少し前にオートボーイスーパーというイカした名前のフィルムカメラをメルカリで購入した。ウィーンという巻き上げ音や、シューピーンというフラッシュのチャージ音が賑やかなカメラだ。
フィルムカメラを購入しようと思ったきっかけは、秋の終わりに行ったキャンプツーリングの途中、iPhoneがバイクの振動でぶっ壊れた時に現地で調達した写ルンですが楽しかったから。オートボーイスーパーは、その名の通り自動でピント合わせを行ってくれることを売りにした簡単なカメラ。だけど、40mmF1.9の明るいレンズが付いていて、結構綺麗に写るそうな。(あんまりカメラのことは詳しくない。)
仕事のTODOが増えたせいか、僕の脳みそが少しずつ歳をとってきたせいか、若しくはその両方か、昔と比べて随分と色々なことを忘れてしまうようになった。昨日考えていたことも、さっき見た景色も、何年後かにはすっかりと忘れてしまうだろう。
それはとても勿体ないし、ちょっと寂しい。これまで、僕は日々の出来事を少し長い文章にまとめてから投稿してきたが、これからはもう少し手軽な記録も残していきたいなと思う。
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少し前になるが、オートボーイスーパーを持って、渥美半島にツーリングに行ってきた。愛知県に住むバイク乗りは、冬になると暖かくて凍結の心配の少ない知多半島と渥美半島に走りに行く。
渥美半島はいつ行っても少し物足りないから、何が足りないのかを突き止めるために毎年行く。残念ながら今年も見つけることが出来なかったから、来年もまた行くことになるだろう。
実はこれがSS900と行った最後のツーリング。ちょっと面白い車両がお世話になっているお店に入庫したので乗り換えることにした。
インプレと言うほど長く乗ってもいないが、SS900は重心の高さとLツインで前輪荷重が少ないせいなのだろうが、ちゃんと体重移動をしながら乗らないと不安になる感じ。僕の腕では大したことは言えないのだが、時々うまく曲がれると気持ちが良い。
そして、立ち上がりからのVツインのまさに地面を蹴るが如くの加速感は独特で、僕がDUCATIに対してイメージしていた乗り味そのものだった。
ポジションは噂通りきつく、(僕が乗っていたのはスペーサーが入る前のより前傾のきついモデル。)長く乗っていると体が疲れてくる。だけど、跨っただけでちょっとやる気にさせてくれるというか、乗り手を高揚させてくれる。
Vツインの不等間隔爆発と空冷の機械音、乾式クラッチの打刻音の組み合わせは唯一無二で、クラッチカバーをオープンタイプにして楽しんだりもさせてもらった。
半年ほどの付き合いの中で、納車時にトラブルがあった以外は全く故障もなく、DUCATIは壊れやすいという先入観を覆してくれた。たぶん、前のオーナーがちゃんとメンテしていたんだと思う。ちょこちょこと手も入っていたし。
ピエール・テルブランチがデザインしたこのSSは、トラスフレームの見せ方が格好いい。フロント側のトラス下弦材の隠し具合と、リア側でピッチやせいを変えながら跳ね上がっていく様が、トラスを有機的に見せてくれている。バイクに関する力学はよく分からないが、数あるDUCATIのトラスフレームの中でも、一番色っぽいんじゃないだろうか。
セカンドバイクということもあり、今回軽やかに乗り換えを決めたが、お別れとなると寂しいものである。最後にバイク王で写真を撮った。
バイク王の帰り道は最寄りの駅まで歩いて帰る。あまり使ったことのない駅はとても静かで、持ちづらいヘルメットに少し苛つきながら、もう少し騒がしければよかったのになと、自分勝手なことを思った。
Lツインの振動でカメラのイカれたiPhoneにイヤホンを挿して、最近お気に入りの曲を聴きながら、なかなかこない電車を待った。