残業レコード

あるサラリーマンライダーの栄光と苦悩の記録

画像編集ソフトを使ってこの世からアマリングを抹消しよう


アマリングとは

アマリング。バイク乗りなら一度は聞いたことがある言葉だろう。

僕がはじめてこの言葉をインターネットで目にした時には「ははーん、さては何か卑猥な部位もしくはテクニックの名称だな」と予想したものだが、実際にはもっと卑しく虚しい類のものであった。

インターネットに毒されていないライダーのために説明しておくと、アマリングとは「新品タイヤのツルッとした表層が、路面に設置していないタイヤの端のみに残ってしまったリング状の部分」を指すスラングである。いったい誰が作った言葉なのかは定かではないが、「余ったリング」の略とされている。

試しにTwitterでアマリングを検索してみると、「アマリング消えないな〜」「アマリング警察に捕まっちゃうwww」といったコメントと共にタイヤの写真がアップロードされている。しかしながら、わざわざタイヤの写真をアップするような輩は、そこそこタイヤを端まで使っている自負の元に肥大化した承認欲求に駆られて写真をアップロードしているので、僕に言わせて貰えば全然余っているとは言えない。なんなら使い過ぎているくらいだ。

こんな言葉を知るまでは全く気にしていなかったのだが、一度そういう世界を知ってしまうと途端に気になってしまうものである。

承認欲求を満たすために愛車の写真をインターネットにアップしようとすれば、日進月歩で高性能化するスマートフォンデジタルカメラの解像度が仇となり、ネットの海に広大なアマリングが晒されてしまうことになる。

最近、飲食店での悪戯行為を撮影した動画が拡散されてちょっとした社会問題となっている。悪戯行為自体が悪いのは言うまでもないが、多くの人がスタンドアローンコンプレックスにその動画の拡散に加担してしいたことの印象が強い。

ひとたび気まぐれな正義感もしくは悪意の暴走に巻き込まれれば、僕のアマリングが突然ネットに拡散されてミシュランタイヤの株価が大暴落し、なんやかんやで僕と僕の家族が路頭に迷う・・・という世界線もあり得るかもしれない。それだけは何としても避けたい。

とはいえ、タイヤをそんなに潰して乗るほどの技術は持ち合わせていない。ヤスリやクレンザーで削り落とすことで物理的に消すという強行手段があるようだが、それは超えてはいけない一線、人と人でないものを分かつ境界線のような気がするのだ。

そのような混沌とした背景の中、承認欲求を満たしながら人が人でいるためのバランスの良いソリューションとして、Photoshop的な画像編集ソフトを用いて写真上でアマリングを消すという手法がある。

とはいえ、Adobe社が販売している本家のPhotoshopは、アマリングを消すためだけに導入するにはコストが大きく賢明な選択肢ではない。そこで今回は、Photoshopと大体同じようなことができるフリーのアプリケーションを使ってその具体的な手法を紹介していこうと思う。

Photopeaを使ってこの世からアマリングを抹消しよう

Photoshop的なフリーのアプリケーションはいくつかあるが、その中でも僕がよく使っているのがPhotopeaである。ブラウザ上で利用できるため、導入にまつわる障壁が全くないうえ、利用環境を選ばずに家でもツーリング先でも手軽にアマリングを消すことができてしまうのだ。

ここでは、ツーリング先での緊急的な利用を想定して、スマートフォンでの操作画面のキャプチャをまじえながら紹介していく。基本的な操作方法はPC版でも同じだし、なんなら他のPhotoshop的なツールでも同じなので、幅広く展開できるはずだ。

端末はiPhoneを使っているが、他のスマートフォンでも大体似たような操作感だと思うので、適宜補完しながら読み進めてもらいたい。

①Photopeaの起動

まずはPhotopeaの起動である。ブラウザアプリケーションなので、下記URLをコピーして各自のブラウザから開いて欲しい。なお、僕のスマホではchromから編集後の画像の保存ができなかったので、iPhoneユーザーであればsafariでの操作をおすすめする。
https://www.photopea.com/

下のような画面が出てきた場合には右上の「×」をタップする。

すると以下のような画面が表示されるはずだ。

上手くいかなかった人のことまでは構っていられないので、ここで潔く諦めて欲しい。

②写真の読み込み

次に写真の読み込みである。今回は例として以下の写真を利用する。

実に広く、そして綺麗なアマリングである。あまりタイヤに寄った写真を加工するのは難易度が高いため、このくらい引きの写真で実践することを推奨する。都合の良い写真が手元にない人には、特別に僕のバイクの写真をダウンロードして教材として利用することを許可しよう。アマリングがすごいからって、悪意のある拡散などは決してしないよう、取り扱いには十分注意して欲しい。

写真を読み込むためには初期状態の画面に表示されている「コンピュータから開く」をタップする。

今回は既に撮影してある写真を利用するので「フォトライブラリ」をタップして端末内のフォトライブラリから写真を選ぶ。

以下のように写真が読み込まれてアプリケーション内に表示されればOKである。


③焼き込みツールによるアマリングの削除

Photopeaをはじめとした画像編集ツールには様々な機能が用意されているが、アマリングを削除するには「焼き込みツール」さえあれば事足りる場面が多い。焼き込みツールとは画像の特定の箇所の明るさを暗くするツールである。タイヤの表面が削れていないアマリングは他の部分よりも光を反射してしまう結果、明るくなってしまっている。そこに対して焼き込みツールを使って、周りに馴染む程度に暗くしてしまおうという理屈である。

Photopeaの場合、焼き込みツールを使うには以下の部分をタップする。似たような名前の覆い焼きツールは逆に画像を明るくしてしまうツールなので、誤って選択しないよう注意をしてほしい。

ここからは少しばかりテクニックが必要となるが、現実世界でアマリングを消すライディングをするより遥かに簡単なので、そんなに身構える必要はない。

まずは焼き込みを行うサイズの調整だ。画面左上の部分から調整することが可能である。

焼き込みツールの選択中は、画面上を指でなぞった部分が暗くなるのだが、大き過ぎると余計な部分まで黒くなってしまうし、小さ過ぎると明暗のムラができやすいため、適度なサイズに設定しておく必要がある。具体的なサイズは画像自体のサイズによってしまうが、概ね1/3アマリング程度が適切な大きさだろう。ここでは12に設定する。

次に露光の設定である。右上の部分に現在の露光の値が出ているので、そこで調整が可能だ。

露光の数値が大きいほど一度の処置で暗くなる度合いが大きく、数値が小さいほど暗くなる度合いが小さくなる。ある程度小さめの値を設定して焼き込みを繰り返すことで調整することを推奨する。

設定が完了したら、二本指で画像を拡大してタイヤ部分を処置しやすいようにする。そのままアマリングを指で何度か繰り返してなぞることで、色が暗くなって周囲に馴染んでいく。

失敗してしまった場合には左上の「編集」→「元に戻す」をタップすることで、一つ前の編集状態に戻すことができるから安心だ。繰り返しタップすれば何段階も戻すことができるので、サイズや露光を調整しながら進めていけばよい。

上手くアマリングを除去することができただろうか。以下に僕が編集したビフォー・アフターを掲載しておく。


④画像の保存

アマリングの除去が完了したら、編集した写真を保存する。

画面左上の「ファイル」をタップ、続けて「別名で保存」をタップすると複数のファイル形式が展開される。ファイル形式は「jpg」を選んでおけば良いだろう。


iPhoneの場合、編集後の写真はファイルAppのダウンロードフォルダに格納される。Androidのことは分からないので、さっさとiPhoneに買い替えることを推奨する。

以上の操作であなたのスマートフォンにはアマリングのない愛車の写真が保存されたはずだ。あとはTwitterに投下するなり、Instagramに投下するなり、各々が好きに活用すれば良い。

今回はアマリングを削除するというシンプルな使い方を説明したが、画像編集ソフトには他にも様々な使い道がある。より演出的な効果を加えることもできるし、バイクの色を変えたり社外パーツを重ねたりして外装カスタムの検討を行うこともできるので、色々と活用してみてほしい。

おわりに

端末と一定の環境さえあれば、僕たちはいつでも簡単にネットワークに接続することができるようになった。誰のことも拒まず、使い方さえもユーザーに託されたもう一つの世界だ。その自由度の高さは新しい価値を生み出して現実を拡張した反面、人間の醜さまで誇張してしまった。

ひとたび接続性が一つの意思を持ったように挙動し始めれば、誰にも止める術はない。画面を指でなぞるだけで発信される意思の先にも人がいる。簡略化されたその動作が、喉を開いて空気を振るわせる行為の代替であることを、人はすぐに忘れてしまう。

インターネットの快楽に依存してしまった僕たちに、もはやここから抜け出すという選択肢は残されていない。それでも、アマリングのように簡単に消えてはくれない情報を扱っていることをもう一度思い出して、適度な距離を余らせながら関わっていくことが必要なのではないだろうか。