『写ルンです』といくキャンプツーリング
(この記事は2021年11月12日にLantern Ridersというキャンプツーリングに関するwebサイトに投稿したものである。)

今年も早いもので、気が付けばあと二ヶ月を残すのみとなってしまった。
昨年に引き続き、2021年はCOVID19に振り回される一年であった。ワクチンのせいなのか、ウィルスの気まぐれのせいなのか、真相は定かではないものの、こと国内においては忌まわしきウイルスによるパンデミックも(束の間の?)落ち着きを見せつつある。
それに伴って、マスク着用や消毒、ソーシャルディスタンスに配慮しながらではあるものの、休日の外出を伴うアクティビティもだんだんと楽しめるようになってきた。
今朝見たテレビのニュースでは、「春から初夏にかけて一度は中止になってしまった学生たちの修学旅行ですが、季節を秋に仕切り直して再開する学校が増えてきています」と綺麗な声のアナウンサーが話していた。
青春時代に失われる二年間と、おじさんになってから失われる二年間の比重はまったく違うはずだ。社会人以上に我慢を強いられてきたであろう子供たちが、友人たちと大切な体験を共有することができるのは、手放しで喜ばしいことだ。
思えば、僕の中学校の修学旅行もちょうど今くらいの肌寒くなりはじめた季節だった。
「おまえの好きな子教えろよ!」
「そんなの、いるわけねえだろ。うちの学校の女子、みんなダサいじゃんか。安田はどうなんだよ!」
「おれはサキちゃん!サキちゃんとやりたい!サキちゃんとやりたい!」
美しかった景色よりも、友人とのくだらない会話ばかりを思い出してしまうのは、きっと僕がまだ幼かったからだろう。
知らない場所の、知らない時間を、知ってる人と共に過ごす。まるで永遠かのように感じた今が、いつか終わってしまうことも想像できないまま、14歳の僕たちは修学旅行のしおりに書かれた入浴時間のルールを無視して、ホテルのでっかい風呂に飛び込んだのだ。
◆◆◆
10月の終わりの季節、久しぶりにキャンプツーリングに出掛けてきた。
場所は岐阜県高山市にある奥飛騨温泉郷オートキャンプ場だ。(温泉郷は「おんせんごう」と読むそうな。)以前にも利用したことがあるのだが、これが実に良いキャンプ場なのである。ロケーションや設備はもちろんのこと、周辺の道も楽しく走ることができる。
高山市は古い町並みや合掌造りで有名な白川郷、絶景を楽しめる新穂高などなど、観光資源にも恵まれており、昔から好きな場所でもある。
天候にも恵まれ、とても満足感のあるキャンプだったので、フィールドレポートという形でここに残しておこうと思う。
紅葉の中を駆け抜ける名道、せせらぎ街道
南から奥飛騨を目指す道中はせせらぎ街道を利用するのが良いだろう。緑と川に囲われたゆったりとしたカーブが心地よく、東海地方の名道として名を馳せている。あまりタイトなコーナーはないため、人によっては物足りないということもあるかもしれないが、多くの荷物を積載したキャンプツーリングではちょうど楽しめる塩梅である。
この日は10月末ということもあり紅葉を見に来た車で混み合っており、快走することは叶わなかったものの、赤く染まりはじめた景色を存分に満喫することができた。
カフェ・アグスタで美味しいコーヒーとヴィンテージバイクを堪能
今回はスルーしてしまったがせせらぎ街道のおすすめスポットのひとつに「ライダーズカフェ・アグスタ」がある。せせらぎ街道を走るライダーの憩いの場であり、60〜70年代の古いバイクの展示も行われているなんとも素敵な場所なのである。

時期によっては名前に冠しているMV AGUSTAの名車750Sの展示が行われている。僕も以前一度見に行ったことがあるのだが、ディスコ・ボランテ(空飛ぶ円盤)と呼ばれるエラの張ったタンク、砂型で作られた空冷四気筒、青・赤・白というイタリアンには珍しいパターンのトリコロールカラー等々、見どころ充分で美しいモーターサイクルであった。

冬季は営業していなかったり、展示されているバイクも時期によっては異なるので、尋ねる前には一度公式サイトをチェックしておくと良いだろう。
壊れかけのiPhone
せせらぎ街道の道沿いには所々に車やバイクを止められる箇所があるので、紅葉と一緒に愛車を撮影するのがいいだろう。
僕も紅葉を背景にバイクの写真を撮ったので、秋のせせらぎ街道の美しさとともに、僕の愛車をここで紹介しようと思う。

バイクにマウントしてナビとして使っていたiPhoneのカメラがバグってしまったため、少々分かりにくいかもしれないが、紅葉のように真っ赤な車体のDUCATI SS900ieだ。トラスフレームの美しさがお分かりいただけるだろうか。
バイクの振動でiPhoneのカメラが壊れるという噂は聞いたことがあったが、きっと大丈夫だろうと高を括っていたところがある。失ってはじめて、iPhoneの存在の大きさに気がつく。
タイミングの悪いことに、出発前日にデジタルカメラを充電したまま家に忘れてきてしまったため、ここからのレポートは狂ったiPhoneの写真でお届けせざるを得ない。分かりにくいとは思うが、iPhoneを失った悲しみに免じてどうか許して欲しい。
Aコープ奥飛騨店で食材を調達
さて、せせらぎ街道で高山まで北上したら、158号線、471号線を通って奥飛騨を目指す。北アルプスの手前に差し掛かってくるので、景色のスケール感が大きくなるとともに、気分が高揚してくるのが分かる。この季節には北アルプスの山々に雪がかかり、紅葉で赤く染まった目の前の山との対比を楽しむこともできる。(残念ながら写真はない。)
キャンプ場に着く前にはAコープ奥飛騨店に寄って食材を調達すると良いだろう。ここはキャンプ場からほど近い場所にあるので、チェックイン後にやってくるのにも適した立地だ。僕らもAコープで一通りの食材を買い揃えることにした。旅先のスーパーマーケットというのは、普段見慣れない食べ物などが売られており、旅行の高揚感も手伝って、ついつい余計なものまで買ってしまいたくなる。
他に何か変な食べ物はないかなんて思いながら、なんとなく店内をまわっていると、レジの前の乾電池コーナーに懐かしいものを見つけた。

FUJIFILMの使い捨てカメラ「写ルンです」だ。スマートフォンの普及によって、すっかりその存在を忘れてしまっていたが、iPhoneがバグった今の僕にはちょうどいいアイテムだ。僕は中三の修学旅行以来、実に約15年ぶりに写ルンですを買い物カゴに入れることになった。
さて、カメラを手に入れることができたので、ここから先の写真は写ルンですで撮影したものとなる。解像度は低いかもしれないが、ブレブレの写真よりは幾分かマシなはずだ。
奥飛騨温泉郷オートキャンプ場
道の駅 奥飛騨温泉郷上宝

Aコープから数キロ走れば道の駅奥飛騨温泉郷上宝に到着する。実はこの道の駅、目指していたキャンプ地である奥飛騨温泉郷オートキャンプ場の入り口になっているのだ。物産館もあったりして、地場のちょっとした食材やお土産を調達することもできる。
キャンプ場のチェックイン開始の時間帯には受付が結構込み合うので、少し時間をずらすのも手かもしれない。
バイク乗りには川沿いのサイトがおすすめ

サイトは3つに分かれていて、電源の使用可能なサイト1、電源なしで炊事場などの施設に近くて便利なサイト2、敷地の真横を流れる川に近いサイト3という構成となっている。
僕たちが今回、というか、ここにくる時にいつも選ぶのはサイト3だ。施設からは少し離れるものの、開けた眺望と、川を間近に感じられるおすすめのサイトである。バイクで来る人のほとんどは、サイト3を使っている印象がある。


施設の写真もいろいろ撮ってみたのだが、写ルンですを使いこなせず、何が写っているのかさっぱり分からないものだらけであった。写ルンですでの室内撮影は、基本的にフラッシュを焚く必要があるようだ。
KTM 790 adventure
この日は初めてお会いするK村さんとその愛車KTM 790 adventureも一緒だ。790 adventureは同社の790 dukeのパラツインエンジンをベースとしたアドベンチャーツアラーである。初めて見たが、結構デカい。

20Lのタンクに加えて燃費もかなり良いようで、1回の給油で400km以上走れてしまうそうだ。今回の一泊二日のキャンプの間にも、K村さんは給油をせずに乗り切ってしまった。2回も給油した僕のSS900ieとは大違いである。
実は以前、鈴鹿サーキットでの試乗会で790dukeに試乗したことがあるのだが、そのときに驚いたのはエンジンのドコドコ感である。パラツインなのになんでなんだと思ったのだが、後日調べてみるとこのエンジンは75度位相というちょっと変わったクランクを採用しており、並列でありながら不等間隔爆発なのである。不等間隔爆発の音や地面を蹴る感覚が好きで、Vツインばかりに乗っている僕にもグッとくるエンジンなのである。

dukeしかりadventureしかり、KTMのバイクは共通のデザインコードにのったような個性的で新しいデザインが目を引く。知っている人も多いと思うが、KTMのバイクのデザインはキスカというデザイン会社によるものである。日本でいうとヤマハとGKデザインのような関係だろうか。そういえば並列エンジンに不等間隔爆発を採用するのもヤマハの十八番だった。
最近では若い人が390dukeに乗っている姿を街でよく見かけるようになった。きっと、中免をとったばかりのかつての僕らが持っていた「とにかくカッコいいバイクに乗りたい」という気持ちに、ダイレクトに訴求するのだろう。
天然温泉の露天風呂でツーリングの疲れを癒す
奥飛騨温泉郷オートキャンプ場の最大の目玉といえば、やはりキャンプ場内に天然温泉があることだろう。

浴槽は潔く露天風呂ひとつのみ。空を見上げるとモミジの木があって、紅く染まった葉を眺めながら気持ちよく入浴することができる。もう少し後の季節になれば、湯面に浮かぶモミジを見ることもできるだろう。
注意点としては、温泉自体には体や髪を洗う場所が用意されていないことが挙げられる。その代わりに脱衣場には200円で使えるシャワールームが併設されている。ドライヤーの使用料も100円なので、風呂に入る前には100円玉をたくさん用意しておく必要があるだろう。
キャンプ場の利用者は朝6時から、夜10時まで無料で入浴することがでるため、僕は初日の昼、夜、二日目の朝と合計三回利用させてもらった。
初日のお昼は偶然にも他の入浴客はおらず、温泉を一人で満喫することができた。中三の時みたいにウォーターボーイズで学んだバレーレッグでもかましてやろうかと思ったけど、僕ももう30だ。今日はゆっくり、温泉と紅葉を楽しむことにしよう。(ウォーターボーイズシリーズはヒロインを演じる平山あやさんが最高にキュートな映画版がおすすめである。)
秋のキャンプに選んだ装備
10月末の飛騨高山ということで、夜から明け方にかけて気温が低いことを懸念した僕は、所持している装備の中で出来る限りの冬仕様でキャンプに望んだ。
結果として、思っていたより気温は下がらず、風もなかったこともあり、睡眠を含めて快適に過ごすことができた。正確な気温は分からないが夜中で一桁台の前半くらいだろうか。
寝具はいつも使っているイスカのアルファライト700Xである。(というよりこれしか持っていないのだが。)シュラフは-6度まで対応らしいがあくまでスリーシーズン用で少々心許なかったため、ロゴスのゴム製湯たんぽを購入して行った。
これがなかなか正解で、寝る前に足元に入れて朝まで温かさをキープしてくれたし、折り畳めて嵩張らないためキャンツーにはもってこいだ。
シュラフに入るときにはもちろん着てきたバイクウェアを着込む。この日の僕のウェアはこんな感じだ。

・クシタニ/ウィンターアメニタジャケット
・クシタニ/エクスプローラーライドジーンズ
さらにその下には冬用のインナー類を着込んでいる。

・ミズノ/ブレスサーモアンダーウェア
・ワークマンのパッチ
・ワークマンの中綿ズボン
他にもホッカイロをたくさん持っていったが、結局使わずじまいであった。
1/fゆらぎ
気温がそこまで下がらなかったこともあり、夜にはゆっくりと食事とお酒を楽しむことができた。

(フラッシュを焚き忘れた焚火の写真。)
炎のゆらぎが心地よいですねとK村さんが言った。
炎の揺れ方や星のまたたき、波の音や木漏れ日には1/fゆらぎというリズムが隠れているという。壊れかけのiPhoneで1/fゆらぎについて調べてみると「スペクトル密度が周波数fに反比例するゆらぎのこと」だそうだ。一体なんのこっちゃって感じだ。

あたりが静かになってくると、川の音が意外と大きいことに気がつく。結構な音量なので、気になる人は川沿いのサイトを避けて選んだ方がいいかもしれない。
僕は眠るときにも全然に気にならず、心地よささえ感じた。(酔ってただけかもしれないが。)水と水のぶつかり合うノイズに包まれながら、川の音にもゆらぎがあるのだろうかとか、そんなことを考えているうちに、いつの間にか眠りについてしまった。
北アルプス大橋で絶景とともに愛車を撮影
2日目。帰る前にはキャンプ場から少し寄り道して北アルプス大橋を目指す。
北アルプス大橋は全長150m、高さ70mの橋で、その名の通り、北アルプスの山々を望むことのできる有名な絶景ポイントだ。タイミング次第では橋の脇にバイクを停めて雄大な峡谷を背景に写真を撮ることもできる。(他の利用者の邪魔にならないよう十分に注意が必要である。)


山やバイクの写真を撮っていたら、写ルンですを使い切ってしまった。
今回僕が買った写ルンですは27枚撮りのタイプだ。といっても、調べてみたところ、以前は39枚撮りや高感度版などのバリエーションがあった写ルンですシリーズであるが、今は27枚撮りのスタンダードタイプ以外は絶版になってしまったようだ。
27枚という枚数はひとつの旅にちょうどいい数字なのかもしれない。明日はあそこに行くから、今日は何枚までにしとこうとか、失敗している余裕はないぞとか、そんな風にして旅のシーンの一つ一つを吟味しながらカリカリとフィルムを巻いてシャッターを切る。
大容量のSDカードやスマートフォンに慣れてしまった僕には、その行為さえも愛おしく思えた。懐古主義とかそんな言葉で片付けてしまうには、ちょっと惜しい感覚だ。
こうして記事を書きながら出来上がった写真を眺めていると、チープな写ルンですで写した写真は、目に見える物を写しきってはくれないけれど、目に見えない、それこそゆらぎのような物をとらえてくれているような気がした。



(被写体がだいたい中心からズレてしまった。)


安田のけつ毛とサキちゃんのまつ毛
先日久しぶりに実家に帰省した際、母からなにやら写真を手渡された。
僕が昔使っていたナップサックから写ルンですが発掘されたというのだ。現像された写真をめくっていくと、中三で行った京都の修学旅行に持って行った時のものだということが分かる。

金閣寺や清水寺、二条城、ブレてしまって何が何だか分からない物体、同じホテルになった他校の女子に頼んで一緒に撮ってもらったもの、余ったフィルムで撮ったであろう近所の犬、誰かのケツの穴。当時の僕が吟味したであろう27枚の記録がそこにあった。
その中の何枚かには、たまたま修学旅行で同じ班になった、当時好きだったサキちゃんの写ったものもあった。隣の席から見えた長いまつ毛に見惚れたこと、消しゴムを拾ってあげたときに少しだけ触れた指が細かったこと、卒業アルバムに映るサキちゃんの写真を見ながら覚えたての床オナニーをしまくったこと。忘れていた記憶の引き出しがひっくり返されていく。
修学旅行が終わると、サキちゃんはバスケ部のエースと付き合い始めた。僕が安田のケツの穴を爆笑しながら撮影している間に、同じ建物のどこかではバスケ部のエースがサキちゃんに告白していたのだ。
楽しかった思い出も、切ない思い出も、全てが急に懐かしくなった。みんな今ごろ何をしているんだろうか。当時のことが急に懐かしくなってしまい、登録したっきり何年も放置したままのFacebookにログインしてみた。こんな僕でも地元の知り合いから何件もの友達申請が来ていて、ワクワクしながら一人一人のページにアクセスしてみる。
学年一のイケメンだったバスケ部のエースはビジュアル系メイクにハマっていて、アナウンサーになるのが夢だったサキちゃんは地元でキャバ嬢になっていて、仲の良かった安田は陰謀論に夢中らしい。
SNSやマッチングアプリが当たり前になった今では、出会うはずのなかった人と出会える機会は増え、今生の別れみたいなものはほとんどなくなったように思う。それは素晴らしいことである一方で、出会いの喜びと別れの美しさを希薄化させてしまったのかもしれない。
友達申請を全て却下して、僕はFacebookをログアウトした。きっともうログインすることはないだろう。
さようなら、僕のアイフォン。さようなら、僕の初恋。さようなら、僕の青春。
画像編集ソフトを使ってこの世からアマリングを抹消しよう

アマリングとは
アマリング。バイク乗りなら一度は聞いたことがある言葉だろう。
僕がはじめてこの言葉をインターネットで目にした時には「ははーん、さては何か卑猥な部位もしくはテクニックの名称だな」と予想したものだが、実際にはもっと卑しく虚しい類のものであった。
インターネットに毒されていないライダーのために説明しておくと、アマリングとは「新品タイヤのツルッとした表層が、路面に設置していないタイヤの端のみに残ってしまったリング状の部分」を指すスラングである。いったい誰が作った言葉なのかは定かではないが、「余ったリング」の略とされている。

試しにTwitterでアマリングを検索してみると、「アマリング消えないな〜」「アマリング警察に捕まっちゃうwww」といったコメントと共にタイヤの写真がアップロードされている。しかしながら、わざわざタイヤの写真をアップするような輩は、そこそこタイヤを端まで使っている自負の元に肥大化した承認欲求に駆られて写真をアップロードしているので、僕に言わせて貰えば全然余っているとは言えない。なんなら使い過ぎているくらいだ。
こんな言葉を知るまでは全く気にしていなかったのだが、一度そういう世界を知ってしまうと途端に気になってしまうものである。
承認欲求を満たすために愛車の写真をインターネットにアップしようとすれば、日進月歩で高性能化するスマートフォン・デジタルカメラの解像度が仇となり、ネットの海に広大なアマリングが晒されてしまうことになる。

最近、飲食店での悪戯行為を撮影した動画が拡散されてちょっとした社会問題となっている。悪戯行為自体が悪いのは言うまでもないが、多くの人がスタンドアローンコンプレックスにその動画の拡散に加担してしいたことの印象が強い。
ひとたび気まぐれな正義感もしくは悪意の暴走に巻き込まれれば、僕のアマリングが突然ネットに拡散されてミシュランタイヤの株価が大暴落し、なんやかんやで僕と僕の家族が路頭に迷う・・・という世界線もあり得るかもしれない。それだけは何としても避けたい。
とはいえ、タイヤをそんなに潰して乗るほどの技術は持ち合わせていない。ヤスリやクレンザーで削り落とすことで物理的に消すという強行手段があるようだが、それは超えてはいけない一線、人と人でないものを分かつ境界線のような気がするのだ。
そのような混沌とした背景の中、承認欲求を満たしながら人が人でいるためのバランスの良いソリューションとして、Photoshop的な画像編集ソフトを用いて写真上でアマリングを消すという手法がある。
とはいえ、Adobe社が販売している本家のPhotoshopは、アマリングを消すためだけに導入するにはコストが大きく賢明な選択肢ではない。そこで今回は、Photoshopと大体同じようなことができるフリーのアプリケーションを使ってその具体的な手法を紹介していこうと思う。
Photopeaを使ってこの世からアマリングを抹消しよう
Photoshop的なフリーのアプリケーションはいくつかあるが、その中でも僕がよく使っているのがPhotopeaである。ブラウザ上で利用できるため、導入にまつわる障壁が全くないうえ、利用環境を選ばずに家でもツーリング先でも手軽にアマリングを消すことができてしまうのだ。

ここでは、ツーリング先での緊急的な利用を想定して、スマートフォンでの操作画面のキャプチャをまじえながら紹介していく。基本的な操作方法はPC版でも同じだし、なんなら他のPhotoshop的なツールでも同じなので、幅広く展開できるはずだ。
端末はiPhoneを使っているが、他のスマートフォンでも大体似たような操作感だと思うので、適宜補完しながら読み進めてもらいたい。
①Photopeaの起動
まずはPhotopeaの起動である。ブラウザアプリケーションなので、下記URLをコピーして各自のブラウザから開いて欲しい。なお、僕のスマホではchromから編集後の画像の保存ができなかったので、iPhoneユーザーであればsafariでの操作をおすすめする。
https://www.photopea.com/
下のような画面が出てきた場合には右上の「×」をタップする。

すると以下のような画面が表示されるはずだ。

上手くいかなかった人のことまでは構っていられないので、ここで潔く諦めて欲しい。
②写真の読み込み
次に写真の読み込みである。今回は例として以下の写真を利用する。

実に広く、そして綺麗なアマリングである。あまりタイヤに寄った写真を加工するのは難易度が高いため、このくらい引きの写真で実践することを推奨する。都合の良い写真が手元にない人には、特別に僕のバイクの写真をダウンロードして教材として利用することを許可しよう。アマリングがすごいからって、悪意のある拡散などは決してしないよう、取り扱いには十分注意して欲しい。
写真を読み込むためには初期状態の画面に表示されている「コンピュータから開く」をタップする。

今回は既に撮影してある写真を利用するので「フォトライブラリ」をタップして端末内のフォトライブラリから写真を選ぶ。
以下のように写真が読み込まれてアプリケーション内に表示されればOKである。

③焼き込みツールによるアマリングの削除
Photopeaをはじめとした画像編集ツールには様々な機能が用意されているが、アマリングを削除するには「焼き込みツール」さえあれば事足りる場面が多い。焼き込みツールとは画像の特定の箇所の明るさを暗くするツールである。タイヤの表面が削れていないアマリングは他の部分よりも光を反射してしまう結果、明るくなってしまっている。そこに対して焼き込みツールを使って、周りに馴染む程度に暗くしてしまおうという理屈である。
Photopeaの場合、焼き込みツールを使うには以下の部分をタップする。似たような名前の覆い焼きツールは逆に画像を明るくしてしまうツールなので、誤って選択しないよう注意をしてほしい。

ここからは少しばかりテクニックが必要となるが、現実世界でアマリングを消すライディングをするより遥かに簡単なので、そんなに身構える必要はない。
まずは焼き込みを行うサイズの調整だ。画面左上の部分から調整することが可能である。

焼き込みツールの選択中は、画面上を指でなぞった部分が暗くなるのだが、大き過ぎると余計な部分まで黒くなってしまうし、小さ過ぎると明暗のムラができやすいため、適度なサイズに設定しておく必要がある。具体的なサイズは画像自体のサイズによってしまうが、概ね1/3アマリング程度が適切な大きさだろう。ここでは12に設定する。
次に露光の設定である。右上の部分に現在の露光の値が出ているので、そこで調整が可能だ。

露光の数値が大きいほど一度の処置で暗くなる度合いが大きく、数値が小さいほど暗くなる度合いが小さくなる。ある程度小さめの値を設定して焼き込みを繰り返すことで調整することを推奨する。
設定が完了したら、二本指で画像を拡大してタイヤ部分を処置しやすいようにする。そのままアマリングを指で何度か繰り返してなぞることで、色が暗くなって周囲に馴染んでいく。

失敗してしまった場合には左上の「編集」→「元に戻す」をタップすることで、一つ前の編集状態に戻すことができるから安心だ。繰り返しタップすれば何段階も戻すことができるので、サイズや露光を調整しながら進めていけばよい。

上手くアマリングを除去することができただろうか。以下に僕が編集したビフォー・アフターを掲載しておく。

④画像の保存
アマリングの除去が完了したら、編集した写真を保存する。
画面左上の「ファイル」をタップ、続けて「別名で保存」をタップすると複数のファイル形式が展開される。ファイル形式は「jpg」を選んでおけば良いだろう。


iPhoneの場合、編集後の写真はファイルAppのダウンロードフォルダに格納される。Androidのことは分からないので、さっさとiPhoneに買い替えることを推奨する。
以上の操作であなたのスマートフォンにはアマリングのない愛車の写真が保存されたはずだ。あとはTwitterに投下するなり、Instagramに投下するなり、各々が好きに活用すれば良い。
今回はアマリングを削除するというシンプルな使い方を説明したが、画像編集ソフトには他にも様々な使い道がある。より演出的な効果を加えることもできるし、バイクの色を変えたり社外パーツを重ねたりして外装カスタムの検討を行うこともできるので、色々と活用してみてほしい。
おわりに
端末と一定の環境さえあれば、僕たちはいつでも簡単にネットワークに接続することができるようになった。誰のことも拒まず、使い方さえもユーザーに託されたもう一つの世界だ。その自由度の高さは新しい価値を生み出して現実を拡張した反面、人間の醜さまで誇張してしまった。
ひとたび接続性が一つの意思を持ったように挙動し始めれば、誰にも止める術はない。画面を指でなぞるだけで発信される意思の先にも人がいる。簡略化されたその動作が、喉を開いて空気を振るわせる行為の代替であることを、人はすぐに忘れてしまう。
インターネットの快楽に依存してしまった僕たちに、もはやここから抜け出すという選択肢は残されていない。それでも、アマリングのように簡単に消えてはくれない情報を扱っていることをもう一度思い出して、適度な距離を余らせながら関わっていくことが必要なのではないだろうか。

十二進法の夕景
12月
12月24日、この日僕のもとに新しい(と言っても中古の)クルマが納車された。タイミングがクリスマスイブの日になってしまったのは偶然なのだが、自分自身へのクリスマスプレゼントということになってしまってちょっと恥ずかしい。健やかなる独身中年男性はプレゼントをあげる側も受け取る側も自分一人でこなさなければならないので大忙しである。

ABRTH 124 spider、マツダのNDロードスターをベースに、1.4Lターボエンジンをのせ、ネオクラシックな外装に身を包んだFRスポーツだ。
以前、街で走っているのを見かけて以来、迫力のあるデザインと下品なエキゾーストノートに憧れていた車である。2020年に生産終了して以来、中古価格が高止まりしているが、乗れるうちに乗っておこうと思い購入に至った。

マフラーはレコード・モンツァという純正オプション品の付いた車両を探して選んだ。車検に通るのが不思議なくらいの音量で、バラついた下品な音を鳴らしてくれる。

内装はかなりロードスターなのだが、ドライバーファーストな操作系の配置と低い着座位置に興奮を覚える。(そもそもロードスターが素晴らしいのだ。)眼下に広がるパワーバルジを模したボンネットの隆起も、もはやインテリアの一部と言っていいだろう。
走り出してみるとはじめてのFRのコーナリングの気持ち良さに感動を覚える。ホントのことを言うと、この気持ちよさがFRであることによるものなのか、それともロードスターの設計によるものなのか、はたまたアバルトの味付けの恩恵なのか・・・乗ったことのある車種が少ない僕には判断がつかなかったが、とにかく楽しいことだけははっきりと認識できる。
こんな時代にこんなクルマを作ってくれたマツダとFCAに感謝である。

久しぶりのマニュアルシフトと思ったより小さい低速トルクに翻弄され、ディーラーの駐車場から出る前にエンストをかましてしまった。
深呼吸して顔を上げると、下取りに出したチンクエチェントが、いつもと同じ笑ったようなフロントフェイスで僕を見守っている。最後の最後に不甲斐ない姿を見られてしまった。
5年の間お世話になったチンクエチェント。どんな人に引き継がれるのか分からないけど、きっと僕の次の誰かを、いろんな場所へと連れて行ってくれることだろう。

11月
クルマを乗り換える前にチンクで最後のドライブに出掛けることにした。行き先は三重県の伊勢志摩。チンクを買った時に住んでいた場所だ。
高速で伊勢西ICまでワープして、まずは伊勢志摩スカイラインを走る。久しぶりに来て知ったのだが、伊勢志摩スカイラインは12月から名前が変わってしまうらしい。日産自動車がネーミングライツを獲得し、伊勢志摩e-POWER ROADという名前になるそうだ。なんだか今っぽくて新しい匂いのする名前だ。

僕はネーミングライツというものが、名前に価値を見出している割に、慣れ親しんだ名前を奪い、またすぐに変わってしまったりして、名前を軽視しているようであんまり好きになれないのだが・・・やはり施設や場所を維持管理していくためには有効な手段のようだ。こうなったら、どんなに名前を変えてでも、次の世代にこの楽しい道を引き継いでいって欲しいものである。
ちなみにこれは有識者の方に教えてもらった情報なのだが、AV女優さんの名前が急に変わったりするのは所属事務所を移籍すると権利関係のなんやかんやで移籍前の名前が使えなくなってしまうことが原因らしい。出演作を調べる際などに手間がかかるので、できれば前の名前を引き継いで欲しいし、その方が前後双方の事務所も得をしそうなものだけど、まぁ色々と事情があるのだろう。
さて、この日はせっかくなので車の写真を残しておこうと思い、いつか買ったままほったらかしになっていたカメラを持ってきた。

PENTAX SPFというフィルム一眼。何十年も前に作られたものだけど、機構がシンプルなので未だにちゃんと動く。僕の前に何人の人の手に渡ったのか定かではないが、ボディに刻まれた無数の小傷がその歴史を感じさせる。
内臓の露出計がちゃんと合っているのか不安であったものの、それなりに使えていたようで、思った以上に鮮明に写してくれていた。ピントや絞り、シャッター速度をマニュアルで合わせる作業は、なかなか楽しいものである。

可愛い。まるで坂道みるさん(現在はmiruさん)のような白さである。

正式名称は忘れてしまったが、ちょっとパールっぽいホワイトを選んだので、光の当たり加減によって深みのある艶を出してくれる。夕焼け時なんかは特に綺麗だ。

内装はプラスチッキー、と言ってしまえばそれまでなのだが、タコメーターとスピードメーターを同心円上に配置した単眼風メーターや、外装と連続性のある丸みと艶感のあるインパネは、NUOVA 500をモチーフにしながらもこの車のために改めてデザインされた特別感が感じられて嬉しい。
伊勢志摩スカイラインを降りたら、鳥羽から志摩をつなぐパールロードを走る。山と海の混じる景色、とアップダウン、そして適度なワインディング。相変わらず気持ちの良い道である。
少し寒いが窓を思い切り開けて、ツインエアエンジンのパタパタと鳴る音を耳に刻む。

パールロードを抜けたら、何年かぶりに横山展望台に登ってみる。ここから見られる入り組んだ半島と小さな島々が連なる景色は、志摩市ならではのもの。所謂リアス式海岸なのだが、地理の教科書で見たゴツゴツと険しい写真と違って、志摩市のそれは丸く柔らかな広がりを見せる。

横山展望台は僕が志摩市を引っ越してからリニューアルされていたようで、ちょっと雰囲気が変わっていた。大きな展望デッキとカフェが整備され、以前よりもさらに素晴らしい場所になっている。
景色を眺めてのんびりしていると、いい時間になってしまった。名残惜しいが、そろそろ帰る時間である。帰ったら明日の仕事に備えて、坂道みるさんの新作でも鑑賞することにしよう。

10月
入院していた母方の叔母が退院して自宅療養になったというので、両親と祖母とともに会いに行くことになった。コロナ禍もあってしばらく顔を見ていないが、小さい頃からお世話になっていた親戚である。
むかし歯医者で働いていた叔母が、幼い僕に歯磨きの仕方を教えてくれたことを思い出す。そのおかげか、高校以来、僕は歯医者のお世話になっていないのだ。
バイクで実家に前乗りし、父の運転で朝から出掛ける。車の中では、叔父と叔母が結婚する前、バイク乗りだった叔父が叔母をタンデムして祖父母の家に現れ、祖父が激怒したというエピソードを教えてもらったりした。
叔父と叔母の家に着き、叔父に案内されて2階に上がる。
ベットで横になっていた叔母を見た瞬間、僕と父は、叔母の命がもうあまり長くないことを悟った。強い薬に蝕まれているのが分かった。

母と祖母は叔母の手を握り、まだ力があるからきっと良くなるね、と自分達に言い聞かせるように何度も言った。
帰り際、見送りに出てきてくれた叔父が、あと一週間ももたないだろうということを、祖母に聞こえないよう小さい声で教えてくれた。
帰りの車の中での母は意外と元気に見えた。歳を重ねる中で何かを失うことに慣れてしまったのか、それとも無理をしているのか、僕にはよく分からないまま、眩しい西日に景色が霞んだ。
家に戻ると、母がカレンダーの前で何度も足を止めていることに気がついた。どれだけ見ても変わるはずないのに、一週間後の日付をじっと見つめていた。

その横顔が、元気だった頃の叔母とよく似ていて、僕はいつか来るもっと先の日を想像してしまった。
それから一週間より少し後、叔母が亡くなったと知らせがあった。
1月
帰省して寝正月を過ごす。東京に引っ越した弟がいつになくお土産をたくさん買ってきていて、僕にはDUCATI 916の1/12スケールのプラモデルが用意されていた。「ありがとう!このバイク好きなんだよ!」と喜んで受け取ったものの、よくよく考えてみると随分舐められているような気がする。

誰かからもらった何かを、形を変えてまた別の誰かに渡す。幼い頃にプレゼントを貰った子供が、いつしか誰かのサンタクロースになるように、人はそこに宿った祈りや呪詛を継承するための装置でありさえすればよくて、それ以上には何の役割もないのかもしれない。
雑煮を食べ終わってテレビを付けると箱根駅伝が始まっていた。5区の山登りまでだらだらと見ていたいところであるものの、今年は弟が婚約者を連れて帰ってきた一方で、兄の僕が派手な車で帰省したもんだから、実家なのにかなりアウェイな空気感である。マツダ車だと言っているのに、全然信じてもらえない。これはぼちぼち帰るのが正解だろう。
いつもと同じように歯を磨き、傷だらけのカメラを鞄に入れて、中古で買ったクルマのエンジンをかける。なんだか僕は受け取ってばかりだな。
誰かに襷を渡すその時まで、貰ったものを大事にとっておこうと決意して、なんやかんや見送りに出てくれたみんなに大きく手を振りながら、まだ慣れないマニュアルシフトと小さい低速トルクに翻弄され、華麗なエンストを披露して見せたのだ。
ビューティフルグッバイ
少し前にオートボーイスーパーというイカした名前のフィルムカメラをメルカリで購入した。ウィーンという巻き上げ音や、シューピーンというフラッシュのチャージ音が賑やかなカメラだ。

フィルムカメラを購入しようと思ったきっかけは、秋の終わりに行ったキャンプツーリングの途中、iPhoneがバイクの振動でぶっ壊れた時に現地で調達した写ルンですが楽しかったから。オートボーイスーパーは、その名の通り自動でピント合わせを行ってくれることを売りにした簡単なカメラ。だけど、40mmF1.9の明るいレンズが付いていて、結構綺麗に写るそうな。(あんまりカメラのことは詳しくない。)
仕事のTODOが増えたせいか、僕の脳みそが少しずつ歳をとってきたせいか、若しくはその両方か、昔と比べて随分と色々なことを忘れてしまうようになった。昨日考えていたことも、さっき見た景色も、何年後かにはすっかりと忘れてしまうだろう。
それはとても勿体ないし、ちょっと寂しい。これまで、僕は日々の出来事を少し長い文章にまとめてから投稿してきたが、これからはもう少し手軽な記録も残していきたいなと思う。
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少し前になるが、オートボーイスーパーを持って、渥美半島にツーリングに行ってきた。愛知県に住むバイク乗りは、冬になると暖かくて凍結の心配の少ない知多半島と渥美半島に走りに行く。
渥美半島はいつ行っても少し物足りないから、何が足りないのかを突き止めるために毎年行く。残念ながら今年も見つけることが出来なかったから、来年もまた行くことになるだろう。








実はこれがSS900と行った最後のツーリング。ちょっと面白い車両がお世話になっているお店に入庫したので乗り換えることにした。
インプレと言うほど長く乗ってもいないが、SS900は重心の高さとLツインで前輪荷重が少ないせいなのだろうが、ちゃんと体重移動をしながら乗らないと不安になる感じ。僕の腕では大したことは言えないのだが、時々うまく曲がれると気持ちが良い。
そして、立ち上がりからのVツインのまさに地面を蹴るが如くの加速感は独特で、僕がDUCATIに対してイメージしていた乗り味そのものだった。
ポジションは噂通りきつく、(僕が乗っていたのはスペーサーが入る前のより前傾のきついモデル。)長く乗っていると体が疲れてくる。だけど、跨っただけでちょっとやる気にさせてくれるというか、乗り手を高揚させてくれる。
Vツインの不等間隔爆発と空冷の機械音、乾式クラッチの打刻音の組み合わせは唯一無二で、クラッチカバーをオープンタイプにして楽しんだりもさせてもらった。
半年ほどの付き合いの中で、納車時にトラブルがあった以外は全く故障もなく、DUCATIは壊れやすいという先入観を覆してくれた。たぶん、前のオーナーがちゃんとメンテしていたんだと思う。ちょこちょこと手も入っていたし。
ピエール・テルブランチがデザインしたこのSSは、トラスフレームの見せ方が格好いい。フロント側のトラス下弦材の隠し具合と、リア側でピッチやせいを変えながら跳ね上がっていく様が、トラスを有機的に見せてくれている。バイクに関する力学はよく分からないが、数あるDUCATIのトラスフレームの中でも、一番色っぽいんじゃないだろうか。
セカンドバイクということもあり、今回軽やかに乗り換えを決めたが、お別れとなると寂しいものである。最後にバイク王で写真を撮った。


バイク王の帰り道は最寄りの駅まで歩いて帰る。あまり使ったことのない駅はとても静かで、持ちづらいヘルメットに少し苛つきながら、もう少し騒がしければよかったのになと、自分勝手なことを思った。
Lツインの振動でカメラのイカれたiPhoneにイヤホンを挿して、最近お気に入りの曲を聴きながら、なかなかこない電車を待った。
