる人みたいな歩き方になってしまうし、スポーティなデザインは良くも悪くも目立ちすぎる。そのため、日ごろからTPOを大切にしている僕は、ちゃんと走りたいツーリングのときにはレーシングブーツ、近場を軽く走るようなときには格好よくかつ足に馴染んだエンジニアブーツと使い分けていた。

エンジニアブーツはとにかく格好いいわけだが、ソールが分厚すぎるのと、フラットじゃないのとで、どうしても操作性が悪い。ということで、ちゃんと走りたいときにも使えるし、歩き易くて、なんならある程度カジュアルな感じのやつを新調することにした。

そんな都合のいい要求を満たすブーツを探してネットの海を彷徨い続けた結果、辿り着いたのがクシタニのガルドシューズⅣである。 

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パッと見安全靴みたいにも見えるが、クシタニさんのガルドシューズⅣというライディングブーツである。見ようによっては渋い感じで、ライディングブーツよりは断然ナチュラルなのではないだろうか。

ソールもフラットなものを採用しており、ライディング時の操作性はよさそうである。

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ペタッとしていてなんだか滑りそうな見た目である。クシタニショップの店員さんによれば、なにやらゴムの配合が一般的なソールと違うようで、ハイグリップタイヤ的なあれらしい。

実際に使ってみたところ、ステップの上でもアスコンの上でも全然滑ることはなく、充分なグリップを有していることを確認できた。着用中に雨に降られたこともあるのだが、ある程度荷重をかけていれば問題なくグリップするようである。表皮に撥水加工した牛革を採用しているため、雨水が染み入ることもなく、突然の雨にも耐えうる仕様となっているのは、バイク専用ならではの良い点だろう。

このブーツ、ソールのグリップ力や撥水性能に加え、革自体がとても柔らかくできているのも大きな特徴のひとつと言える。この柔らかさのため、バイク用とは思えない歩きやすさを有している。これなら、万が一うんこがもれそうになっても、躊躇なくダッシュできるはずだ。

ただひとつ、このブーツに難点を付けるとすれば、その価格だろう。天下のクシタニ製品だ。なかなかのお値段がするわけである。

みんなに分かりやすいようにラーメン福*1で換算すると、普通のラーメン約70杯弱、特製ラーメン(チャーシュー麺)約50杯に相当する価格である。驚いたと思うが、クシタニとは得てしてそういうものなのである。

ちなみにラーメン福の僕のおすすめの食べ方については、まず特製ラーメンを注文するところから始まる。薄切りで大判のチャーシューで中太麺とたっぷり乗った野菜をこれでもかと包んで、一気にほおばるのが僕にとってのラーメン福の醍醐味なのだ。チャーシューを3枚消費したところで、卓上に設置されたスタミナ辛子を投入してすかさず味変をしよう。特製ラーメンはチャーシューが合計5枚のっているので、残りの2枚は味変後のラーメンとともに楽しもうではないか。ニンニクによる独特のコクのあるスタミナ辛子は、ついついたくさん入れてしまいがちであるが、意外と辛いので、入れすぎて腹を下さないように注意が必要だ。

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入れすぎると良くないとは分かっているものの、先日もついついスタミナ辛子を投入しすぎてしまった。ラーメン屋の床は油で滑りやすくなっていたが、ガルドシューズを履いている僕はダッシュでトイレに駆け込むことができた。

僕が愛用するFIVEのグローブ

僕はバイクに乗るときにFIVEというメーカーのグローブを愛用している。FIVEのグローブはデザイン、プロテクション、操作性、コスパどれを取っても優秀で、僕のバイクライフに欠かせない存在となっている。

今日はそんなFIVEの魅力を伝えるべく、僕が持ってるFIVEのグローブを紹介してみようと思う。

KANSAS

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まずはこのブラックのショート丈グローブだ。クラシックな外見を維持しながら、しっかりとプロテクターを内蔵しているのが特徴で、どんなバイクにも合わせやすい。手の甲に配したジッパーもデザイン的に少し差別化された感じでGOODである。

性能とはまったく関係ないが、このグローブは名前がちょっと洒落ていて、アメリカのカンザスの名を冠している。僕はこのグローブを着けてバイクに乗っているとき、遠い異国の地カンザスに思いを馳せるのである。

カンザスについては、なんとなく広大な大地のイメージを持っているが、せっかくなのでこの機会にカンザスについて調べてみた。そこで分かったのは、アメリカにはカンザス州とカンザスシティが存在しているということである。さらに、カンザスシティにはカンザス州にある方とミズーリ州にある方の2つのカンザスシティが存在しているようなのだ。

僕はこのグローブを着けてバイクに乗っているとき、いったいどのカンザスに思いを馳せればいいのだろうか。

WFX CITY WP

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ウィンターグローブであるが、普通に寒い。普通に寒いので、男は黙って電熱グローブを買おう。

手だけだと写真が寂しいのでニンジンを持たせてみた。どうにもしっくりこない。ニンジン特有のテーパーの強い形状が問題だろうか。

STUNT EVO

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夏用のメッシュグローブなので夏野菜の代表格のナスを合わせてみた。季節感あふれる良い組み合わせである。テーパーもニンジンより弱めだが、ちょっと全体的に太いせいか、やっぱりしっくりきていない気がする。

ちなみにグローブについては、親指がやたらデカい。ナスが入るんじゃないかってくらいデカい。

RFX2

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求めていたのはこのタイトでナローな形状だったようだ。トゲトゲが高いグリップ力に一役買っている。こいつといっしょなら、このままどこにだっていける、そんな気がしてくるから不思議だ。

僕の好きな夏のキュウリの食べ方は、なんといってもキュウリのたたきである。めん棒等で冷やしたキュウリをよく叩きつけ、手で引きちぎり、醤油とごま油をかければ完成する。調理の手軽さに加え、白ご飯にもビールにもあう万能料理ときている。シンプルかつ豪快。男の料理と呼ぶに相応しいだろう。

グローブの方はレーシングモデルだけあって操作性が抜群。ツーリングでも使い勝手が良いし、意外と手軽に使える万能グローブだ。


まとめ

夏は食欲が落ちがちだが、彩り豊かな夏野菜は食欲を掻き立てる。産地としては国産もいいが、カンザス州なんかはアメリカでも有数の農業が盛んな州らしいので、カンザス産の野菜もたまにはいいかもしれない。

今日紹介した野菜はビタミン、食物繊維、カロテン、鉄分どれをとっても優秀で、僕のヘルスライフに欠かせない存在となっている。

 

2019.7.18