残業レコード

あるサラリーマンライダーの栄光と苦悩の記録

フューエル・ワン

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本とは、ぼくらの内の氷結した海を砕く斧でなければならない。

フランツ・カフカ

自分の価値観や景色を変えてしまう、そんな本に出会うことがある。きっとそれは人生の中でも数えるほどしかなくて、そんな瞬間に出会うために、僕たちは何度でもページをめくるのだろう。

 

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今年の冬は随分と寒い。僕の住む街も例年に比べて雪がよく降り、ツーリングやドライブにも気軽に出かけられない日が多い。

そんな日の僕は決まって読書をする。本はいつだって、さっきまで家の中にいたはずの僕を、知らない世界の過去と未来に連れ出してくれる。

雪の降る週末がしばらく続いて、家にストックしていた未読本が尽きてしまった。仕方がないので、ゴツいソールのブーツを履いて、近所の本屋に行くことにした。

これまでの価値観を変えてしまうような良書と巡り合うのは、インターネットよりも本屋であることが多い。amazonのレコメンドシステムはたしかに便利だけど、自分の興味の外側から接触してくるようなフィジカルな感覚はやはり捨てがたい。

静かな空間にインクと紙の匂いが立ち込める。所狭しと並ぶ本の外装は異なったデザインやテクスチャで僕の視界を一瞬で鮮やかに変える。

そんな中、ふと一冊の本が僕の目に留まった。まるで、僕に見つけられるのをそこでずっと待っていたかのように、その本はひっそりとたたずんでいた。

「ギャルズパラダイス 日本レースクイーン 大賞 特集」

これだよこれ、こんな本を待ってたんだよ。

なんとこの本、総勢100名のレースクイーンが紹介されている。まさか、こんな素敵な本が世の中に存在しているなんて。モータースポーツ観戦の必需品と言っても過言ではないかもしれない。まったく、これだから読書はやめられないぜ。

100名の紹介ページも、卒業式みたいな小さい写真ではなく、1人づつの全身写真が掲載されており、レースクイーンの皆さんの圧倒的なスタイルと可憐な衣装を堪能することができる。

最近のマイブームや好きな男性のタイプなんかに加え、なんと3サイズまで掲載されている。活字中毒の僕も唸る圧倒的情報量だ。

こうしてじっくりと見てみると、チームやスポンサーによって衣装にも色々な違いがあることが分かる。個人的にはWAKO'Sのエナメルっぽいテカリのある生地感が好みで、僕のフューエル・ワンも大暴れって感じである。

さらにこの本、付録でレースクイーンの写真入り日めくりカレンダーがついてくる。こちらはハサミ・パンチ等を使って自作するDIYスタイルを採用している。雨や雪の日の図画工作に持ってこいである。

弾ける笑顔がなんとも眩しい。毎朝、カレンダーをめくるたびに、僕のフューエル・ワンも大喜びするに違いない。

 

◆◆◆

 

若者の読書離れが叫ばれて久しい。

インターネットは断片的なテキストや画像と言った短い情報で世界を繋いだけれど、平面的に広がるばかりが世界ではなく、深く探究していく奥行きもあって然るべきだ。

まずは簡単なものからでもいい。なんなら、レースクイーンのスリーサイズくらいの情報しか読む部分がなくたって構わない。

いつか、あなたのうちなる凍ったフューエルワンを叩き割ってくれるような、そんな出逢いがきっとあるから。