残業レコード

あるサラリーマンライダーの栄光と苦悩の記録

DOPPELGANGERのライダーズギアハンガーで日常に手軽にバイクを取り入れる

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バイクウエアがだんだん増えてきたので収納をどうしようか考えていたところ、DOPPELGANGERからライダーズギアハンガーなるバイクウエア用のニッチなラックが出ていたので勢いで購入してしまった。

とても気に入ったので、今日はこのラックをみんなに紹介しようと思う。

収納力を検証!

ディスプレイを兼ねた収納というコンセプトの商品だけど、肝心の収納力はいかほどのものなのか。実際に僕のライディンアギアを置いてみたところ、しっかりとツボを押さえた作りをしていることがよく分かった。

大まかな仕組みとしては冒頭の写真にあるように3段の構成になっている。

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まず、上段にはヘルメットが2つ置けるようになっている。

写真のヘルメットは2つともSIOEIのMサイズ。見た目はまあまあギチギチだけど、下端が乗っかればいいので大きいサイズでもよっぽど乗るんじゃないかと思う。

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下段にはブーツが二足入る。ここはいわゆる普通の下足箱と比較して十分に高さが確保してあるので、丈の長いブーツも納まるのがバイクウエア専用設計ならではの良いところだろう。

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中段のジャケットを掛けるラック部分は5着分の耐荷重を見込んでいるとのこと。5着って言ったって、レザーかテキスタイルかで重さが全然違うとは思うが、オフィシャルサイトを見てみると耐荷重20kgとあったので、レザーでも大丈夫だ。通気性もバッチリである。

ただ、プロテクター入りのLサイズだと肩がちょっとはみ出ちゃうので、もうちょっと幅があっても良かったかもしれない。

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側面の片方は有孔パネルになっているので小物類を引っ掛けられる。専用フックも2個ついてくるが、より多くのものを引っ掛けたい場合には一緒にSカンを買っておくとよいだろう。

ライディングギアがディスプレイになる!

部屋が手狭なので写真だと伝わりにくいかもしれないが、自分で吟味したお気に入りのバイクウエアを飾ることができるのでかなり気分が良い。なんやかんやでこれが一番のポイント。

黒くマットに塗装されたフレームと濃い木目調天板で構成されていて、まあ、高級感とかは無いんだけど、バイクと相性の良いインダストリアルな雰囲気になっている。

何も考えずにものを置いて行っても、見栄え良いレイアウトでアイテムが並ぶように設計されているようだ。既存のもので、ここまで効率よくかつ綺麗にバイク用品をまとめるのはなかなか難しいかもしれない。

僕のようにガレージが無くても部屋の中に置くことで、生活空間の一部にバイクライフを手軽に綺麗に取り入れられる良い商品である。

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明日使えるバイクウェアコーディネート

突然だが、バイクに乗る時のあなたはどんな格好をしているだろうか。バイクウェアは普段着と異なり安全性、運動性、ファッション性など、求められる要素が多い。

ときに安全性や運動性といった機能的なものは、ファッション性と相反することが多い、これがバイクウェアの難しいところなのではないだろうか。

ここまで偉そうに述べたが、幼い頃の僕はファッションに疎かった。小5の頃、母が買ってくれたドラゴンボールTシャツを着ていて同級生の女子に笑われたことがある。

あのときはTシャツにプリントされたベジータさえも僕を笑っているように感じた。今思い出しても胸がギュッとなるほろ苦い思い出だ。

もうあの日の失敗を繰り返したくない。そんな僕はバイクウェアには結構気を使っている。今日は僭越ながら僕のバイクウエアをいくつか紹介しようと思う。

キメる夏

・アウター:AIR FRAME D1 TEX JACKET / DAINESE
・ボトムス:TODI SLIM JEANS / DAINESE
・グローブ:STUNT EVO / FIVE
・シューズ:ガルドシューズ/クシタニ

ダイネーゼ のメッシュジャケットを主役にしたコーデである。コーデはコーディネートの略語らしい。

ダイネーゼはカッコいいし、motogpライダーも身に付けている憧れのメーカーだ。ただし、なんといっても高い。高いけどダイネーゼを着てみたいという場合には、比較的手の出しやすい夏用のメッシュジャケットがオススメである。

時折、「それは本国製じゃない」とか厄介なことを言ってくるやつがいるけど、面倒なのでガン無視しよう。

ライダーの間では、ダイネーゼかアルパインスターズを着ておけば、なんか文句をつけづらい、そんな印象すらある。

スポーツ系レザー ジャケット

・アウター:クロームジャケット / クシタニ
・ボトムス:TODI SLIM JEANS / DAINESE
・グローブ:GPSグローブ / クシタニ
・シューズ:ガルドシューズ/ クシタニ

中間期にはスポーツ系のレザージャケットを積極的に着よう。各メーカーから似たコンセプトのジャケットが出ているが、クシタニさんのはスポーティ過ぎないデザインで、少し渋い感じが良い。

写真のジャケットはクシタニの中では廉価版の位置付けではあるが、生地の使い分けや立体的な形状により運動性は抜群である。これを着てはじめてバイクに乗った時は体の動きを邪魔させないその技術に衝撃を受けたことを思い出す。

衝撃といえば、ブルマが突然ベジータと付き合いだしたときには子供ながらに驚いたものである。最初こそブルマのことを「下品な女だ」とか言っていたくせにに、魔神ブウ編では息子に対して「ママを大切にしろよ」と語るほどの変わり様である。

ウィンタースタイル

アウター:ウィンターテックジャケット/クシタニ
・ボトムス:TODI SLIM JEANS / DAINESE
・グローブ:WFX CITY WP / FIVE
・シューズ:ガルドシューズ/ クシタニ

冬にもバイクに乗るために冬用のスポーツジャケットを新調した。このジャケットの生地は軽快で運動性に優れており、冬用ジャケットのゴワゴワとした動きにくいイメージを覆してくれる。インナーダウンと防風ジャケットがセットになっていることで、厳しい冬の寒さからライダーを守ってくれる。

コーデとき言っておきながら、バイク用のズボン、もといボトムスは一つしか持っていないので使い回しだ。もはやコーデもクソもないが、黙って見守ってほしい。

さて、ファッションに詳しい人ならここまでで気づいていると思うが、今回の写真にはギニュー特戦隊のポージングを取り入れている。ギニュー特戦隊はあのフリーザにも一目置かれるエリート部隊で、女性人気も高いキャラクターだ。

フリーザというやつはドラゴンボールの中でもかなりの強敵で、その名の通り冬の寒さのような冷徹さが特徴だ。あのベジータでさえもフリーザに敗北して死んでしまったほどである。

おっと、安心して欲しい。ドラゴンボールの世界ではシェンロンというバカでかい龍が定期的に願い事を叶えてくれるので、主要キャラクターが爆発とかしても生き返らせることができる。クリリンにいたっては4回も死んでいる。もちろん、フリーザに負けたベジータもちゃんと復活している。

テキスタイル戦闘服

・アウター:コンテンドジャケット/クシタニ
・ボトムス:TODI SLIM JEANS / DAINESE
・グローブ:GPSグローブ/ クシタニ
・シューズ:FUSION / SIDI

このテキスタイルジャケットは見ての通りかなりスポーティなデザインになっていて、着ているものの感情を昂らせてくれる。これを着ていると、まるで自分が強くなったような気がしてくるから不思議だ。生地が薄手でベンチレーションも付いているので春〜初夏および秋口に活躍してくれる。

ジャケット以外に目を向けると、HYODのD3Oプロテクターがギニュー特戦隊の戦闘服の肩のアーマーに似ていたので、それを大胆にあしらっている。

D3Oは両面テープで固定しているが、転倒時には吹き飛んでしまう可能性が高い。加えて、高速走行時にはバタツキが気になるので、素直にウエアに仕込むのが得策だろう。

肩のアーマーに目を奪われがちだが、頭部にも注目してほしい。ヘルメットには甥っ子に借りたスカウターを装着しているのである。スカウターの赤色が差し色になっているという上級者テクも憎い演出だ。

ちなみに、スカウターとは敵の戦闘力を数値化して表示してくれるアイテムである。今回のコーデで極限まで高まった僕の戦闘力を甥っ子に見てもらったところ、ヤムチャと同じくらい、とのことであった。

ヘリテージ系

・アウター:モーターサイクルジャケット
・ボトムス:普通のジーンズ
・グローブ:普通のグローブ
・シューズ:エンジニアブーツ

普段着で格好付けてバイクに乗りたい。そんな考えを持っていた時代が僕にもあった。当時の僕はライダースジャケットより断然渋いオイルドコットン派であった。

プロテクター入りのジャケットを着るようになったのは、万が一の転倒や事故が徐々におっかなくなってきたからである。

いつも亀仙流の道着を着ていた悟空だって、強敵のセル編の時にはちゃんと戦闘服を着ていた。戦闘服の動きやすさに感心していた悟空のように、着てみてはじめて分かることもある。

機能的な面はもちろんそうだけど、バイクウェアにはバイクウェアの格好良さがある。最近はそう思うようになってきた。

シェンロンのいないこの世界で

ギニュー特戦隊ベジータに殲滅された。

子供の頃の僕は、単純に戦闘力の差が出たんだと思っていた。だけど、今見返してみると、ギニュー特戦隊の面々はポージングで格好つけることばかりを気にしているのが分かる。

言い換えれば、彼らは普段着でバイクに乗っていた昔の僕のように、見た目を最優先させていたのである。戦闘服こそ着ていたが、そのマインドこそがベジータに負けた本質的な理由だったのかもしれない。いくら格好つけようとも、本来の役割を果たせないのはやっぱり格好悪い。

街を走っていると、かなりライトな服装でSSやメガスポーツに乗る人を見かけることがある。それも結構なスピードを出している。

彼らの場合、ファッションにこだわっているというよりは、自分の命を軽く扱っているだけかもしれない。戦闘力は、ヤムチャな僕よりずっと高いだろうけど。

僕たちの生きるこの世界にシェンロンはいない。ベジータのように何度も蘇ることはできない。

「ママを大切にしろよ」と言い残し、地球を守るために自爆したベジータは確かに格好良かった。だけど、それは漫画の話だ。生きて家族を大切にする。こっちの世界ではそれが一番格好いいに決まっている。

シェンロンこそいないけど、僕は世界中のライダーたちが世界でいっとー尊い命を大切にしてくれることを願う。

2019年11月16日

オイル漏れはつづくよどこまでも

少し前から僕のバイクはオイル漏れが止まらない。こうなってしまったのは、古いからとかそういう理由ではなく、完全に僕の失敗が招いた結果である。

僕のバイクはオイルフィルターを交換ためにエンジン下部のオイルパンという蓋みないなものを外す必要がある。超めんどい。超めんどいけど、フィルター交換のたびにバイク屋まで行くのも億劫なので、自分でやることもある。

はじめてフィルター交換を試みたとき、オイルパンを外す際に変な力が加わってボルト孔の辺りをいわしてしまったようだ。それ以来ゆっくりとオイルが漏れて駐車場を汚している。

(写真にモザイクをかけているのは、隣のスペースで卑猥なことが行われているからとかではなく、隣人のプライバシーを守るためだ。)

なんとかしなきゃなあと思いながらも、液体ガスケットをボルトの周りに塗りたくってごまかしながら冬の間は乗っていた。

最近は外出自粛でツーリングに出かけるのも微妙な空気が漂っている。自分が無症状の感染者かもしれないと思うと身動きが取りづらくなってしまう。今は我慢のときなのかもしれないが、この騒ぎが落ち着いたらまたいろんな場所を走りにいきたいものだ。

そうだ。どうせ外出できないのなら、この期間を利用してオイル漏れをちゃんと治してしまおう。そう思い立って部屋を出る。

駐車場に舞い込んだ桜の花びらが真っ黒なスファルトをまだら模様に彩っていた。そういえば、あの事件が起きたのも零れ桜の綺麗な季節だった。

◆◆◆

もう何年も前の4月のはじめ。僕が社会人になって最初の赴任先は神戸だった。訳のわからないまま神戸市内の独身寮に引っ越してきたわけだが、当時の僕はこれから待ち受ける仕事と新しい生活に胸を膨らませ、とにかく前向きな心持ちだった。もしかすると、寮の玄関で僕を迎えてくれた朝桜が、そんな気分にさせていたのかもしれない。

寮はエリア分けされていたものの男女混合で、同期も何人か入寮していたこともあり、ここから社内恋愛が始まったりするんじゃないかなんてピンク色の期待を抱いていたりしたものである。

そんな気持ちとは裏腹に、季節の変わり目のせいか、慣れない環境のせいか、僕は入社して早々に胃腸風邪にかかってしまった。幸いウィルス性のものではなかったのだが、念のためと、寮の中の隔離部屋のようなところで過ごすことになってしまった。

せっかくの週末も、部屋とトイレの往復をひたすら繰り返した。なんなら、油断してちょっとだけ漏らしたりもした。ちょっとだけね。

◆◆◆

オイル漏れの対処法についてネットを徘徊して調べていると、配管工事で漏水対策としてボルトに巻くシールテープで止めることができた、という事例を発見した。

調べてみるとめちゃくちゃ安いし、ホームセンターの水まわりコーナーなんかでも買えるようである。

通販で手に入れたシールテープはこんな感じ。100円もしないのでうまくいかなくても、全然ダメージはない。フライパンとかでよく聞くテフロンという材料でできているらしい。なんか凄そう。

この製品、シールといいながらもペタっと貼りつくわけではなく、巻きつけて密着させるような使い方をするらしい。なんだか小さなトイレットペーパーみたいにも見える。

◆◆◆

腹痛との戦いは数日間に及んだ。それはもう寮のトイレットペーパーのストックを喰い潰すほどの勢いだった。

それでも、なんとか日曜の夜には体調も回復してきて、明日には仕事に戻れそうな状態にまで持ち直してきていた。トイレの頻度もだいぶ落ち着いた。

明日に向けて何か栄養でも取ろうとコンビニに軽食を買いに行くために寮の階段を降りる。1階の談話室では同期がちょっとした宴会を開いていた。女の子もいてすごく楽しそうだ。

なんだか自分だけ輪の中から漏れ出してしまったようで虚しい。だけど、この状態でお酒を飲むのはどう考えてもしんどい。僕はみんなの笑い声を横目に寂しく外のコンビニに向かった。

◆◆◆

患部のボルトを外してとにかくシールテープを巻きつけてみる。

どのくらい巻くものなのかよく分からないのでグルグル巻きである。ちなみに、ネジの締め込み方向に巻きつけると、締め込むときにめくれてしまうので、締め込み方向とは逆向きに巻く必要がある。

準備ができたらシールテープを巻いたボルトを問題のボルト孔にねじ込む。しばらく眺めてみた感じではオイル漏れは止まった?ように見える。

念のために翌朝になって様子を見てみると、残念ながらオイルが数滴アスコンの上に落ちていた。

ボルト孔が原因ではないのだろうか。本当の原因を探る必要がある。オイル漏れとの戦いはそう簡単には終わらないみたいだ。

◆◆◆

コンビニでパンを買ってきて寮の前の桜の木の下をとぼとぼと歩いていると、突き刺すような痛みが僕の腹の奥の方を襲った。そうだ、ヤツとの戦いはそう簡単には終わらない。

僕はすかさず少し内股になって肛門に横方向の圧縮力をかける。さらに小股での歩行により前後方向の荷重の抜けを最小限に抑えつつ、1階のトイレへと歩みを進める。ニーグリップで鍛え抜かれた僕の内転筋を持ってしても持ち堪えられる時間はわずかである。

幸いトイレは無人で、僕はトイレに小股で駆け込み大慌てでズボンを下ろして、便器に腰かけると同時に圧縮力を解放する。

痛みこそ激しかったものの、ろくに食べれずにポカリスウェットばかり飲んでいたためか、無色無臭の液体が肛門から噴き出るだけであった。音はシャーッである。お腹の弱いnoteユーザーの皆さんも経験あると思うが、激しく腹を下すと大抵こういった状態になる。

とにかく、同僚たちの前でシャビシャビのウンコを漏らして人間の尊厳を失うことを避けることができた。そう安心して僕がひとしきり尻を拭いて便座から立ち上がろうとしたそのときだった。トイレに併設された共用の洗面スペースに男女2人が会話しながら入ってきた。どうやら同期の奴らが宴会で使ったコップか何かを洗いにきたようだ。

トイレの個室から出てくるところを女子に見られるのがなんだか恥ずかしい気がして、僕はそいつらが用事を済ませて出ていくのを息を潜めて待つことにした。個室のドアは赤とか青の表示が無いタイプだから誰かが入っているのか入っていないのか分からないはずだし、まだ流していない下痢は幸いにも無臭タイプだったので、おそらくやり過ごすことができるはずだ。

僕の気持ちも知らずに、コップを洗いにきた同期の男女はなんだか楽しそうに話しており、なかなか出て行く気配がない。なんかちょっとイチャついてるくらいだ。クソッ。

そうこうしているうちに、腹の奥底からキリキリとした痛みが舞い戻ってきた。奴らの十八番、波状攻撃のはじまりだ。

イチャついてる同期の誰かよ、既に壊れかけの僕の肛門が第二波に破壊される前に、さっさと出て行ってくれ。

◆◆◆

てっきり肛門、もといボルト孔をダメにしちゃったのかと思っていたわけだが、違うようだ。ボルト孔付近をしっかり拭き取ってじいっと観察を続けてみると、どうやらボルト孔の横の小さな亀裂からオイルが漏れ出しているようだ。

液体ガスケットや多用途接着剤を亀裂の上のあたりに塗りたくってみても、ちゃんと固まるまでにオイルが出てこようとして道を作ってしまうらしくうまくいかない。

ということで、仕方がないので今度はオイルパンを取り外して、なんとかしてこの亀裂を塞いでみることにした。前回失敗しているだけに、オイルパンの取り外しは慎重にいかねばなるまい。ちょっとしたスリルを感じる。

◆◆◆

今にも暴発しそうな下腹部を押さえながら僕は祈った。早く出て行ってくれ。僕の、僕の肛門が張り裂ける前に。

一瞬、男女の会話が途切れて静寂な時間が訪れた。まるで、世界が突然息を止めたように静寂な時間がトイレを包む。

その次の瞬間だった。コップを洗っていたはずの男女が僕の隣の個室に雪崩れ込んできた。

そう。めっちゃキスしはじめたのである。しかもこのサウンド、バッキバキのベロチューだ。

腹痛に悶える僕の横で、ベロチューは激しさを増していく。

「ハァ、ハァ、、、ダメだよ、ユウくん。」

少し低い声の女が吐息を漏らしながら言った。

「スリルあるだろ・・・。」

ユウくんはハァハァ女にそう言ったが、この空間で一番スリルを感じていたのは間違いなく僕である。

ベロチューに呼応するように激しさを増していく腹痛に悶えながら、僕は全力で思考を巡らせた。もしこのままおっぱじまったら、ユウくんがかなりの早漏でも数分、遅漏もしくはフルコースで展開された場合には数十分に及ぶ可能性すらある。

冷や汗が体を伝う。誰がどう考えたって、ユウくんより僕が漏らすのが先じゃないか。永遠に続くかのようなベロチューの音の中、ドス黒い絶望感が僕の思考と肛門を支配していく。

ゲームオーバーだ。あきらめて僕が肛門に降り注いでいた力を解き放とうとしたそのとき、ガチャリとドアの開く音がした。

ハァハァ女が興奮するユウくんをなだめて二人で隣の個室から出て行ったのだ。第二ステージはユウくんの部屋で、ということだろうか。

二人の足音が遠のいていく。何故だか少し残念な気がしたけど、永遠にも感じられた我慢の戦いは終わったんだ。僕は僕の中の全ての力を解放した。

それはベロチューより気持ち良い瞬間だったかもしれない。

(これが、後に「下痢横ベロチュー事件」と呼ばれる出来事の一部始終である。) 

◆◆◆

簡易ジャッキを使ってパンを支えた状態で、対角に少しずつボルトを緩める。すべてのボルトが外れたらパンを手で支えつつジャッキを下ろす。今度はうまく外せたみたいだ。

オイルパンを外すとこんな感じで、フィルターが内側からしかアクセスできない。なんでこんな仕組みなんだろう。

ひとしきりオイルパンの掃除が終わったら、亀裂を塞ぐためにコイツを使ってみる。

耐熱のパテで金属にもいけるとのこと。パッケージの写真的に配管の穴とかを塞ぐものっぽいが、まぁなんとか使えるのではないだろうか。

パテの塊を少しもぎって、よく練り合わせる。そんなにすぐには硬くならないので、焦らずに亀裂の上に押しつけるようにパテを塗り込む。ボルトを締めるのに邪魔にならない程度に整形してこんな具合に仕上がった。

色がグレーなので意外と目立たない。液体ガスケットのグチャグチャした感じと違っていい感じだ。念のためにこのまま1日置いて、パテがしっかり固まるのを待つことにする。

翌日。パンを付け直してオイルを規定量入れたら、暖機運転をして漏れが止まっているかを確認する。エンジンが暖まるとオイルの粘度が下がって漏れてきやすい。

空冷のシリンダーヘッドが直接触れないくらい熱くなるのが暖気の目安。アイドリングしたまましばらく放置して様子を見てみる。どうやらうまくいったようで、エンジンをしばらく回すとジワジワと染み出してきていたオイルの姿はもうそこにはなかった。

外出自粛のこのご時世、愛車のメンテナンスに時間をかけるのも良いかもしれない。僕も気合を入れた洗車や、いつまでも合わないキャブレターの調整、調子の悪いブレーキランプの修理などやってみようと思っている。

長い我慢が終わったら、すぐにでも走り出せるように。

◆◆◆epilogue

少し前に関西に出張した折、下痢横ベロチュー事件の重要参考人であるユウくんが、家族とともに住む賃貸マンションに招待してくれた。ちょっと駅から歩くけど、なかなか広い部屋で、トイレもすごく綺麗だ。

料理を囲んで缶ビールを開ければ、一緒に寮に住んでた頃の昔話に花が咲く。仕事への不安や期待を共有した同期の友人とはいいものである。

酔っぱらったユウくんはキスよりハグ派とほざいていたけど、これに関してはマジでふざけんなって感じだ。

同期の中でも早いうちに結婚したユウくんは一家の主として随分とたくましくなったように見えた。少し低い声の奥さんも、ちょっとだけおしゃべりをするようになった子どもも、ユウくんを信頼していることが伝わってきて、何故だか僕は嬉しくなった。

楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうものである。名古屋に帰る終電に乗るため、また来るよと言って僕はユウくん宅を後にした。

今の世の中は我慢ばかりで気が滅入ってしまうかもしれない。お前に何がわかるんだと言う人もいるかもしれない。だけど、この我慢の後には、いつかきっと素晴らしい瞬間が訪れるはずだ。

駅までの夜道を早桜がぼんやりと照らしていた。この花がこんなにも美しく感じられるのは、長く厳しい冬の終わりを僕たちに知らせてくれるからなのかもしれない。

千鳥足のままふと後ろを振り返る。ユウくんの部屋からは柔らかな灯りと温かな笑い声が漏れ出していた。幸せな光と音が、いつまでもあの部屋から溢れつづけることを小さく祈って、僕は神戸の街を後にした。

ニースライダーのダメージ加工により膝擦れる奴感を演出して道の駅にいるライバル達に差をつけよう

〜レザーパンツとニースライダー〜

バイクに乗るときはバイク用ジーンズを履いて乗ることが多い。ジーンズはどんな服装にも合わせ易くて格好いい。さらに、バイク用の製品は立体裁断のおかげでバイクの操作を妨げないし、膝や腰にプロテクターを入れることだってできる。

だけど、高速道路なんかを走っていると、「もしもズッコケたら僕の下半身削れてズルむけになるんじゃないか」と不安になることがある。下品な皆さんが勘違いしないように断っておくと、これはちんちんの話ではない。

プロテクターは衝撃を吸収してくれても、路面との摩擦からは身を守ってくれない。なんというか、僕はもっとこう包まれている安心感が欲しい。どうやら僕は体だけじゃなく心の方も仮性包茎になってしまったみたいだ。おっと、これはちんちんの話。

そうなると、選択肢として上がってくるのはレザーパンツになる。レザーパンツってかなりイカつい印象があるし、結構コストがかかるしで、実はこれまで避けてきていたのだが、中古で程度の良いものを見つけることができたので、思い切って購入してみた。

いざレザーパンツを履いて試しに最寄りの道の駅まで走ってみると、安心感もさることながら、体をシートやタンクにホールドする効果がとても高いことが分かる。革が車体にへばりついてくれるおかげで、ニーグリップにかける力は少なく済み、カーブなどで尻をずらしても少ない面積で体を固定してくれて安定感がある。

ズボンはウェアの中でも、体とバイクをつなぐ役割を担っていて、ジャケット以上に操作性に与える影響が大きいということに今更ながら気付かされた。感覚的にはグローブに近いかもしれない。

さて、レザーパンツといえばニースライダー(もしくはバンクセンサー)が取り付いているものも多い。釈迦に説法になってしまうが、ニースライダーはハングオンしていったときに膝が路面に直接擦れるのを避けると同時に、車体の傾斜角を測るという役割を持っている。

このニースライダー、怖くてバイクをあまり寝かせられない僕のようなライダーはいつまでもキレイなままだ。一方、道の駅に出没する走り屋さんたちのニースライダーは傷だらけで、勲章のようにさえ見える。なんだか負けた感がすごい。

そんな敗北感を勝手に噛み締めながら、道の駅を歩いていると、ダメージジーンズを履いたいい感じのギャルを見かけた。

「ギャルと道の駅ってギャップが最高だぜ。じゅる。」とか思ってギャルの脚を凝視していると、僕の脳裏に一つのアイデアが舞い降りてきた。

「ニースライダーもダメージ加工してしまえばいいんじゃないか!?」

新しいアイデアというものはいつだって異分野からやってくるものである。実際に膝が擦れるか擦れないかなんて、些細な問題だったんだ。

しかしながら、ニースライダーがどんなダメージを受けるものなのかがよく分からない。何故なら僕は膝を擦らないからだ。現物をみてじっくり確認したいところだが、道の駅でたむろしている走り屋さんに話しかける勇気は持ち合わせていない。

走り屋さんに話しかけずに済む方法がないものか。経験豊富そうなギャルを横目に見ながら思索していると、またしても僕の脳裏にアイデアが舞い降りた。

「使い込まれたニースライダーさえ見られれば済むはず」

ということで、せっかく道の駅まで来たが、近くの峠道には寄らずに、中古カー用品バイク用品専門店のアップガレージ名古屋店にバイクを走らせる。もちろん道中、膝はまったく擦らない。

〜調査編〜

店内に入ると結構な数の革ツナギが置いてある。10着以上はありそうな勢いだ。そして中には期待通りかなりのダメージを受けたものもラインナップされている。世の中には果敢なライダーがたくさんいるものである。

調査を進めていく中でニースライダーの材料にはいくつかのバリエーションがあることが分かった。具体的には以下の3種類だ。

材質は耐久性と擦った時のフィーリングに違いをもたらす。一般的には金属>プラスチック>革の順に耐久性が低くなっていき、伝わってくるフィーリングは滑らかになる。(予想)

ライダー達は、峠で膝を擦り続け、何度も何度もスライダーを交換していく。そうした過程を経ることで、いつかきっと自分の求める理想の材質に辿り着くのだ。そう、それは恋と似ている。

ただし、今回はダメージ加工が目的であり、公道で膝をすることは求めていないため、加工のし易い樹脂製の一択で問題ない。耐久性もフィーリングも糞食らえである。

☆ポイント①:材質は樹脂製を選ぶべし。

削れ方としては、面的に擦れているものと隅部から削れて行っているものが見受けられる。そして、どのスライダーにも共通して言えるのは、傷口が黒くなっているということである。おそらくアスファルトに擦れたときに色移りしているのだろう。この黒色を再現することで、生々しさを演出できるはずだ。

☆ポイント②:傷口は黒くするべし。

スライダーの観察を続けているとカラーリングも様々なものがあることに気付く。最も多いのはイメージ通りの黒で、白もそこそこ多い。赤とか黄色とかの目立つ色のものもあってなんだか可愛い。

通常であればウェアの色に合わせるのが基本になるはずだが、ダメージ加工には明るい色を選んで欲しい。これは黒などの暗い色のものに加工をしても加工が目立ちにくいためである。カラフルなものはウェアとの相性があるため、白系のものを選んでおけば間違いないだろう。

☆ポイント③:色は白系を選ぶべし。

ブランドはパンツのメーカーに合わせておくのが無難だろう。あまりメーカーロゴが目立たないパンツを所有している場合は、レーシング色の強いブランドのスライダーを選ぶことで、さらなる玄人感を演出できるだろう。具体的にはダイネーゼ 、アルパインスター 、クシタニ、HYODあたりが狙いどころだ。

☆ポイント④:ブランドはパンツに合わせるのが基本、レーシング色の強いブランドも応用編としてあり。

調査はこんなところで充分だろう。期待していた以上の成果を得ることができた。せっかく来たので店内を物色していると、ちょうど新古品でクシタニのニースライダーが売っていた。

ベースカラーが黒でさっそくポイント③を無視しているが、ロゴは白いし、ポイント①と④はクリアしているので、これで試してみよう。

今回、ニースライダーを初めて単品で購入したわけだが、すっごく気分がいい。「いやあ、すぐすり減っちゃってさぁ」とか店員にわざわざ言いたくなっちゃう。危うくTwitterでも「前のスライダーはよく滑ってフィーリングは良かったんだけど、さすがに耐久性が低かったので、次は評判のいいクシタニのスライダーを購入。今度は1シーズンくらいは持ってくれよ〜。」とか空虚な報告するところだった。

このように、ニースライダー購入という行為は、ライダーのテンションを上げるポテンシャルを秘めている。仕事やプライベートで悩みがある人は、精神の滋養強壮剤としてバイク用品店でニースライダーを購入してみるのもいいかもしれない。

〜加工編〜

加工方法はいたってシンプル。そう、実際にアスファルトに擦り付けるのである。膝を擦れないならば手で擦り付けてしまえばいいのだ。

走り屋さんの膝になったイメージで下向きに力をかけつつスピーディにニースライダーを擦る。

この作業をひたすら繰り返す。樹脂製といってもさすがはクシタニ、かなり高密度なタイプのようで、なかなか硬くて結構疲れちゃう。こんな硬いものをすり減らすなんて、走り屋の皆さんもよくやるよ。

そんなこんなで完成したダメージニースライダーがこちらである。

予想以上に硬くて苦戦したが、走り屋さんが峠を2周したくらいの感じにはなった。ちなみに、黒色が思ったように色移りしなかったので油性ボールペンで色を足すという職人技も取り入れている。

あんまりやり過ぎるとボロが出そうなので、まずはこのぐらいのダメージ感が狙いどころだろう。月に一回くらいの頻度で同様の加工を加えていくことで、時間軸でダメージが育っていくリアル感を演出することも可能だ。

コイツをレザーパンツ に取り付けて道の駅に行けば、きっとダメージジーンズのギャルも振り向いてくれるに違いない。

◆◆◆

こうして僕はまた新しいハッタリを手に入れた。言ったもん勝ちの世の中だ。小さな自分を大きく見せよう。嘘で塗り固めた膝が僕を笑う。この分厚い嘘のかたまりは、いったい僕の何を守ってくれるんだろうか。

~2022.5.8追記 さらなるダメージを求めて~

ニースライダーにダメージ加工を施してから2年くらいが経過しただろうか。いまだに僕は膝を全く擦らずに毎日を過ごしている。いつの頃からか、道の駅で知り合ったライダーたちからも、疑念の視線が僕の膝に集まっているのを感じるようになった。

「おいおい、あいつのニースライダー、まったくダメージが進行していないぜ。」

立ちゴケで擦っただけなんじゃなくって?」

そんな心無い声が聞こえてくるような気がする。

ここらで一発テコ入れをしておく必要がありそうである。そんなわけで、ダメージ加工のためのニューアイテムを調達してきた。

BOSHのディスクグラインダーである。金属をも断ち切るこの圧倒的なパワーでねじ伏せてしまおう。わざわざアスファルトに擦り付けるなんて時代遅れだ。

このディスクグラインダーによりさらなるダメージ加工を施した逸品がこちらである。

勢いあまってシャンクスみたいな傷が入ってしまった。さながら膝擦り界の四皇ってところである。いったいどこで擦ればこのようになるのか?と聞かれた場合にはちょっとばかし説明が苦しいものの、この深い傷を見れば、たいていのライダーは尻尾を巻いて逃げ出すに違いない。

 

※ディスクグラインダーはかなりのハイパワーなので、加工の際には十分に気を付けてほしい。